エピローグ 使 者
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私は帝国よりの使者が留学しているという、学園へと向かった。
一応学園の生徒の顔は全員把握しているので、知らない顔がいたらすぐ分かる。
だけどクラリスの口ぶりだと、そういう私の記憶力とは関係なく分かるほど、目立つ人物であるようだ。
で、学園に到着。
さて、何処にいるのかな?
「お姉様~!」
うおっ、いきなりクオに補足された!?
なにこの子、対私専用レーダーでも持ってるの?
「お帰りなさいませ、お姉様~」
クオは仔ギツネ姿の私を抱き上げ、あちこちを撫で回し始めた。
あっ、そこらめぇ……!
こやつ、また腕を上げたな……!
『ちょっ、待って、クオ!
私、留学生に用があるのですよ!』
「え……また女なんですのぉ~?」
ん……?
その使者って、女の子なの?
『べ、別に女の子だから、会いたいという訳じゃないんですよ。
帝国からの使者が、私に会いたいと言うから……!』
「ええぇ……そうなんですの~?」
クオは疑わしげな視線を向けながら、私を床に下ろした。
「……その方ならば、教室にいると思いますわ」
『それでは、彼女を中庭へ連れてきてください。
人払いもお願いします』
「な……2人きりになって、何をしようと……!?」
『不測の事態が起こった際に、人を巻き込まないようにする為ですが!?』
まったく……クオは私を何だと思っているのかね。
ともかく中庭で暫し待っていると、こちらに近づいてくる人物の気配が感じられた。
そしてその姿が視界に入った瞬間、私は納得した。
なるほど……これならすぐに、帝国の使者だと特定できる。
なにせその姿は、この学園では魔族であるマオちゃんの次に、特徴的なものだったからだ。
それは小柄な少女の姿をしている。
それだけならば何処にでもいるけど、彼女は神秘的な銀髪と長い耳を持っていた。
近年だと金髪・巨乳のイメージが台頭しているけど、その一方で一大流派を築いている、フリー●ンやどエミ●アたんのようなタイプの痩身・銀髪エロフ───もといエルフ!!
あれ? もしかしてこの世界でエルフを見るのは、初めてかな?
そのエルフの少女は、私の姿を認めると、小走りに駆け寄ってくる。
そして──、
「きゃうっ!?」
何も無いところで躓いて転んだ。
うわぁ……どんくさい……。
しかも膝や掌をすりむいてしまったようなので、私は彼女に回復魔法をかけてあげた。
『……大丈夫ですか?』
「あっ、ありがとうございましゅっ!!」
……噛んだ。
ドジっ娘か?
なんでこんな頼りない子が使者に……?
でも、仔ギツネ姿の私が「念話」で話しかけても、そのことについては驚いていないようだから、やはり私のことについては、ある程度把握している……?
『あなたは帝国の使者だそうですが、私に一体何の用ですか?
私自身は、帝国とまったく接点がないのですが……』
「あっ、これは申し遅れました。
私はリーザ・アトロポスと申しましゅ」
また噛んだ……いや、噛んでいない!?
もしかして、その語尾がデフォなの!?
でも使者とか立場のある人間なら、口調は矯正するんじゃ……?
だけど舌足らずで、どうしてもそうなってしまうのかな?
見た目はどう高く見積もっても11歳か12歳だし、幼女に片足を突っ込んでいるよね……。
「え~と、天狐族のアイ様でしゅよね?
あなたを帝国へと、招待したいのでしゅが……」
『え……何故……?』
「女神様のお告げで、困ったらあなたに頼れ……と」
『……女神と交信できるので?』
「はい、精霊とか幽霊とか、肉体のない存在の声が、たまに聞こえてくるでしゅ」
ん……大丈夫か、それ?
ただの危ない人では?
でも、他の同族の可能性があるのに、私の名前を迷い無く言い当ててるしなぁ……。
それにあの女神の関連ということなら、私を知っているというのも納得かな……。
まあ、あの女神は胡散臭いけど、現状では私の異世界生活も上手くいっているし、恩があるともいえる。
その女神の意向なら、従うのも悪くはないのかな?
もしかしたら行き詰まっていたクジュラウスの捜索──その助けになるかもしれないし。
『分かりました。
まずは詳しい話を聞かせてください』
そんな訳で、私は帝国へ行くことに決めたのだった。
次回から帝国編です。