4 大集合
私の名はクラリス・ドーラ・ローラント。
ローラント王国の女王よ。
本来なら国で1番偉い存在のはずなんだけど、この場では立場が弱い方の存在だわ。
……主に目の前にいる6匹のキツネの所為で。
『初めまして。
あなたが1番上の姉なのですね?』
『そうよ~。
私達が旅立つ時に、お母様のお腹にいた子ですね~」
『そういえば、お腹が膨れていたね』
『いえ、その時の子だったのか、順番までは覚えていませんね』
『そんなことより、ご飯まだ~?』
『姉さん、さっき食べたでしょ?』
「あなた達、自由か!」
なんで女王の執務室が、キツネの巣になっているのよ……。
今、ここにいる赤くて尻尾の多いキツネ達は、確か名前はココア、アーネ、シス、ママン、ネネ、そしてアイだったっけ。
まあ私には、誰が誰なのか見分けは付かないけれどね。
「私は帝国の皇帝が来るって、聞いていたのだけど?」
それなのに、余計な者達までついてきている。
『折角なので、久しぶりに家族勢揃いを……と、思いまして』
これはアイね。
ここでなくても良いでしょ……って思うけど、あまり常識が通用しない相手だから、言っても無駄なのかしらね……。
「取りあえず、誰が誰なのか分からないから、人型になってくれないかしら?」
「ああ、そうですね。
それでは着替えてきます」
アイは四つ子だっけ?
皇帝の顔は知らないけど、他の3人は人型だとそれなりに個性があるから、なんとか見分けることができる。
ココアは姉達より幼いから、更に分かりやすい。
いや、ネネはたまに子供になっているのでややこしいけど……。
それから暫くして、別室で着替えた6人が戻ってきた。
……皇帝は長女なだけあって、少し大人っぽいわね。
年齢は同じなのに、不思議なものだわ。
しかも謎の威厳があって、ちょっと悔しい……。
それとママンは最近になって、人型になれるようになったそうだ。
なんでもアイが膨大な魔力を渡して、それを吸収することで完全体になったとかなんとか……。
魔族って、変な生態ねぇ……。
「改めまして、女王陛下。
これから王国と我が帝国、それと魔王国ともかなぁ?
仲良くしていきましょう?」
「ええ、そうね……」
親と姉妹を引き連れてきて言われても、断れる訳ないでしょ……。
あんた達、ちょっと怖いのよ……
実際、1人だけでも国を滅ぼせる戦力よね……?
まあ、味方なら頼もしいことこの上ないけど……。
「よしよし、これで安心して旅立てますね」
「「「ん?」」」
「は?」
「「え?」」
「なんて?」
突然アイが、おかしなことを言い出した。
「ちょっと、どういうことよ!?」
私が問い質すと、アイは──、
「そろそろクジュラウスと決着をつけようと思いましてね」
そう答えた。
クジュラウスって、例の魔族よね?
麻薬事件の黒幕だっけ……。
確かに邪魔な存在ではあるけど……。
「勇者を復活させるとか、放っておくと何をするのか分かりませんからね。
そこで私は、クジュラウスを討つ為の旅に出ようと思います」
「でも、あてはあるの?
お姉ちゃん……」
「あては……無いです」
シスの問いに、アイは軽い調子で答えた。
は? あてもなく彷徨い歩くってこと?
「だから……虱潰しです」
アイは右手の人差し指を回す。
クルクル、クルクル……と。
「この王都を起点にして、渦を描くように進んで行きます。
それこそクジュラウスが見つかるまで、世界の果てまでも。
ここ最近、私の感知能力を鍛えたので、その範囲は20kmほどとなります。
その間隔で範囲を広げていけば、いつかは敵の拠点も見つかるでしょう。
名付けてグルグル作戦です!」
……また変なことを言っている。
「まあ……動き回っている相手は、見落としてしまうでしょうけど、それは今まで通り弟妹達を国内に巡回させておけば、動きを察知することはできるでしょう。
魔王国や帝国の領土の方もカバーできるように、ママンも更なる人員の貸し出しには了承しています」
ああ……ママンがここに来ているのは、そういう意味なのね。
「お姉様、私も同行致します!」
「いえ、ココア達はこれまでのように、国内の重要拠点の防衛をお願いします。
あなた達が守ってくれるから、私が自由に動けるのです」
「そうですかぁ……」
シュンとするココアだけど、耳がペタンと垂れるのが可愛いわね……。
「それでは、詳細を詰めていきましょう」
と、アイは今後の防衛計画を話し合い始めたけど、これ私いる?
……後で報告を受けるだけで、いいような気がするわ。
「……マルガレテ、おいで」
「にゃ?」
この場で私は特にやることも無いし、護衛であるマルガレテを抱っこして、癒やされるとしましょうか。
いいわよね……猫型獣人。
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