22 ラスボス戦
炎神・火之迦具土は、人型のノーマルな「炎神」よりも高い熱を有した龍型をしている。
基本は炎で構成されているが、魔力と気も凝縮されているから、物理的な干渉力もあるし防御力も高い。
まあ、蛇のような細長い形態なので、格闘戦にはあまり向いていないけどね。
どちらかというと、魔法戦特化って感じかな。
私は周囲に数百の「狐火」を発生させる。
そして──、
行けっ、ファ●ネル!!
私が操る「狐火」が、クジュラウスが操る人型の巨人の周囲を飛び回り、そのそれぞれが「熱線」を発射した。
その集中砲火を浴びれば、大きめの都市くらいは壊滅するくらいの威力になるはずだが──、
『くははは!
その程度の攻撃では、毛ほどの傷もつけることはできぬわっ!!』
無傷かよ……。
限りなく魔法無効化に近い性能を、持っているのかな……?
それじゃあ……。
数百の「熱線」を一点集中!!
これで威力は、単発の物よりも数百倍に上がるはず。
しかし──。
『遅い!』
うえっ、回避した!?
巨体の割に素早いっ!
だが、私の「熱線」は追尾するぞ!!
『なっ!?』
直角に曲がる「熱線」はさすがに回避できないようで、クジュラウスは驚きの声を上げた。
そして直撃を受けた巨人の左腕が、溶けるように消滅する。
まあ、回避するってことは、ダメージを受けると判断したってことだし、当たれば効くだろうね。
だけど消滅したはずの左腕は、あっという間に再生した。
ロボっぽくも見えるけど、やっぱり生物なんだ……。
これでは、簡単には倒せないぞ……。
私が軽く驚いていると、クジュラウスが殴りかかってきた。
ひえっ、「火之迦具土」のボディを貫通した。
炎なのに下手な金属よりも防御力があるはずなんだけど、あっさりと紙のように……だと!?
そして更に──、
「!?」
巨人の顎が大きく開き、そこから光としか言いようがないものが吐き出された。
巨大なエネルギーの奔流によって、すべてがなぎ払われる。
ナ●パかな?
なんだかもう、遺跡とか周囲の物が何もかも消え去っているんだけど……。
事実、見渡す限りの風景が、全部焦土と化していた。
……原爆でもこうはならんぞ!?
世界が燃えちまう訳だぜ……!!
というか、周囲に都市とかなくてよかったよ……。
そして私が纏っていた「火之迦具土」も同様に、吹き飛んでいた。
おま……現状では私の最強フォームを……!?
私が唖然としていると、巨人が急接近してきた。
肉弾戦か!?
巨人の攻撃をギリギリで回避し、蹴り返してみたけど、びくともしない。
「かった!?」
ああ、やっぱり普通の物理攻撃で倒すのは、完全に無理だな……。
ただ、「熱線」の集中砲火は効いたから、魔法攻撃ならなんとか……。
『ウロチョロとうるさいぞ、キツネがっ!!』
「くっ!」
巨人の全身から、衝撃破が発生した。
これは周囲の空間すべてに伝播するので、回避はできない。
躱せないのならば、魔法で防御すればいいのだが──、
「あぐっ!?」
それでもその威力は殺しきれなかった。
衝撃を全身に受けた結果、私の動きは一瞬止まる。
その隙を突いて、
『くははははは!!
潰れろ、羽虫ぃっ!!』
巨人の拳が私を殴りつけた。
私の身体は地面に叩きつけられ、その衝撃で大きなクレーターが作られる。
痛ぇ!!
親父にもぶたれたことないのに!
まあ、この世界にパパンは存在しないが。
……って、そんな軽口を叩いている場合でないな。
巨人の追撃がくる。
だが、こちらも反撃させてもらおう。
私は「地属性魔法」でボーリングボールくらいの鉄球を生み出し、それを「風属性魔法」を駆使して高速で撃ち出す。
『くははは、そんな小石で、この無敵の肉体を貫けるものか──……あ?」
余裕を見せたクジュラウスの声は、すぐに呆然としたものに変わる。
それは私が撃ちだした弾が、巨人の胸部を貫通したからだ。
『なっ、何をした!?』
単純にお前よりも硬い物体を、ぶつけただけだが?
つか、胸部に風穴が空いているのに意識があるってことは、クジュラウスの本体はそこには無いってことか。
これで頭とかを吹き飛ばしても変化がなかったら、あいつは巨人と融合しているとみていいな……。
それはさておき、何故に巨人の装甲を貫通できたのかというと、
「それは以前破壊した、巨大ロボの破片を核にした弾を使ったからですよ」
『なにぃ!?』
そう、かつて攫われたドワーフとシスの救出時に破壊した、古代兵器の巨大ロボだ。
あの装甲を破壊するのはかなり苦労したから、何かに使えないかと思って、密かに回収しておいたのだよ!
その時は巨大ロボと、そのプロトタイプの装甲同士をぶつけて破壊したけど、今回も同じことをしたと言える。
そして予想通り、巨大ロボの破片の方が巨人の強度を上回った。
ただ、相手は生物。
『はっ、この程度のことで、いい気になるなよ!
こんな穴くらい、すぐに塞がるわ!』
それなんだよねぇ……。
相手の再生能力が続く限り、いくらダメージを与えても復活する。
だけどこのまま済ませる訳は無いでしょ!!
「まだまだぁ!!」
私は再生途中の傷に目掛けて、ある物を撃ち込む。
『こっ、これはっ!?』
「あなたが各国へ撃ち込んだ、波動砲弾とやらですよ」
分身達が爆発する前に、「空間収納」へ回収しておいたものである。
私の「空間収納」は、分身達と共用なので、彼女達が収納した物は、私も自由に取り出せる。
そしてついでに、以前魔王城にクジュラウスが仕掛けていた爆弾も追加しておく。
「あなたの忘れ物を、全部返却しますね」
『この──』
直後、凄まじい閃光が周囲を染め上げた。