5 ドワーフの洞窟
私とシスは、ゴブリンのボス──名前が無いと不便なので、ゴングと名付けた。
ゴブリンキングの略だ。
そのゴング達の案内で、ドワーフが住んでいるという洞窟へと向かう。
しかしゴブリンの次にドワーフと接触するとは、マジで某スライム魔王みたいなルートに入っているなぁ。
まあ、あくまで本命は、人間やエルフなどの美少女とお近づきになることなんだけどさ。
いや……ドワーフも作品によっては、女性が合法ロリな種族の場合もあるので、希望は捨てない。
……ロリは、好みじゃないけどね……。
そして丸1日ほどかけて辿り着いたその洞窟──というか、洞窟のイメージを覆すくらい、巨大な割れ目が岩肌にできているんだけど……。
縦100m、横20mくらいあるんじゃないかな?
これが入り口なら、中に巨大な地下都市があっても不思議ではないな……。
『ところで、ゴブリンとドワーフって、仲がいいの?』
そんな私の問いに、ゴングは首を左右に振る。
『仲、よくない。
出会えば戦いになること、多い』。
そうか……ゴブ×ドワは有り得ないんだね。
なんとなくホッとしている私がいる。
あまり特殊なカップリングは、見たくないよ。
『じゃあ、ゴング達は帰っていいよ。
ここからは、私達だけで行くから』
『承知』
『気をつけて帰ってね~』
私達はゴングに見送られながら、洞窟の中に踏み入った。
入り口に見張りはいなかったので、本当の入り口はもっと奥にあるのだろう。
『レ●ーラ』
『レミ……?』
光の魔法で洞窟内を照らす。
洞窟内で下手に火を使うと、ガスとかに引火しかねないから火気厳禁だ。
で、光で照らしても奥の方は全然見えないので、かなり深い洞窟だという印象だね……。
こりゃ、ドワーフ達の住処までは、結構距離があるかもしれない。
よし、中が迷路のようになっているかもしれないから、脳内でマッピングしながら進むぞ。
普通ならすぐ忘れてしまいそうなものだけど、レベルが上がって「知力」などの数値も上昇しているらしく、記憶力も良くなっているから、強く記憶しようとしたことは、簡単には忘れないようだ。
まあ、意識していないどうでもいい事柄は、すぐ忘れるんだけどね。
『シス、罠とかがあるかもしれないから、無闇にあちこち触らないでよ』
『うん!』
返事はいいけど、シスは好奇心旺盛なところがあるから、ちょっと心配。
で、暫く洞窟内を進むと、自然の岩壁だったものが、木材で補強されて坑道のようになっていった。
明らかに人為的に掘り進めた形跡だね。
しかしその坑道は、あちらこちらへと枝分かれし、まるで蟻の巣のようだ。
ドワーフ=蟻説を提唱したら怒られるかな……。
とにかく入り組んで迷宮のようになっている坑道を、マッピングしながら私達は進む。
こうなると全部のマップを、埋めたくなるなぁ……。
そんな風に当初の目的を忘れるほど、特に何も起こることが無いまま、私達は進んで行く。
それはつまり──、
『何もいないね……?』
『そして誰もいなくなった……』
なかなかドワーフに、会えないということでもある。
もしかしてここはもう、なんらかの理由で、放棄されているのかな?
折角人間の情報を得られるチャンスだったのに、それは困る!
私は嫌な予感を覚えつつ、先を急いだ。
すると──、
『お姉ちゃん、これ……』
『なんてこったい……』
誰かが倒れていた。
たぶんドワーフだろう。
「たぶん」というのは、それは既に半ば白骨化していて、生前の姿がハッキリとしないからだ。
……胸から腹にかけて、服の損傷が激しいということは、獣に内臓を食い荒らされたって感じなのかな……?
それからも進んだ先には、ドワーフと思われる遺体が転がっていた。
不幸中の幸いなのは、その数はそんなに多くないということだ。
これらの遺体は逃げ遅れた人のもので、大多数は避難している可能性は高い……と思いたいが……。
ともかくドワーフ達を襲った何者かが、まだここに潜んでいるかもしれない。
『シス、敵の気配は無いけど、気をつけてね』
『う、うん』
私達は警戒しながら、進んで行く。
何度か袋小路に入り込んでは戻り──ということを繰り返し、ようやく辿り着いたそこは……、
『大きな扉……』
それがあった。
というか門なのか、これ……。
縦横共に10mくらいはある。
その門の前には、10人ほどのドワーフの遺体があった。
彼らはここを守って戦い、そして息絶えたということだろうか?
そしてこの門の奥に、ドワーフ達が避難している?
まあ、門が開いていないのだから、何者かが閉じたのだろうし、生き残りは確実にいるはずだ。
でも、破壊するのならともかく、私達では開けられないよな、これ……。
私達の前足は、扉の開け閉めには適していない。
それに門には内側から閂がかけられているのだろうし、外側から開ける手段は、破壊すること以外では無いと思う。
つまり、中から開けてもらうしか無いんだけど、「念話」で呼びかけても応えてくれるかなぁ……?
そんな風に、これからの方針を考えていたら、突然周囲に気配を感じた。
『シス!
なにか、来たっ!!』
『う、うん!』
気がつくと、周囲が──闇が蠢いていた。
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