3 怪獣対決
久しぶりのまともな食事を終えて、ゴブリン達は満足そうな顔で眠っていた。
さて、狩るか!……というのは冗談だが、その気になれば簡単に全滅させることもできる。
随分と信用されたものだ。
それじゃあ、その信用に応えるとしよう。
私とシスは、ゴブリン達から依頼された魔物を退治する為に動き出す。
身振り手振りで訴えかけるゴブリン達が指し示めした方向は東だったから、そっちにいけば会えるかな?
『シス、索敵をしっかりね』
『うん、お姉ちゃん』
私達は倒すべき敵を求めて、森の中を走り回った。
動物の姿は、やっぱり殆ど見当たらない。
これじゃあ本当に、食べ物には困るなぁ。
ゴブリン達は雑食性だから、植物を食べてなんとか飢えを凌いでいたって感じなのだろう。
だけどこの辺の動物を食い尽くしているであろう奴は、そうもいかない。
今も獲物を探し回っているんじゃないかな?
たぶんそいつから逃げる為に、あのゴブリン達は群れで移動していたということなのだろうね。
その結果、遠く離れた土地で人間と接触したら不幸なことになりそうだから、なんとか彼らの安住の地を確保してあげないと……。
暫くすると、なにか振動のようなものを感じた。
それから動物の鳴き声のようなものも……。
目的の獲物はあっちか。
『シス、気配を消して。
そーっと近づくよ』
『うん!』
私達は音がする方へと向かう。
森を抜けて岩場に出ると、目的の存在が見えてきた。
大きいから遠くからでも分かる。
『これ以上近づく必要も無いから、ここから様子をみよう』
『あれと戦うの?』
シスが問うけど、どうなんだろうな……?
……だって、なんか話と違うんだもの。
そこには、争う2匹の巨獣がいたからだ。
1匹は、頭が大きなコモドドラゴン──つまりオオトカゲって感じ。
文句なく凶暴な肉食獣……というか、肉食恐竜って印象だ。
そしてもう1匹は、アルマジロっぽいけど、甲羅にはトゲトゲが生えているし、口には鋭い牙が並んでいる。
アルマジロって、肉食だったっけ……?
そして2匹とも10m前後はある。
まさに怪獣映画の1シーンって感じだ。
間に大阪城を挟んだら完璧だった。
『これからどうなるの、お姉ちゃん?』
『勝った方が、我々の敵になるだけです』
『です?』
私の口調がややおかしいことに、首を傾げるシス。
こうやってネタを仕込んでも、突っ込んでくれる人がいないのが寂しい……。
でも、元オタクとしては、やらなければ気が済まない習性なのだ……。
ともかくあの2匹が相討ちしてくれたら、楽なんだろうけどなぁ……。
おそらく餌に困ってお互いに食べようとして争っているのだろうから、どちらかが倒れるまでこの戦いは続くだろう。
ならば勝ち残って弱った方を、私達が倒すとしよう。
私達は2匹の戦いを観戦していたけど、巨大な怪物同士の戦いはなかなか迫力があった。
ただ、グリフォンほどの機動力は無いので、一定の距離を保ちながら魔法攻撃を繰り返せば、なんとかなるような気がする。
つまり、そんなに強敵ではない。
やがて2匹の戦いは、オオトカゲがアルマジロの喉笛に噛みつき、そのまま食いちぎるという形で決着がついた。
そして勝利したオオトカゲは、アルマジロの肉を食べようとする。
おっと、それは待ってもらおうか。
肉なら我々も食べたいから、食べられては困る
それに異世界って、魔物の死体が素材として売るのはお約束だよね?
あのアルマジロの甲羅は、いかにもお金になりそうなので、将来的に取っておきたい。
だからグチャグチャに食い荒らされては困る。
『シス、行くよ!
アイツが逃げないようにして!』
『はーい!』
シスはオオトカゲの周囲──直径50mほどを、炎によって円形に包囲する。
これに囲まれてしまうと、普通の生物では逃げ出すこともできないはずだ。
勿論、包囲を狭めれば、中にいる者を蒸し焼きにすることだってできる。
私はその包囲網の中に入っていく。
私達の種族に炎は無効なので、この包囲網はむしろ炎を操る私達にとっては有利に働く。
生命活動が活性化して、戦闘力が上がるのだ。
ある種のゲームで言うところの、「地形効果」ってやつかな。
『ふふ……君には直接の恨みは無いけど、我がレベルアップの糧となってくれ』
まあなんだ。
レベルは高ければ高いほどいい。
この世界での敗北は死に直結することが多いから、負けない要素が増えて困ることは無いからね。
私はオオトカゲに向かって、「狐火」を撃ち込んだ。
オオトカゲは炎に飲み込まれ、いつもならこれで勝負は決しているはずだった。
しかし炎の中から、オオトカゲが飛び出してくる。
『何っ!?』
炎が、効いていないのか!?
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