23 完全体
「うわ……凄っ……!
キノコ雲って、上から見るとこうなるんですか……!」
私は「転移」で上空へと移動し、激しい爆発から逃れた。
下を見ると、巨大なキノコ雲が立ち上ってくる。
このままでは飲み込まれるので、横に移動しよう。
しかし凄い爆発だったな……。
さすがは都市を吹き飛ばすレベルの爆弾×5+1による、同時爆発だ。
もしかしたら衝撃波が、星の裏側にも届いたのでは……?
で、この爆発を傷口に撃ち込まれて、内部から炸裂したはずのクジュラウスの巨人は、小さくないダメージを受けているはずだが……。
う~ん、気配はあるなぁ。
爆心地の辺りを索敵してみると、何かが残っている。
……巨人の下半身かな?
……あ~、これは……。
「やっぱり……」
下半身が起き上がり、そこから上半身が生えた。
かめ●め波で上半身が吹っ飛んだセ●かよ……。
でも、気配は弱くなっているから、結構消耗させることができたんじゃないかな?
『おのれぇぇぇぇ~!!
こ、この俺によくもこんなあぁぁぁぁ~っ!!』
ただ、あいつの気力は衰えていない。
まだまだ戦うつもりのようだ。
その時──、
「え?」
巨人の周囲に、いくつかの物体が出現した。
どうやら「空間収納」から出したようだけど、あれはクオハデスとハエ魔王の複製体?
そして更に、勇者と……天狐族!?
もしかしてシスのクローンか!?
前にシスを攫った時に、体毛か何かを採取していたな!?
それらは生命活動をしていないただの肉の塊のようだけど、次の瞬間、そのすべてが塵のように分解され、そして巨人に吸収されていく。
あれはネネ姉さんの「暴食」スキルみたいなものかな?
あのスキルって、吸収した物をエネルギーに変換するだけだから、そんなに危険なものじゃないけれど……。
だけど万が一、吸収した存在のスキルが使えるのなら、厄介極まりないな……。
私はためしに高出力の「熱線」を撃ち込んでみるが……。
「あ……無効化された」
相手の耐久力が高すぎて効かなかったのではなく、「熱線」の効果を身体に触れる前に打ち消しているようだ。
どうやら天狐族の種族特性である、「炎熱無効」の能力を獲得しているらしいな……。
そして更に、巨人の背に虫のような羽が生え、上空にいる私に向かって飛び上がった。
これもクオハデスか、生え魔王の能力か!
あ~……でも、これで分かった。
クジュラウス、お前も既に巨人に吸収された残滓だな?
時間が経てば、その意識は巨人の中に融けて消えるだろう。
それは実質的な自殺だが、クジュラウスは私に一矢報いたいが為だけに、こんな化け物を目覚めさせて世界を巻き込もうとしているのか……。
……まあ、もしかしたら巨人の方を、逆に乗っ取るつもりだったのかもしれないけれど、それは思い上がった考え方だよ。
『殺すっ、殺すぅぅぅぅぅ!!』
実際、クジュラウスの自我が薄くなってきているのか、凶暴化しているもんなぁ……。
そして戦闘力も高くなっている。
「う゛っ!!」
急接近してきた巨人に殴られ、私は弾き飛ばされた。
魔法で防御していてもダメージが通るほど、重い一撃だ。
そして吹き飛んだ私に対して、巨人が追撃してくる。
速いなぁ!?
こんなの「転移」じゃないと、回避しきれないぞ!?
「っっ!?」
だが、巨人の攻撃も跳躍する。
「転移」した私は頭上から衝撃を受けて、大地に叩きつけられた。
これは……アカネとの戦いで見せた、勇者の「居合」か!?
即死はしないけど、何発もくらったらさすがに命に関わるぞ……。
しかも巨人は追撃の手を緩めない。
『喰らえぃっ!!』
「ガハ……っ!!」
巨人の胸部から光線が放たれ、私の全身を飲み込む。
なんとか耐えられるけど、周囲の地面は消し飛んで巨大な穴が作られる。
うわ……底が見えない……!
『ふはははっ!!
どうだ我が本気はっ!!
最早貴様には、勝ち目は無いぞっ!!』
「現状では、そうでしょうね……」
でも──、
「何か……忘れてませんか?」
『……なに?』
今の私には尻尾が無く、謂わば不完全体であるということを──。
「私は、私と同等の力を有する分身を、まだ残しているんですよ」
『なっ……!?』
私の周囲に、9つの影が「転移」してくる。
それは各地に潜ませて、影ながら防衛活動や調査活動をしていた分身達だ。
宇宙要塞と戦った一体も、ギリギリ生きている。
それらの分身は、尻尾の形になって、私の身体に戻ってきた。
「10身合体!!
真・完全体天狐──見参!!」
尻尾に溜め込んでいた力を私に還元し、その力を使って私は更なる進化を遂げる。
10本の尻尾を有し、その体毛が金色に輝く存在に──。
謂わば、スーパーテンコ人だっ!!
管理ページの仕様変更で戸惑った……。