表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

170/216

3 皇帝への道

 我らが長女のアーネが、帝国の皇帝になっていた。

 皇帝といえば、人間の国の王様ですよ?

 なんでキツネが、そんな立場に?


 いや、今の姉さんは、キツネ耳と9本の尻尾を生やした美女の姿なので、キツネには見えないが……。

 それでも人間ではなく、獣人や魔族だと人々からは認識されるはずだ。

 国民は……納得しているのだろうか……?

 

 ただ、着ている服も皇帝らしく高価そうなものだし、頭上にだって小さいけど王冠も載っている。

 それを見ると、姉さんの見た目だけは、確かに皇帝なんだよね……。


『ネネ姉さんが、『いつの間にかアーネ姉さんがいなくなった』……って、心配していましたよ。

 今までどこで何をしていたんですか?』


「あ~、ネネちゃんには、もう会っているんだっけ?

 あの子、結構せっかちだから、落ち着きがなくってねぇ……。

 私はゆっくり旅をしたかったのに……。

 だから置いてきちゃった」


 おい、なにその「てへ、ペロ」みたいな軽いノリ。

 これはあまり悪いとは、思っていないようだね……。

 アーネ姉さんは、気分屋なところがあるからなぁ……。

 おっとりしているから、あまり人を振り回す我が儘は言わない方だけど、それでも気まぐれな性格をしているから、その言動についていけないところがあるんだよなぁ……。

 果たして皇帝なんて大変な仕事を、本当に上手くできているのか……?と、心配になる。


「つもる話もあるでしょうから、お食事をしながらどうでしゅか?」


「あ、そうね。

 そうしましょう」


『あ~……じゃあ、私も人型になって着替えますね』


 最初に帝国側から面会を申し込まれた時、「赤いキツネ」と名指しされたので私はキツネの姿をとっていたけど、どうやら帝国側も私の正体を知っていたみたいだし、人型を隠す理由はもう無いや……。


 というかリーザも私が皇帝の妹だと知った上で、黙っていたな……。

 この私を(たばか)るとは……なかなかやりおる……。


 その後、宴席が(もう)けられ、私は食事をしながら姉さんから話を聞くことになった訳だが……。


「美味しい~」


「そう……ですね」


 アーネ姉さん、ネネ姉さん並みに食べるな……。

 これで太っていないのだから、我が姉ながらよく分からない存在だ……。

 

「で、姉さんはどのような経緯で、皇帝をやることに……?」


「あ~……それねぇ……。

 リーザちゃんの所為なのよぉ」


「その言い方は語弊があるでしゅよ!?」


 ふむ……やっぱりリーザの能力絡みなのか。

 ちなみに彼女も、一緒に食事をしている。

 普通は皇族とその配下が、同じテーブルを囲むことは無いのだろうけど、姉さんは身分とかは気にしないだろうね。


「でもリーザちゃんの言うことを聞いていたら、こうなったのは本当よぉ」


 確かにお告げの通り行動して、常に正解を引き当てていれば、社会的な成功を収めることは不可能ではないだろう。

 でも、さすがに皇帝は無理じゃない?


 私が不可解そうな顔をしていると、姉さんは核心に触れる発言をした。


「リーザちゃんが、『皇帝は魔族に乗っ取られている』って言い当てて、その魔族を倒したらこうなったのよぉ」


「……端折(はしょ)りすぎでは?」


 でも、大体把握した。

 この帝国にいたはずの最後の四天王──。

 そいつの妹だというリビーは、「兄と連絡が取れなくなった」と言っていたが、まさか姉さんが倒していたとはね……。


 そして姉さんはその四天王から、この帝国を救ったんだ。

 だから皇帝になった……というよりは、その座を押しつけられた。

 他に魔族に対抗できるほどの能力を持つ者が、この国にはいなかったから……。

 1度魔族によって皇帝を乗っ取られた帝国では、2度目の侵略には姉さんとリーザ抜きでは勝ち目が無いだろうしなぁ……。


 それにしても姉さんは、私よりもチートな異世界生活っぽいことしてない?

 これは外伝の主役になるタイプだな……。


「だけど皇帝って、結構大変なお仕事なのよぅ~」


「でしょうね」


「だからアイちゃんが、私の代わりにやってくれない?」


「……は?」


 何を言い出すんだ、この人?

 暫く見ない間に、厄介さが増してない?


「私達ってそっくりだから、きっと入れ替わってもバレないよ~」


「それはそうでしょうけども、私も忙しいのですが!?

 というか、そもそも麻薬の件で、私を呼び出したのではないのですか!?」


「……?」


「いやいやいや!」

 

 姉さんが首を傾げる。

 最初の口実すら忘れているぅ!?


「あの……しゅ()みません。

 どうか陛下の説得をお願いしましゅ」


「あ、はい」


 ああ、リーザ的には、姉さんの我が儘を止めて欲しくて、私を招いたのか……。

 さて……どうしたものかなぁ……。

 いつも応援ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ