プロローグ 墓あらし
多分最終章突入です。この章から他人の視点が入ります。
そして、総合評価2000突破、ありがとうございました。
俺の名はフブキ。
コールラント公爵家の次男だ。
なにやら妹のアカネが持ち込んだ情報──。
「我らが偉大なご先祖である勇者様が復活した」
……という、そんな世迷い言を信じた訳ではないが、念の為に初代の墓所を確認することにした。
まあ、アカネが不安そうにしていたので、俺の独断で……だが。
父上達もアカネの話を本気にしている訳ではないので、これには我が公爵家は関係無く、あくまでも俺個人の私的な行動である。
そんな訳で俺は、騎士十数名を引き連れて、コールラント公爵領の北にある初代の墓所へと訪れた。
初代の墓所は広く、地下3階にも及ぶ。
盗掘者に対応する為の罠も仕掛けられており、さながら小さなダンジョンだ。
普段は地上部にある墓石に対して鎮魂の儀式を行っているので、地下に入ることはまずない。
100年以上も経過しているから、崩落の危険もあるし、無数の虫が入り込んで繁殖もしている。
正直言って、今すぐに地上へ出たいところだが、最奥部にある初代の遺体を納められた棺を確認するまではそうもいかない。
「フブキ様……この床に積もった埃……。
足跡はありませぬ。
とても人が出入りしたようには……」
「何も無いのならば、それが1番良い。
ただ、可愛い妹が、刀を折られたと、泣いて帰ってきたんだ。
やれることはやっておかなければ、兄の沽券に関わる」
「相変わらず妹御には甘いですなぁ」
「まあそう言うな」
部下の軽口を軽く流す。
だが、妹のアカネに甘いのは事実だろう。
気位が高く横暴な2人の姉から比べれば、妹は俺の後ろをついてまわり、姉達が興味を示さなかった剣の稽古にも付き合ってくれて可愛いものだった。
まあ、俺達兄弟にベッタリだった所為か、少し男勝りな性格になってしまったが……。
我々は軽口を叩きながらも、慎重に墓所を進む。
しかし初代の棺がある玄室に辿り着くと──、
「これは……!!」
我らの間に緊張した空気が走る。
初代の遺体が納められているはずの石棺の蓋が、開いている。
中は……空だ。
「馬鹿な……!?
初代は何処にっ!?」
周囲を見回しても、何処にもいない。
それどころか棺が開いている以外は、荒らされた形跡すらなかった。
しかし──、
「グワッ!?」
「ギャッ!!」
突然、部下達が倒れる。
これは……斬り傷を受けている!?
しかも鎧ごと斬り裂くとは、相当な手練れか……!?
「そこかっ!!」
微妙な気配を感じ取った俺は剣を抜き、背後に向かって振る。
するとその剣は、何かに弾かれた。
相手の身体を斬った感触は無い。
武器か?
その予想通り、そこには刀を構えた人の姿があった。
全身を甲冑で包み、顔も仮面で隠しているので、人間かどうかすらよく分からない。
だがあの装備は、古い本に載っていた初代の装備に似ている。
まさか本当に……!?
俺が動揺している内に、初代の姿がかき消える。
速い!?
いや、床に積もった埃が舞い上がっていない。
目にも留まらぬ速度で動いているのなら、あり得ないことだ。
「っっ!!
これは『転移魔法』か!?」
そんな高等魔法の使い手だと……!?
確かに初代も、使いこなしていたと伝え聞くが……!
直後、背後に気配が生まれる。
そして右肩に衝撃を感じた。
「フブキ様、腕がっ!!」
回避が間に合わなくて、攻撃を受けた。
身体の右側が軽くなるのを感じた後に、一拍おいて激痛──。
「ぐああっ!!」
右腕を斬られた!
相手の動きに、まったくついていけないっ!!
俺よりも未熟な部下達では、対応できないだろう。
このままでは、全滅するっ!!
「──っ!!」
初代が刀を振り上げた。
俺にトドメを刺そうというのだろう。
万全な状態でも無理なのに、深手を負った今、逃げることは不可能だ。
「済まぬ、アカネ……っ!!」
俺は死を覚悟した。
先の展開に悩んでいるので、ちょっと更新頻度が落ちるかもしれません。あと、除雪で時間が……。