エピローグ 冒険者を目指して
章のエピローグなので、ちょっと短め。
その後、影の魔物が坑道に残っていないか──その確認作業を終えて、私達はいよいよ旅立つことになった。
今回はナユタも一緒だ。
そう、人間の町へ出て、冒険者になる夢を叶える為に──。
私は人間の町に行きたいし、目的は合致する。
「本当に大丈夫か、おめぇ?」
ガラルは心配そうに、ナユタに問う。
村長という立場としては、集落から旅立つ者の安全が気になるのだろうね……。
「大丈夫だ!
オレは1人じゃねぇ」
「そこが心配なところなんだがなぁ……」
と、ガラルは私とシスを見る。
あっ、はい。
言いたいことは分かります。
こんな謎生物と一緒にいると、確実にTo L●VEる……もといトラブルに巻き込まれる──。
ガラルはそれを危惧しているのだろう。
「師匠が一緒なら、どんな奴も敵じゃないさ!」
「そういうことじゃ、ないんだが……」
父親の一件が解決して以来、ナユタは私のことを「師匠」と呼ぶようになってくれた。
それだけ私のことを信頼してくれている……ということなのだろう。
それは嬉しいことだし、私も何が何でも彼女のことを守ってあげたいと思っている。
ただ、私が求めていた百合百合な関係には程遠い。
見た目は子供なんだもの。
しかも言動が男の子っぽい。
将来的には分からないけれど、現時点ではさすがに恋愛感情は持てないよ……。
いや、そもそも種族も違うけどさぁ……。
むしろナユタの方が、私に対して恋愛感情なんて持ちようが無い。
いずれにしても大事な弟子だ。
私の実力なら大抵の敵には勝てる自信もあるし、守ることには問題は無い……と思う。
だけど、私達姉妹は魔物だ。
人間の世界では、必ず厄介事を呼び込む。
それにドワーフという異種族に対して、人間の態度もどうなのか気になる。
おそらく差別的な扱いをしてくる者も、数多くいるかもしれない。
まあ、ナユタは見た目だけなら、人間の子供に見えなくもないので、黙っていればドワーフだとはばれないだろうけど、子供扱いされれば、それはそれで色々な不都合があるだろう。
ガラルの心配はそこにある。
それでも──、
『大切な弟子だから、命懸けで守るつもりですよ』
これだけは揺るがない決意だ。
「……師匠!」
「……まあ、元々俺には止める権利はねぇ。
ただ、外の世界は、決して楽なことばかりじゃない……。
そのことはよく肝に銘じておけ」
「おう!」
『おう!』
シス、よく分からないのに返事しないの。
『それじゃあ、お世話になりました。
ナユタをお借りします。
色々とありがとうございました』
「いや、礼を言うのはこっちの方だ。
元気でな」
『はい、あなたもお元気で』
そして私達は、人間の町を目指して旅に出る。
ガラルの話だと、目的地であるサンバートルの町は、洞窟を出てから南の方へ行くとあるらしい。
ただ、ナユタも行ったことが無いようなので道案内はできないし、迷わないようにしないとな……。
さあ、ついに人間との接触だ!
次回から新章です。