1 マイナススタート地点
本日2回目の更新。当面は更新時間は不定期で、1日に何回か更新する場合もあります。
異世界への転生が始まってからすぐに、私の意識は途切れてしまった。
そして再び意識が戻った時──。
私は自分がどんな状態にあるのか、把握できずにいた。
目はよく見えないし、身体も自由に動かせない。
たぶん母親から生まれたばかりで、身体が完全な状態ではないのだろう。
しかも私の身体の下にあるのは、明らかに布団の感触ではない。
なんだかザラザラ・ゴワゴワしていて、藁や籾殻の上に直接寝かされているような……。
え……赤ちゃんを、そんなところに寝かせる?
まあ、異世界だしなぁ……。
地球の常識が通じないのも当然か。
それに、何かモコモコした物で身体が覆われているみたいだから、あまり気にならないし、取りあえず問題は無い。
ところで、私の身体はうつ伏せに寝かされているのだけど、生まれたばかりの赤ちゃんって、こんな姿勢で寝かせるのかなぁ……?
別に苦しくないからいいけど、赤ちゃんの身体の構造的にいいのだろうか?
あと、周囲から「キュー、キュー」って聞こえてくる。
これは……この世界の言語なのかな?
いや……言葉にしては、そこに複雑な意味が込められているようには感じない。
どちらかというと、何か小動物の鳴き声っぽいような気がするんだけれど……。
……なんか、おかしいな……?
いや待て、まだ慌てるような時間じゃない。
家で飼っているペットか何かが、近くにいるだけだ。
生まれたばかりの赤ちゃんの傍に動物って安全なのか?──という疑問もあるが、きっとそうだ。
ハッハッハ、私と一緒に生まれた兄妹が鳴いているなんてことが、あるはずがないだろ、常識的に考えて。
……そんなふうに考えていた時期が、私にもありました。
うん、私も声を出してみたところ、同じような声が出たんだよね……。
可愛いけど、人間の声ではないんじゃないかな、これ……。
一体どういうことだってばよ!?
実際のところ、おかしいことは他にもある。
私は今、赤ちゃんだからすぐお腹が減ってくるんだけど、母親の方から授乳してくる気配が無い。
鳴いて呼んでも放置されている。
だから私は空腹に耐えかねて、自ら美味しそうな匂いがする方へと、這っていった。
なんだか本能に導かれているような気がする。
……って、生まれたばかりの赤ちゃんって、這い這いできたっけ?
それに、ようやく乳首らしき物を見つけて吸い付くと、私の両隣でも母乳を吸っているような気配がする。
あるぇ? 人間の乳首って3つもあったっけかなぁ?
しかも最低でも3つであって、私の兄妹と思われる気配はもっと多い。
つまり、その数に対応した乳首の数があるはずだ。
これはそろそろ私も、現実を直視しなければならないかもしれない。
そう思っていた時、衝撃的な出来事が私を襲う。
母乳を飲んで腹が膨れたら、自然と出す物も出したくなってくるはずだ。
しかし膨満感はあるのに、便意がなかなか湧いてこない。
さすがにちょっと苦しくなって呻いていると、突然それがきた。
「キュウゥン!?」
思わず可愛い悲鳴が漏れる。
でも仕方が無いでしょ。
いきなり肛門を撫でられる──いや、これは舐められている!?
そんな異質な感覚が襲ってきたのだから。
これはもしかして、ママン!?
ママンが私のア●ルを舐めているの!?
……確か聞いたことがある。
生まれたばかりの子犬とかは、自力で排泄することができないので、親が肛門を舐めて刺激することによって、排泄を促すのだ──と。
つまり、これはそういうことなのだ。
しかし前世でそんなプレイの経験すらなかった私としては、これはちょっと刺激が強すぎる。
しかも相手はおそらく、母親。
生まれてすぐに、母娘近親百合のア●ル舐めプレイだなんて……。
こんなの……こんなの……らめぇぇぇぇぇぇ!!
……妄想で現実逃避しないと、羞恥心で死にそうですよ?
出る物は出たけど、涙も出た……。
数日後、ようやく目が開いた私が見たママンは、やっぱりキツネのような動物だった。
うん、知ってた……。
ただ、私が持っているキツネのイメージとは、ちょっと違っている。
尻尾の先などが部分的に白いが、全身が深紅の毛皮で覆われているのだ。
つまり全体的に見れば、真っ赤なキツネなのである。
おい……何処のうどんだよ……。
通常の3倍速そうだよ……。
そして私は、自分の手……というか、前足を見る。
あ……肉球可愛い。
Oh……今世は畜生ライフ確定。
これで一体どうやって、美少女と百合百合しろと!?
あの女神、確かに人間に転生させるとは、一言も言わなかったけどさぁー!?
ルートの分岐は1章4話目くらいからですが、それまでにも部分的な修正は入っています。