24 太 陽
10本の尻尾に、金色の体毛──。
これが!
これが!!
これが私の最終形態だっ!!!
9尾の狐の尻尾が1本増えたら、なんか強そうじゃん……という感じでやってみました。
凄い昔の戦隊物に、尻尾が多いほど偉いという種族もいたし、そんなにおかしな話ではないよね?
しかしその為に、各国の防衛用に残していた分身を呼び寄せたのだから、もう猶予は無い。
敵が各国を襲う可能性がゼロではない以上、さっさとこの戦いを片付けてしまおう。
「さあ、もう終わりにしましょう!
これからが私の本気ですよ!」
私の10本の尻尾が伸び、それぞれに地・水・火・風・闇・光・重・毒・気・死の属性を纏わせて巨人に叩き込む。
物理攻撃に魔法(もしくは気)を付与したようなもので、ある種の魔法剣といった感じか。
それが10回同時攻撃だ。
『ガッ、ガアァァァっ!?』
うん、巨人に対して、ダメージが通っている。
たとえ色々な耐性を持っていたとしても、複数の属性による同時攻撃が作用しあって別の物になってしまえば、無効化は難しくなる。
そもそも単純に、今の私の攻撃力は、以前とは桁違いだ。
耐性や無効化にも、限度という物があるんだよ。
で、攻撃が効くと分かったからには、このままタコ殴りにする。
そりゃあもう、尻尾で北●千手殺だよ。
『グガガガガ──やめろぉっ!!』
私の攻撃を鬱陶しく思ったのか、巨人は全身から衝撃破を放った。
それで私の尻尾を弾くことはできたが、同時にその衝撃で巨人の皮膚や肉がボロボロと落ちる。
そう、私の攻撃によって、巨人の身体の随所に欠損が生じていた。
そのダメージもほどなく回復するだろうけど、このまま尻尾攻撃でダメージを与え続ければ倒せるはずだ。
まあ、そんなに悠長なことはやらないけど。
「やめませんよ、バカですか?」
私は10本の尻尾を1つにまとめて、巨大なブラックジャック──つまり革袋などに砂などを詰めた殴打用の武器みたいな物を形作り、下から巨人を打ち上げる。
たぶん山とかでも粉砕できる威力。
『グッ!!』
空中へと高く打ち上げられた巨人──。
それに対して、私は炎を放った。
その炎は巨人に命中すると、瞬く間にその全身を包み込む。
『はっ、炎などこの俺の身体には、最早通用しないぞ!!』
「仮初めの耐性が、いつまでも通用すると思わないでください」
本番はここからだ。
『なっ……!?』
炎が膨れ上がり、熱量も上がる。
それはさながら小さな太陽と化した。
「天照」
『グアアァァァァァァァァァァァ!!
馬鹿なっ!!
馬鹿なぁぁぁぁぁぁっ!!』
今の巨人は、おそらく純正の天狐族ですら経験したことが無い熱に包まれている。
つまり天狐族すら耐えられるかどうか分からない、未知の熱量──。
それを付け焼き刃の耐性で耐えられるはずもなく、巨人の身体は焦げていく。
ただこのままだと、地上の草木も燃え上がるであろう灼熱だ。
だが、まだ全力ではない。
更に小太陽へと力を注ぎ込める感覚はあるけれど、全力を出すと星の地表がどうなってしまうか分からないからだ。
だから私は、その小太陽諸共、巨人を宇宙空間へと打ち上げる。
そして地表への影響が無くなるほど、遠く離れた高度に達した頃──。
「ここからが正真正銘、私の全力っ!!」
空全体が白く染まる。
一時的だが、ここから見たら太陽よりも巨大な火球が、出現したようなものだからなぁ。
私も「影属性」魔法で目の前を覆わないと、眩しくてとても空を観測することすらできない。
『カッ───』
あ……クジュラウスの思念が途絶えた。
一瞬で蒸発してしまったようだ。
まあ、念の為、そのまま小太陽と一緒に宇宙の彼方まで飛んでいってもらおう。
エネルギーが尽きるまで、星から離れて頂戴な。
後は慣性で、宇宙の果てまで行ってくれるだろう。
これなら仮に巨人が生きていたとしても、2度と星には戻ってくることは無いだろうね。
……ともかくこれで、全部終わったかな……?
安心して力が抜けたら、スーパーテンコ人化が解除された。
尻尾に溜め込んだエネルギーも使い切ったし、再びあの姿には当分の間はなることができないだろう。
まあ、こんな巨大な力を使う機会なんて、もう無い……と思いたいけれど。
今後はゆっくりと隠居生活を送りたいものだ。
さあ帰って、久しぶりにみんなの顔を見ますかね。
そろそろ終了ですねぇ。