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14 彼女と彼の事情

 廃村で拠点を構築中──。

 この現場にいる者の中で、最も能力(ちから)が無いのはただの伯爵令嬢であるルヴェリクだろう。

 拠点の構築なんて基本は肉体労働なんだから、非力なお嬢様にはテントを設置することすら難しいだろうなぁ……。


 そんな手持ち無沙汰のルヴェリクは、村はずれで石を積んでいた。

 その周囲で私の弟妹達が、『何をしているの~?』と、物珍しげにウロウロとしているが、彼女は反応しない。

 何か思い詰めている様子だ。

 

 ……あの石は、村人のお墓のつもりかな?

 彼女なりに責任を感じて、罪滅ぼしをしたいのかもしれない。

 

「それでは、すぐに崩れてしまいますよ?」


「ふえっ……これはその……っ」


「こうすれば崩れません」


 私は「地属性魔法」を使って、積み上げられた石を岩石の成分でコーティングする。

 更に形状にも変化を加えて、お地蔵さんにした。


「ふわ……凄いです……」


「あなたにも、できると思いますよ?」


「え……私には無理ですよ……?」


 ルヴェリクは首を振るけど、それは彼女がそう思っているだけにすぎない。


「あなたの他の人格が魔法を使っていたので、不可能ではないはずです。

 あなたには色々な可能性があります。

 できないと思っていたら、何もできませんよ」


「……私が魔法……を?」


 戸惑うルヴェリク。

 自分は魔法を使えるとは、想像もできないまま、これまで生きてきたのだろうな……。


「ご希望でしたら、私が教えますよ」


「え……あの、その……。

 お願いします……」


『姉ちゃん、僕らも~』


 おう、暇そうにしている弟妹達もいいぞ。

 この子達は魔物が出たら戦う役目だから、魔物が出てこないと何もやることがないからね……。


 とはいえ、そんなに時間は無いので、基本的なことだけ教えることにした。




 夜になると、何度か魔物の襲撃があった。


「炎などの派手な攻撃は、敵の拠点に感づかれる可能性があるので使わないように。

 可能な限り、光は出さないでください」


 まあこの襲撃が、敵の拠点から送り込まれた魔物による物だという可能性もあるけど、まだ敵が我々の動きに気付いていないという前提で対処する。

 炎がメイン武器だと言える弟妹達はやりにくいだろうけど、これも修行の内だ。


 逆に闇の中だからこそ、活き活きとしている者もいる。


「ふふ……闇を(いだ)いて消えろ!」


 アカネが「影属性魔法」を使って、魔物に攻撃をしている。

 私が教えたものだけど、結果として中二病が進行しているような……。

 でも、暗闇の中だと視認性が悪くて、なかなか強い属性だ。


 それと吸血鬼であるダリーもこの属性は得意だし、闇夜の中でこそ真価を発揮する。


「問題は無さそうですね」


 とにかくそんな感じで、特に危なげも無く夜は()けていった。

 

 そして深夜、廃村の中を移動する気配を感じて、私は目を覚ます。

 不寝番の人員がいるはずだけど、気付いている者はいないようだ。


 気配は村はずれの……私が作った地蔵のところか。

 そこへ行ってみると、(たたず)んでいる人影があった。


 ルヴェリク……いや、この気配は最初に出会った()か。


「何か……話したくなりましたか?」


 そんな私の呼びかけに振り向いた少年の人格からは、以前ほどの敵意は感じなかった。

 この場所にいるのも、私と話したかったからだとみた。


「自分の関わったことの結果を見せつけられて、考えが変わりましたか?」


「……」


 無言でこちらを見つめる彼は、自嘲気味に笑った。


「ふ……俺はルヴェリクを守る為に存在している。

 現状、どちらに転んでもあいつにとって損は無い。

 このままお前の保護下に置かれるのなら、それはそれでいいからな」


「ふうん……?

 それならば、少しは協力的になって、組織の情報を提供してくれませんかね?」


「それはどうかな……?

 今はまだ、どちらが勝つのか分からない」


 勝った方に付くってことかい。

 調子のいい奴。

 ただ、私に接触してきたってことは、こちらが優勢だとは感じているのだろう。


「では、身の上話でもしてくださいよ。

 そもそも何故、組織と関係を持つように?」


「あれは元々、家が関わっていたことだ。

 俺はそれを手伝っただけ……」


「おや?

 それが事実なら、いよいよご実家はお取り潰しになりますが、それでも良いのですか?」


「あいつらもルヴェリクの敵だ。

 どうなったとしても、俺の知ったことではないさ。

 俺が手伝っていたのも、そうすることで家での発言権を強めるのと、奴らの弱味を握るのが目的だったからな……」


 そう語る彼は、実家に対する嫌悪感をあらわにしていた。

 これはかなり酷い目に遭わされていた……ということなのだろうけれど……。

 だから彼という人格が、生まれたのか。


「なるほど……。

 あなたは家族による虐待から、ルヴェリクを守る為の存在なのですね?」


「……っ!」


 そんな私の指摘を受けて、彼は押し黙った。

 年末年始で忙しい時は、更新できないかも……。

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