表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/216

16 元魔王の憂鬱

 色々あって遅れました。

 ()の名はマオ……。

 本名はゼファーロリスという元魔王で、今はその座を娘に譲っている。


 元々余は、魔王には向いていなかった。

 争いごとは好まず、平穏な日常が好きだった。


 ただ……能力だけはそこそこあった為、いつの間にか魔王を押しつけられていたのだ。

 魔物を操り、味方の能力を上げるという、いかにも魔王らしい能力があった所為で……。

 

 しかも余はあまり気が強くない方だったので、派閥の(おさ)に祭り上げらた時も、その派閥が最大勢力になって魔王に即位することになった時も、余は断り切れなかった。

 そして人間との戦争になることも止めることはできず、結局は勇者との戦いで死ぬような目にも遭ったのだ。


 本当は戦争だって嫌だった。

 でも、欲に目が眩んだ人間達が、魔族の領土に侵攻してきて、魔族もそれに応戦して……。

 戦禍はあっという間に拡大していった。

 今にして思えば、なるべく死者が出ないように対応したのが間違いだったのだろう……。

 初期の段階で人間達に大打撃を与えて、力の差を見せつけておけば、彼らも引き下がっていたはずだ。


 それができる力を、余は持っていた。

 しかし沢山の命を奪う決断ができないという、余の弱い心が必要以上に戦いを長引かせ、結果的に魔族の大敗を招いたのだ。


 こういう余の性格は、娘のシファにも受け継がれている。

 それはもう、顕著にと言ってもいいほどに。

 だから娘が、性格的に合わない魔王をさせられているのは、少し可哀想だとは思うが、余も魔王はもう嫌なので……。

 重い責任とか背負うのは、向いていないし……。

 そう、向いていないのだ。


 そんな訳で、この王都での生活は大好き……。

 何の因果か、身体(からだ)が──そして一時的には精神も子供に戻ったおかげで、気楽な生活を送ることができた。

 遠い昔に──それこそ、記憶に殆ど残っていないような昔に亡くなった両親。

 その両親に甘えられなかった寂しさを、アイママに甘えることで埋めることができた。

 余はまさに今、人生をやり直している。


 ……実の娘は放置気味だが、シファもママに甘えているからいいよね……?


 しかし最近はママが旅立ってしまい、寂しい日々を送っている。

 まあ……学園での生活は、気楽で楽しいから我慢できるけど……。

 身体的にはまだまだ子供なので、このまま何年でも居座るつもりだ。

 幸いにも、学園に何歳で卒業しなければならない……という、決まりは無いので……。

 学びたいことがあれば、いつまでもいてもいい。


 将来、シファが引退した時は、また余が魔王をやらなければならない可能性が高いので、その時が来るまで、遊んでいたって許されると思う……。

 ……いっそ、ママの妹とかに押しつけちゃ駄目?

 

 本当に魔王は嫌なのだ。

 その嫌なことが将来待っているのなら、それまでの猶予期間を、平穏に楽しく過ごしても罰は当たらないと思う……。


 ところがだ……。

 その平穏な生活が壊されようとしている。


 どうやらクジュラウスの手勢が攻めてきたらしい。


 ……彼奴(あやつ)のことは、よく知らない。

 戦死した前四天王の座へ、いつの間にか収まっていた。

 権謀に()けたタイプで、何を考えているのかよく分かんない……。

 自分の世界に入り込んでいるから、人の話もよく聞かないし……。


 そのクジュラウスは、ママに恨みを持っているようだ……。

 で、彼奴が送り込んできたのは、クオハデスの複製体らしい。

 なにやら生物やその能力を複製するとかいう、研究をしていたな、彼奴は……。


 あげくには、この余が持つ魔物を操る能力を再現する為に、我が肉体の一部を提供してほしい──と、要請してしてきたこともあった……。

 気持ち悪いので断ったけど。

 本当に気持ち悪いので……。


 ……もしかしたら、彼奴の目的は余なの?

 以前ダンジョンを襲撃してきた時も、目的は復活前の余を奪取することだった可能性もあったという。

 それならばなおのこと、余が頑張って戦わなければ。

 今後も遊んで暮らす為に、今を頑張る……!


 しかしクオハデスは手強い。

 確か余の10代くらい前の魔王だったっけ……。

 凶暴過ぎて、反乱によって封印されたとかいう……。


 ちなみにママのご先祖様である天狐(てんこ)族の女王は、3代前の魔王だ。

 こちらは権力争いに負けて排除されたそうだが、これには我が一族も関わっている。

 でもママは、直接関わっていた古竜ガルガすらも許したというから、余に対しても過去の因縁を持ち出して責めるようなことはなかった。

 本当に度量が広い……。


 そんなママの一族が没落することもなく、魔族の中で健在だったのならば、人間との戦争にも負けなかっただろうなぁ……。

 

 それはさておき、クオハデスだ。

 本体も強いが、奴が引き連れてきた何千匹もの眷属も邪魔だ……。

 普通の魔物ならば、余の能力で支配できるのだけど、クオハデスの方が眷属への支配力が上回っているらしい。


 仕方がない……。


『ココア……アリが邪魔だから、手伝ってくれる?

 そちらは殆ど片付いたでしょ……?』


 念話でママの妹であるココアに、助力を求める。

 彼女が率いる天狐族の一団は、王都の周囲を囲んでいた魔物の群れと戦っていたけど、もう殆ど焼き払っているはずだ。


『いいですよー。

 今行きまーす!」


 ……うん、素直で有能で……そしてなによりも、とてもいい子だ。

 やっぱり次の魔王は、ココアを推薦しようかなぁ……。


 とにかくこれで、クオハデスとの戦いに集中できる。

 今後もたまに夜勤の仕事が入るようになったので、その影響で更新が不定期になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ