エピローグ1 統一国家
戦いが終わって、私はまずローラント王国へと帰った。
私がマオの身代わりとなって攫われたから、みんなは心配しているかもしれないし。
いや、事情が分からずに、混乱しているかな?
「ママ~!」
「お姉様~っ!!」
で、みんなの前に姿を現したら、マオとクオには抱きつかれて泣かれたねぇ……。
アカネはさすがに抱きついてこなかったが、天を仰いで男泣きみたいな感じになっているし……。
ナユタだけがみんな後ろから、うんうんと見守るように頷いていた。
まあ、肉体年齢で言えば一番年上だから、保護者目線なのだろう。
しかし久しぶりの再会だから、感慨深い。
私は影ながら顔を見ていたけど、彼女達にしてみれば数年ぶりだしなぁ……。
みんな無事でよかったよ。
その時、周囲がざわめく。
護衛を引き連れた人物が、私に近づいてきた。
「おかえりなさい」
「クラリス!」
女王自らが、私を出迎えてくれたのだ。
事情を知らない者達は、何事かと思うだろうな。
「あの空を染めた光……元凶は倒したということでいいのよね?」
「ええ……完膚なきまでに叩き潰せたと思いますよ」
「ありがとう、感謝するわ」
「ちょっ……!?」
クラリスが私に頭を下げた。
しかも衆目の前で──だ。
「やめてくださいよ、女王が頭を下げるものじゃありません!!」
女王に頭を下げさせるような奴だと周知されたら、私の立場がいよいよおかしくなるじゃん!
「あなたがいなければ、国は滅んでいたと思う。
感謝してもしきれないわ」
「いえ、私がいなくても、なんとかなっていましたよ?」
あの波動砲弾による被害は大きくなっていたかもしれないけど、国が滅ぶほどの事態にはなっていなかっただろう。
私の姉妹達が守っていたんだからね。
ただ、それも──、
「いいえ、それもあなたが人材を育て、天狐の一族などを国に常駐させてくれなければ無理だった」
……それはそうかもしれないけれど……。
結局私は、このまま救国の英雄ってことにされようだよ……。
その後は各国の様子を見て回ったけど、取りあえずクジュラウスの残党による攻撃も無さそうだ。
だが、被害は大きい。
特に魔王国は壊滅的だ。
なるべく人的被害は出さないように裏から動いてはいたけど、建築物とかまでは守り切れなかったからなぁ……。
クジュラウスを油断させる為に、なるべく私の存在を隠す必要があったとはいえ、苦渋の選択だった……。
それでもシファの、魔王としての頑張りを見ることができて良かったよ。
……まあ、統治すべき国は無くなったようなものだけど……。
国を再建するにしても時間がかかるし、魔族の皆さんは当面の間、トウキョウ自治領で避難生活だよね……。
「だからいっそ魔王国は、アイ殿の国に併合してほしいんじゃが」
「は?」
何言ってるんだこいつ。
魔王の責任から逃げたいだけだろ……。
「もう魔王国の再建は、1からしたほうが早いレベルじゃし、それならこっちに移住した方が早いと思うんじゃ。
そしてお邪魔する以上は、妾がトップを続ける訳にはいかんじゃろ」
う~ん……確かにそうなんだけどさぁ……。
それだと私、実質的に大魔王じゃん。
私はもう隠居したいんだよ。
異世界でスローライフがしたいだけなんだよなぁ……。
結局その時は、話を有耶無耶にしたのだが……。
それから暫くして──、
「我が帝国も併合しましょうか~」
シファから話を聞いたのか、アーネ姉さんがとんでもないことを言い出した。
「あの……姉さん?」
「だって、私はあまり統治者に向いてませんし~」
それは否定できないんだが、だからって国を併合するってのは飛躍しすぎでしょ……。
それに私だって、統治者に向いている訳じゃないぞ。
「大体、併合するにしても、間に王国がありますし……。
飛び地だと併合するにしても不都合が……」
「じゃあ、王国も併合しちゃいましょうよ~」
簡単に言ってくれる。
「いやいやいやいや」
そうはならんやろ。
……ならんよね?
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『異世界で美少女になった俺は、平和的な死の商人を目指します。』
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