21 終末の目覚め
お待たせしました。
……どうやらこの宇宙要塞には、もう私に敵対する者しか残っていないようだ。
じゃあ、燃やし尽くすね。
なんだかこの要塞、ヤバイ兵器とかも満載されているようだし、焼却処分した方がいいよね?
私は要塞内部に発生させた「狐火」に念を送り、爆発的に燃焼させる。
そしてこの司令室でも──。
「ぐっ……貴様っ!!」
さあ、追い詰められたクジュラウスは、どうする?
「このまま要塞とともに沈みますか。
宇宙空間に投げ出されれば、仮に死ななくても、永久に宇宙を彷徨うことになりますよ?」
上位の魔族なら宇宙空間でも、休眠状態で生き続ける可能性はある。
ただ、その休眠から目覚めることは、おそらく二度と無いだろう。
宇宙を彷徨うということは、そういうことだ。
カー●様のように、考えることをやめなきゃ、やってられない。
かといって、いくら魔族が炎への耐性を持っているとは言え、何処まで耐えられるかな?
それに要塞内の酸素まで完全に燃焼されてしまっては、やはり活動を続けることはできなくなるはずだ。
こうなると、クジュラウスにとれる手段は──。
「くっ……!」
クジュラウスは自身の前に水の壁を生み出し、その瞬間に走り出した。
そんな壁では、私の行動を止めることはできな──あ、「転移」して逃げたわ。
だけどこんなこともあろうかと、マーキングはしておいた。
こっそりと「影属性魔法」で私の影を小さく分割させて、クジュラウスの影の中に潜ませておいたのだ。
この影の欠片は他の影と交わった際に、更に欠片を作って忍ばせ、それらの影を経由して私へと情報を発信し続ける。
これで何処にいても、クジュラウスの居場所は特定できるだろう。
そしてクジュラウスが「転移」できる範囲なら、私だって「転移」できる。
私の方が圧倒的に、保有魔力量が上だからね。
「まずは、この要塞を片付けて……と」
このまま「狐火」で燃やしていけば、いずれはこの要塞の機能は停止するだろう。
だが、それでは時間がかかるし、燃え残る物もあるかもしれない。
やるならば、徹底的に……だ。
私は全方向へ向けて、「熱線」を撃ち放つ。
一度に数十発くらいかな。
それらは壁を貫通して、大爆発を引き起こした。
これでこの要塞は、崩壊するだろう。
多少は残骸が残るだろうけど、殆どは大気圏に突入して消滅するはずだ。
それじゃあ、クジュラウスを追うか。
「うん?
何処かの遺跡かな?」
私が「転移」すると、そこは何処となく前世の世界で見知った近代建築の中のようだった。
ただ同時に、酷く古びていて、完全に廃墟といった印象がある。
そういえばあの宇宙要塞の内部も、似た雰囲気だったなぁ。
というか、これが古代文明の遺跡だとすると、数千年は経過している可能性もあるんだよね?
そう考えると、綺麗な方だな……と感じる。
殆ど劣化しない材質で、作られているのだろう。
え~と……クジュラウスは、この奥かな……?
なんだかやたらと巨大な魔力の反応が、突然出現したんだけど……。
これだけ巨大な気配なら、私が世界を旅していた時に気付いたはずだけど、今まで休眠状態だった何かを、クジュラウスが起動させたってところだろうか?
また古代兵器か、古い魔王を復活させた……?
もう面倒臭い物ばかり遺して、そんな厄介な文明なんて滅ぼしてやる!
……って、もう滅びているか。
いや、そもそもなんで滅びたの?
もしかしてその原因って……。
通路を進むと、広い空間に出た。
そういう部屋じゃなくて、天井が抜けて空が見えている。
何かの攻撃によって、色々と吹き飛んでいるなぁ。
そしてその中心には、十数メートルはある人型が蹲っていた。
……人型だけど、何処となくロボっぽいというか……。
それでいて、外皮とかは生物っぽくもある。
これが魔力の発生源か……。
こいつは、災いの影……ギャ●ス──って感じかな。
おそらく古代文明を滅ぼした存在は、こいつなのだろうね。
それだけの魔力を感じる。
実際、以前破壊した巨大ロボよりも強そうだ。
……で、クジュラウスが何処に行ったのかというと……。
「中ですか……」
『来たな、女ギツネめ!
今度こそこの古代文明の技術の粋を集めて作られたとされる破壊の権化──神々の黄昏によって、叩き潰してくれるっ……!!』
クジュラウスの声が、神々の黄昏とやらの中から聞こえてくる。
あれの中に操縦席のような物があって、彼が操作しているのか、それともキメラのように融合したのかは分からないけど、神々の黄昏は立ち上がった。
……って、中二病っぽいネーミングだなぁ……。
だが、それがいい。
某ゲームの最強剣っぽいし、私も嫌いじゃないよ。
こちらもそういうのを、出してあげようじゃないか。
「炎神・火之迦具土!!」
直後私は、青白く燃える炎の龍に包まれた。
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相変わらず不定期更新が続いております。来週も忙しいので、次回がいつになるのかは……。