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8 蠅の王

 とんでもなく巨大なハエの怪物が、こちらに向かって飛んできた。

 おそらくだけど、ハエの魔物達の女王なのかな?

 城が空中に浮いているかのような、圧倒的な存在感だねぇ……。

 まるで魔王城。


 というか、なんだか見覚えがあるんだけど……。


「おいおい、どーするんだよ、シス!?

 アレはアイがちょっと苦戦したとかいう、クオに匹敵するんじゃないか!?

 そんなのと戦う余裕はもう無いぞ!?」


 ネネお姉ちゃんがうるさい。

 でもおかげで思い出せた。

 以前お姉ちゃんに見せてもらった、人間になる前のクオの身体(からだ)だ。

 見たことも無いほどの巨体で、食いでがあったね。


 そう、みんなでカニ鍋パーティーをしたんだよ。

 ……アリだけど。


 だけどマズイなぁ……。

 もしもアイお姉ちゃんがちょっとでも苦戦した相手と同格だとしたら、あたし達に勝ち目があるとは思えないんだけど……。


 でも今は、迎撃しなきゃいけない。

 あたしは「狐火」を、女王バエに向かって撃ち出す。

 続いて子供達も、「狐火」を撃つ。


 しかし女王バエは、回避しようともしない。

 真っ正面からあたし達の攻撃を受けても、あいつは平然としていた。

 くっ……今のあたしに残っている魔力では、致命傷を与えられる気がしないよ……!


 それから女王バエは、お腹の先端?

 そこから何かを、連続で撃ち出した。


「みんな()けてーっ!!」


 降り(そそ)ぐそれは、直撃した家々を粉々にした。

 あたしやお姉ちゃんならともかく、他の者達が喰らったら、命が無いよ……!!

 あたしは回避し損ねた者達に対して、とっさに「防御魔法」をかけてあげた。

 これで死者は出ないと思うけど……。


「うえっ!?」


 地上に着弾したその物体から、巨大な芋虫のようなものが飛び出してきた。

 ウジ虫!? あれは卵かいっ!?

 それが一気に数百匹に膨れ上がって、凄く気持ち悪い……。


 だけど、そのウジ虫に喜んでいる者がいる。


「よっしゃ、ご飯だっ!!」


 小さくなっていたネネお姉ちゃんが、ウジ虫達を吸収して、元の姿に戻っていく。

 お姉ちゃんの能力は、対象となる生物を瞬時に分解して、吸収するというもので、息を吸い込むかのような手軽さで使える。


「お姉ちゃん、あの大きいのにも、それを使えないの?」


 女王バエにも使えれば、話が早いのだけど……。


「ん~……これは弱い奴にしか効かないから、たぶん無理。

 そもそも大きすぎるし」


 使えない……。

 いや、今はウジ虫たちを吸収して回復したお姉ちゃんだけが、頼みの綱だ。


「じゃあ、普通に戦って!

 お姉ちゃんに任せるから!」


「え~?

 私だって、完全回復している訳じゃないんだけどなぁ……」


「あたしだって、みんなを逃がさなきゃいけないんだよ!

 時間を稼いでっ!!」


「……しゃーないなぁ。

 やってやろうじゃん!!」


 お姉ちゃんが空へと飛び上がり、女王バエに突き進んでいく。

 お姉ちゃんの身体(からだ)から吹き上がる炎が、女王バエに襲いかかるけど、女王バエは激しく羽ばたいて、炎を吹き散らした。

 ……やっぱり炎は、あまり効いていない感じだなぁ……。

 あたし達は別の属性魔法を使えなくもないけど、炎以上の威力は出せない。


 アイお姉ちゃんなら、別の属性でもあたし達の攻撃以上の威力を出せるんだけど……。


 とにかく今は避難が優先!

 残り少ない魔力でも、子供達や人間と魔族の力を借りれば、「転移魔法」を使えるはずだが……。

 しかし数万人を運ぶのは、ちょと厳しいなぁ……。


 でも、やらなければ!

 アイお姉ちゃんにこのトウキョウの平和維持を任されたんだもの、みんなに何かあったら申し訳無いよ。


 しかし「転移」の準備に手間取っている内に──、


「ぐええぇぇ~っ!!」


 ネネお姉ちゃんが、空から降ってきた。

 万全とはいえない状態だったとはいえ、もう負けたの!?


 これじゃあ、避難は間に合わないっ!!


「くっ……お前達、後は頼む」


『お、お母ちゃんは!?』


 あたしは子供達に、後のことを全部預けることにした。


「あたしは、あいつを差し違えてでも倒す!!」


『そ、そんな!?』


 もう、犠牲を出さずに済むような状況じゃないからね……。

 ならば犠牲は最小限で──あたしだけでいい。

 あたしの魂の力をすべて燃やし尽くせば、あの女王バエくらいは倒せるはず……。


 そんな覚悟を、あたしが決めたその時──、


「えっ──?」


 周囲が白く染まる。

 そして凄まじい轟音が、空気のみならず、あたし達の身体を揺るがした。

 光で(くら)んだ目が慣れたので空を見上げると、黒焦げになった女王バエが落下していくのが見える。

 

 今のは雷……?

 それはアイお姉ちゃんも、得意としている魔法だけど……。


 だけど周囲には、アイお姉ちゃんの気配は感じなかった。

 その代わり──、


「これは……シファ……?」


 小さくシファの気配が、街の外にあった。

 駆けつけてみると、そこにはシファが倒れている。

 意識は無いようだ。


「シファがさっきの雷を……?

 そんな訳無いよねぇ……?」


 むしろアイお姉ちゃんがシファを助けて、ここまで運んで来た。

 そのついでにあの女王バエも、倒してくれた……。

 たぶんそうなのだと思うけど、じゃあお姉ちゃんは何処へ行ったの……?

 用事があるので、明後日の更新はできません。

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