11 巨獣激突
地下から巨人が現れました。
20m以上はあります。
普通の巨人族は、数mから10mくらいのはず……。
アイ様に連れて行かれたダンジョンで、直接巨人達を見たから分かります。
あそこでの訓練は大変でしたねぇ……大変でした。
しかしこの巨人は、あまりにも大きい。
上位種族なのでしょうか……?
どう見ても、私では太刀打ちできません。
「ふぇ……!」
巨人の足が上がり、その裏が私の頭上へと迫ってきました。
こんなの、魔法で弾くのは無理です。
だけど逃げようとしても、あんな大きなものから、逃げ切れる気がしません。
このままでは踏み潰され──、
「ゴワァッ!?」
しかし私は、踏み潰されませんでした。
巨人の足に何かが当たり、着地場所がずれたようです。
「アレクサンドラ!?」
仔竜のアレクサンドラが、巨人の足に体当たりをして、私を助けてくれたようです。
でもいくら竜が強大な魔物だとしても、アレクサンドラはまだ幼い……。
私の腕でも抱えられるほど小さなこの子が、あんな大きな巨人に敵うとは思えません。
ところが、予想外のことが起こります。
『ルヴェリク、逃げろ!!』
「ふえっ!?
今の『念話』誰っ!?
まさかアレクサンドラっ!?」
喋ることができたのですか!?
竜は人間以上に知能が高いとは聞いていましたが、こんな小さな子でも……。
そんなアレクサンドラが、巨人の前に立ちはだかりました。
私を逃がす為に、時間を稼ごうとしているようです。
「無茶です!
あなたでは、そんな巨人に勝つことはできません!」
『大丈夫』
アレクサンドラがそう答えた瞬間──、
「ふええぇぇぇぇぇーっ!?」
アレクサンドラは、急激に身体を膨らませていきます。
ええぇ……大きくなれるのですか……!?
アレクサンドラが大きいです……!
巨人よりも大きくて、全高30……いえ40mはあるかも……?
尻尾の長さを含めると、もっと大きいです。
アレクサンドラってこんな巨竜だったの!?
これならば、巨人とも対等に戦えるかもしれません。
「アガアァァァァァっ!!」
アレクサンドラが咆哮を上げ、巨人を殴り倒しました。
うわぁ、凄い力……!!
そして倒れた巨人の頭を、踏み潰します……。
それは私が巨人にされそうになったことの、仕返しですか……?
「あ……ありがとう、アレクサンドラ。
あなたのおかげで助かりました」
私がお礼を言うと──、
『逃げろ』
「え……?」
アレクサンドラは再び私へと、逃げることを促します。
何故?
巨人はもう倒して……。
「……!」
しかしその時、地面が震動するのを感じました。
また地面の下から、魔物が現れ……!?
いえ、違いますね。
これは……足音?
「ガアッ、アァァァーっ!!」
アレクサンドラは威嚇するように吠えました。
それも複数の方角に向かって。
それに応えるように、いくつもの吠え声が聞こえてきました。
そして足音と思われる振動は、どんどん大きくなっていきます。
それはもう、立ってはいられないほどの揺れとなりました。
「ふえっ、あちこちから魔物が……!!」
四方から先程の巨人に匹敵するほど巨大な魔物が、押し寄せてきます。
大きさこそアレクサンドラの方が大きいけど、多勢に無勢では不利なのでは……!?
実際、アレクサンドラは魔物達をなぎ払っていますが、次々に他の魔物達が跳びかかっていきます。
このままでは……っ!!
というか、あんな大きな存在が暴れたら、壊れた建物の破片が撒き散らされて……!!
ふえぇ、無理無理っ!!
下敷きになって死ぬぅ~っ!?
「………………は?」
しかしその時は、いつまで経っても訪れませんでした。
気がついた時には、城壁の内側に私はいました。
いえ、私だけではありません。
「どういうことだ……?」
「死んだと思ったら、いきなり目の前の風景が変わって……」
どうやら私と同じような状況の人が、他にも沢山いるようです。
これは「転移魔法」……?
誰かが逃げ遅れた人達を、逃がしてくれた……?
でも、こんなことができるのって……。
「……あ!」
空に巨大な黒い球が浮かんでいます。
それに魔物達が吸い込まれている……!
あ~……あれは「重力魔法」ですね。
しかも魔物だけを吸い込むという、高度な制御をしています。
こんなこと、アイ様くらいにしかできないですよぅ……。
だけどアイ様は一体何処に……?
その後、元のサイズになって戻ってきたアレクサンドラや、帝都の外にいた魔物の群れを掃討した皇帝陛下にも、アイ様の居場所は分からないようでした。
もしかしたら、もう帝国にはいないのかもしれません。
襲撃を受けている他の場所を、助けに行った……ということなのでしょうか?
しかし今、それを確かめる術はありません。
それよりも私達がしなければならないのは、破壊された帝都の復興ですね。
これから忙しくなりそうです……!