4 キツネ対怪獣
『無効化!?』
オオトカゲに対しては、炎の攻撃は効果が薄いようだ。
「狐火」を何発も撃ち込んでも、オオトカゲは倒れない。
その全身を覆う鱗の防御力が、とんでもなく高いのか?
いや──、
『うわっ!?』
オオトカゲが口から炎を吐いた。
私には火属性が効かないけど、炎を吐く奴にも効かないのは道理。
──って、口から炎を吐くって、オオトカゲではなく竜やないかーい!?
いくら異世界だからって、そんな簡単に竜と遭遇するものなの!?
竜って最強クラスの魔物で、ラストダンジョンとかにいる奴だよね?
そんなのにいきなり遭遇するとか、ヤバいな……異世界。
でも、先程のアルマジロとの戦いを見る限り、動きはそんなに速くない。
それに炎は私達には効かないし、まあ負ける要素は無いだろう。
ただ、こちらからの攻撃が通らないのなら、勝つこともできない。
う~ん、「狐火」という最大の攻撃が通用しないのは痛いけれど、他の属性攻撃が使えない訳でも無い。
やるだけやってみよう。
よし、まずは水を圧縮して撃ち出す攻撃──ウォーターカッターだ。
「ギャアァァァァァァ──オォォン!!」
よし、効いた!!
竜は悲鳴を上げて苦しむ。
でも、一撃では倒せないようなので、何発も、何発でも撃ち込むよ!
「ギエェェェアアァァ──ッ!!」
あっ、逃げた。
予め作っておいた炎の包囲網は──やっぱり効果は無いか。
『シス、石で壁を作れる!?』
私は包囲網の外で待機していたシスに、呼びかける。
そちらの方が竜の進行方向に近い。
『や、やってみる!!』
シスは逃げる竜の前に壁を生み出したけど、それは縦横5m程度の板で、竜の周囲を取り囲むほどの物ではなかった。
私達の種族は火属性への適性はあるけれど、それ以外の属性はそんなに得意じゃないみたいだしねぇ……。
成長促進系のスキルを持っているらしい私ならば、苦手な属性でも鍛えればそれなりに上達するみたいだけど、他の同族が同じことをしようとしたら、かなり地道なレベルアップが必要のようだ。
でも、シスの拙い地属性魔法でも、竜の足止め程度のことはできた。
それだけでも十分──。
『どっせい!!』
私は空中に巨大な氷柱を生み出して、竜の背中──それも先程のウォーターカッターで傷ついた箇所を狙って落とす。
これならば、硬い鱗に弾かれることもなく、氷柱は刺さることだろう。
「ガッ、ガアアアァァァァ!?」
よし、狙い通り刺さった。
竜は氷柱によって、地面に縫い止められた状態だ。
これで逃げることもできないだろうし、もう何発か撃ち込めばトドメを刺せるかな?
『シスも練習の為に、炎以外の攻撃をしてみてねー』
『はーい!』
そんな感じで、竜は我らが姉妹によってタコ殴りにされ、息絶えたのだった。
だが──、
『あの竜が、最後の1匹だとは思えない……』
『そりゃ、そうでしょ?』
……まあ、何処かに親とか、同族はいるだろうしね。
しかしこのネタが通じない感じ、本当に寂しい……。
ともかく、ゴブリン達からの依頼は達成した。
竜を倒したことで、経験値も一気に入ったらしく、尻尾が5本から7本まで増える。
シスは2本から4本だね。
これだけでも、この戦いには意味があったと言える。
さて、倒した2匹は空間収納に仕舞い込んで持ち帰り、ゴブリン達に見せてやろう。
そうすればきっと安心するはずだ。
その後私達は、ゴブリン達と暫く生活を共にすることにした。
早く人間を見つけて百合百合したいところではあるのだが、1度面倒を見た者達と無責任にお別れするのも心苦しいしね。
私達と別れた後に、ゴブリン達が全滅したら寝覚めが悪い。
そんな訳で私は、ゴブリン達の生活基盤が安定するまで、色々と指導してあげることにした。
で、適当な場所に村を作ることになったのだが、前世の知識を活用して丈夫な家の建て方や、便利な道具の使い方を教える。
私の肉球ハンドは物作りには向いていないので諦めていたが、ゴブリン達は手先が器用なので、教えればなんとか再現することができた。
まあ、まだまだゴブリン達と意思の疎通が完全にできている訳ではないので、なかなかスムーズにことは進まなかったけれど、最近では「念話」が使える者も増えてきたので、どうにかなりそうだ。
彼らも私達を神のように崇めて協力的だし、順調だと言える。
余裕ができたら、文字も教えてみよう。
ああ……ついに文化的な生活が目の前に……!!
そしてある日、意思疎通がかなりできるようになったゴブリンのボスに、とある質問を投げかける。
『この辺に人間が住んでいるところはある?』
『人間……は、よく知らない』
と、期待外れの答えが返ってきた。
どうやら人間自体を知らないようなので、もうちょっと詳しく説明してみる。
すると彼は──、
『人間なのかは分からないが、東の山の洞窟に、モジャモジャしたのは住んでいる』
と、興味深い話を聞かせてくれた。
それって……ドワーフのことかな?
彼らは髭面だから、モジャモジャと表現されてもおかしくない。
しかしドワーフかぁ……。
ドワーフって作品によっては女性でも髭が生えていて、男女の区別が付きにくいんだよなぁ……。
それだと私が求める百合は期待できない。
……でも、ドワーフなら人間の町と交易している可能性もあるから、情報を得る為に接触してみようかな?
空間収納の中にある竜とかの素材で取り引きすることも可能だろうし、取りあえず行ってみるか!
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