表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

188/216

エピローグ 家族会議

 この章のラストです。

 私はマオを連れ立って、魔王城へと訪れた。


「これはようこそマオ様、アイ様」


 メイドのヒミカが出迎えてくれた。

 彼女は北方の地に点在していた魔族の村──そこから魔王国へと移住し、城に就職した者達の中の1人だ。

 今では彼女のような移住者によって、魔王城の周囲には大きな街が構築されつつある。

 そんな街から、浮遊している魔王城へ渡る為の橋も──。

 斜めに空へ向かって伸びる橋とは、なかなか面白い風景だ。

  

「調子はどうですか?」


「大変充実しておりますよ。

 今度文官の試験を、受ける予定です」


 魔王国でも、少しずつ人材が育ちつつある。

 魔族にはあまり身分や種族差別が無いので、最初はメイドだった者からでも、国家の運営に(たずさ)わることができる立場へと、昇進できるというのが大きい。

 勿論、実力次第ではあるが。


「シファは元気にしていますか?」


「あ~……いつも通りです」


「……いつも通りですか」


 魔王としての執務で、疲れ果てているってことかな。

 あまり荒事が得意ではない彼女には、必然的に事務仕事が集中しがちだ。

 それすらもできないとなると、魔王としての彼女の存在意義は無くなってしまうから、大変でもやってもらうしかないんだよねぇ……。

 可哀想だがそんなシファに、これから衝撃の事実を告げなければならない。


「それでは、面会の手続きをお願いします」


「かしこまりました」


 それから私達は、シファの執務室に向かう。

 そして執務室に入ると、シファは机に突っ伏していた。

 手には書類に書き込む為の、ペンが握られたままだ。


 まあこれは、実際にシファが意識を失っている訳ではなく、ただのパフォーマンスだと思うが。

 直前に面会の手続きがされているのだから、先程まで意識があったのは確かだし、このタイミングで都合良く気絶する訳がない。


「うう……こんなの、ブラック企業なのじゃ……」


 ほら、なんか分かりやすい寝言(ざれごと)を言っている。

 

「こんにちは、シファ。

 寝たふりはいいから、さっさと起きましょうか?」


「いや、もう寝たいのじゃが!?

 最近仕事ばかりで、睡眠時間が削られておるのじゃ!」


「魔族の体力なら、1ヶ月くらい眠らなくても大丈夫でしょう?」


「そんなの嫌なのじゃ~!!

 (わらわ)はスローライフを所望するのじゃ~!!」


 と、シファが駄々をこねている。


「まあ、忙しいのは、建国直後の今の内ですよ。

 国が軌道に乗り、人材が育ってくれば、楽になるはずです」


「それがいつになるのか分からないから、(つら)いのじゃが……」


「だとしても、いつまでもマオの前でそのザマでは恥ずかしいですよ?」


 私の言葉に、マオも頷いている。

 母親としても、娘の醜態はあまり見たくはないだろう。


「う……うむ」


 そしてシファも、母親の名を出されると弱い。

 彼女も少し落ち着いたようだ。

 しかし──、


「そのマオですが、記憶が戻っていました」


「はあっ!?」


 私の報告に、シファは再び冷静さを失う。

 まあ、仕方がないね。


「しかも数年前に」


「はああっ!?

 マオ……いや母上、本当に……?」


「……うん」


「うん……って」


 シファが呆れ顔になる。

 母親が数年間も子供のふりをしていたのだから、どう反応して良いのか分からないのだろうな……。


「それなら、妾の代わりに魔王に復帰してくれても……」


「いや」


 しかしマオは首を振った。


()はこのまま、ママの娘を続ける」


 マオも魔王だった頃に、色々と気苦労が多かったらしく、魔王への復帰には気乗りしないらしい。

 そういう嫌なことから逃げようとする姿勢は、ある意味シファと母娘(おやこ)だな……と、実感する。

 いずれにしても、今の子供の姿で魔王というのも無いな……とは思うが。


 しかしそれでは、シファが納得しない。


「公式には、妾の妹なんじゃが!?

 というか、いい年して、何がママじゃ!?

 妾だって、母上やアイ殿に甘えたいわ!!」


 なんか情けないことを堂々と言っているし。


「シファは現状でも、周囲に甘えすぎだと思います」


「もっと頑張った方がいいと思う」


「酷いっ!?」


 でも実際、国の運営の骨子は私やセリスさんが作ったし、都市開発なんかも我がトウキョウ自治領の人員や物資が多数投じられていた。

 他にも色々と協力している。

 たぶんシファだけの力では、現在の魔王国は存在しない。

 というか、王座の奪還すら不可能だっただろう。


 ……頑張ってはいるんだけどねぇ……。


「マオがシファの妹という設定なら、いずれは王座を引き継ぐ時がくるでしょう?

 その時まで我慢しなさい」


「「ええぇ~?」」


 シファだけではなく、マオまでが不服そうに声を上げた。

 やっぱり母娘だわ、この2人……。


 ともかく現状では、まだ魔王国は平和だ。

 でも、この平和を継続させていく為には、そろそろクジュラウスとの決着をつけないとなぁ……。

 しかし情報が少ないから、待ちの姿勢になってしまうのがもどかしいね。

 ブックマーク・☆での評価・いいね・感想をありがとうございました!


 明後日は用事があるので、更新できない場合もあります。話の内容も決まっていませんし……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ