表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/216

20 大魔王

「なっ……貴様はーっ!?」


 クジュラウスが狼狽(うろた)えている。

 まあ、マオだと思っていた存在が、急に私の姿に変じたのだからね。

 そう、このアイさんの姿に!

 ちなみに私を拘束していた鎧は、素手で破壊させてもらった。


「で、では、先程倒したのは!?

 別の天狐(てんこ)族だったのか!?」


 さっきこの宇宙要塞を相手に、戦った子ね。


「あれも私ですよ。

 分身の1体ですけどね」


「ぶ、分身……?」


「ただし能力は、私と同等の──ですが。

 魔力を少しずつ尻尾に溜め込み、私と同等になったら切り離して、分身として活動させていました」


 とはいえ、能力は私と同等でも、私ほどの思考能力は無いけどね。

 あくまで予め与えていた命令通りに動く、ロボットのような存在だ。

 これは以前アーネ姉さんが仕事をさぼりたいとタダをこねた時に、身代わりを用意する為に考えた方法の発展系である。


 まあ、元ネタは白●の者の尻尾だけど。

 ただしそれぞれの尻尾に、個性は持たせていない。

 将来的には霧化したり、群体化させたりしようかね。


「し……尻尾……!?

 だが今、貴様には1本も……っ!!」


 無いね。

 それはつまり──、


「気付きましたか。

 残り8体が別行動中ということですよ。

 あなたの軍勢による各国への攻撃も、影ながら邪魔させてもらいました」


 分身達の元々の役目は、クジュラウスの居場所を突き止めることだった。

 私が世界中を捜しまわっても、見つからなかったからねぇ……。

 まさか宇宙空間にいるとは……。

 『FF Ⅰ』のティア●ットかよ!

 見つからないはずだよ……。


 だから分身を各国に潜ませて、クジュラウスが動くのを待っていた。

 私の知り合い達に対しても極秘裏に。

 敵を(あざむ)くには、まず味方から……とも言うしね。

 私が姿を見せなければ、その隙を突いてくると確信していたよ。

 正面から戦っても、勝てる見込みなんて無かったのだろうし。

 

 そして予想通り、クジュラウスは軍勢を仕向けてきた。

 軍勢が動けばある程度は事前に察知できるし、そこに分身を潜入させて、情報収集することもできる。

 集団を動かす為には指揮系統は必ず必要になるから、そこでの「念話」でのやりとりを傍受するとか……ね。


 そんな各所からの情報を総合すると、宇宙に拠点があることはなんとなく分かっていたが、マオが攫われそうになっているのを見て、「幻術」でマオの姿になって咄嗟に入れ替わったので、捜す手間が(はぶ)けたなぁ。


 ああ、「幻術」と言えば──、


「先程の波動砲弾とやらも、不発ですよ」


「なっ!?

 巨大な爆発も確かに……!!」


「砲弾は分身達の『空間収納』に収めています。

 爆発は……我々天狐族が、『幻術』を得意としているのはご存じですよね?」


 爆発で消滅したと思い込ませておけば、それ以上の攻撃はされないからね。

 だから「幻術」で、実際に爆発が起こったかのように偽装した。

 

 ただ、本来はどの程度の爆発が生じるのか、その辺は分からなかったので、あくまで私の想像を──原爆のイメージを反映させた形だが……。

 それが上手く波動砲弾とやらの効果と、合致してくれて良かったよ。

 単に毒ガスを撒き散らすようなものだったら、偽装だとバレていただろうなぁ……。


「ば……馬鹿な、あの規模の幻術だと……!?

 この宇宙空間から視認できる規模だぞ!?」


「できるのだから仕方がありませんね。

 あなた程度が、この私の力を推し量ることができると思わないでください。

 伊達に一部から、大魔王と呼ばれている訳ではないので」


 なんかアカネに適当なこと言ったのが、定着しつつあるんだよなぁ……大魔王。

 いずれにしても、クジュラウスごとき小物に、ラスボスムーブなどさせぬわ。


 まあ実際、あいつにとっては私がラスボスだろうしね。

 でも、負けてやるつもりは一切無い。

 ボスに絶対勝てないクソゲーがあっても、いいじゃない?


「さて……そろそろあなたに(わずら)わされるのも、うんざりしていたところなので、ここですべての決着をつけましょうか。

 宇宙空間では無敵を誇るこの要塞とて、内部に入り込まれてしまってはどうしようもないでしょう?」


 そう、『一寸法師』の逸話にあるように、どんなに強大な敵でも、その内部から攻撃すればあっさりと倒せるというのは、定番の1つである。

 ただ、このまま全部吹き飛ばしてしまうというのは簡単ではあるけど、そういう訳にもいかない。


『では、クジュラウス以外の者達には、降伏をお勧めします。

 私に従うのなら、命までは取りません。

 降伏するつもりがあるのなら、手を上げてください。

 この要塞と運命を共にしたくはないでしょう?』


「なっ!?」


 私は「念話」によって、要塞内の魔族に呼びかける。

 ついでに要塞内のあちこちに、「狐火」を発生させた。

 この要塞の外は宇宙空間だから、逃げ場なんか存在しないし、脱出も難しいだろう。

 だから助かりたい者は、私に頼るしかない。

 

 うん、クジュラウスは絶対許さない(絶許だ)が、それ以外の連中はどうでもいい。

 本意ではなくても、立場上は彼に従わなければならないような者達もいるだろうしね。

 たとえば家族を人質に取られているとか……。

 ただし野放しにもできないので、奴隷契約の術式で行動は制限させてもらうが。


 お、手を上げている者が殆どだね。

 さすがに、「狐火」で(あぶ)られたら、命の危機も感じるか。

 じゃ、奴隷契約術式を付与した上で、地上に「転移」させる。

 ……手を上げなかった者は知らん。


「くっ……貴様らっ!?」


 司令室にいた人員も、全員「転移」させた。

 それを見て、クジュラウスは慌てる。


「どうやら、あなたに地獄まで付き合おうと思う者は、いないようですね」


 人望が無いなぁ、クジュラウス君?

 さあ、どんな最期がお望みだ?

 ブックマーク・☆での評価・いいねをありがとうございました!

 次回は来週後半のどこかになるかと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ