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2 ゴブリンの依頼

『親愛なるゴブリンの諸君。

 我が名はアイ。

 私は今、「念話」のスキルであなた達の脳内に、直接語りかけています』


「アウ?」

 

 私はゴブリン達との会話を(こころ)みた。

 私の言葉は、「念話」で伝えることができる。

 これならば言葉を持たない相手に対しても、漠然とイメージは伝わるはずだ。

 ただ、ゴブリン達は「念話」を使うことができないので、いまいち会話がなりたたない。


 まあ、慣れてくれば使えるようになってくると思うけどね……。

 不思議と「念話」を受信し続けていると、返信の仕方も自然と分かってくるらしいというのは、ママンや姉妹達でも実証済みだ。

 ただし、やはり才能に左右されるところはある。


 おっとりしているが感覚でなんでもこなしてしまう長女のアーネ姉さんは、意外とあっさり「念話」が使えるようになったけど、脳筋気味な次女のネネは、習得にかなり苦戦した。

 シスはそんなに器用では無いけれど、私と会話したい一心で一生懸命訓練したようだ。

 ママンは……知らない内に、いつの間にか習得していたな……。


 しかしゴブリン達は魔法が使えるようなタイプには見えないので、ちょっと時間はかかると思う。

 それでも身振り手振りで、なんとかコミュニケーションを試みる。

 その結果分かったのは、やはり強力な魔物によって、彼らの生存が脅かされているということだ。

 

 まあ、これは元々予想していたからこそ、分かったことだけどさ……。

 生物が殆どいないもんね、この土地って……。

 おそらく何者かによって、乱獲されたのだ。


 で、ゴブリン達は、私達にその脅威を取り除いてもらいたいらしい。

 それ、私達にゴブリンへの害意があったら全滅していたかもしれないのに、よく降参して頼む気になったなぁ……。


 え? 害意が無いのは分かっていた?

 ゴブリンのボスは、そんなことを言っているような気がする。

 まあ、殺気とかを感知する能力は、野生の生物なら持っていても当然か。


 でも、ゴブリン達の頼みを聞いても、「それ私になんかメリットがあるの?」状態なんだよね。

 ただ、シスしか話し相手がいない状態に飽きてきたのも事実なので、ゴブリン達を仲間にするのも有りなのかなぁ?

 

 ……が、彼らを無視して、人間を探しに行くという選択肢だってある。

 でもなぁ……。


「…………」


 やっぱり見捨てられないな。

 大人はまだしも、小さな子供が痩せ細っているのを見たら、さすがに可哀想でならない。

 よーし……。


「ホワァ!?」


 ゴブリン達は、驚きの声を上げた。


 私は「空間収納」を発動させたのだ。

 異世界物だと、異空間にアイテムなどを保存するスキルはお馴染みだよね。

 だから私も、魔法でそれを再現することを何度も試してみた。


 魔法ってイメージすれば、大抵のことは魔力を変換して実現できる。

 勿論、術には難易度があって、高度な物になると膨大な魔力や高い技術力が揃っていなければ実現できない。

 実際、今の私の実力では、イメージ通りの結果にならないこともある。

 でも逆に言えば、条件さえ揃ってさえいれば不可能は無い……と思う。


 そんな訳で、空間収納はなんとか再現できた。

 空間に干渉するって、かなり難しいことのような気がするのだけど、色々な作品で見てきたおかげで、効果のイメージが明確だったのが良かったようだ。


 空間に穴が空き、私はそこから──、 


『非常食ー(ダミ声)』


 (たくわ)えていた大型イノシシの肉を出して、ゴブリン達の前に置く。

 そして、メ・ラ・憎・魔!


 私が呼びだした炎で、肉にはあっという間に火が通った。

 上手に焼けました~。

 実際、美味しそうな臭いがしている。


 それを見たゴブリン達は、「え、これ食べていいの?」というような顔を、私に向けた。


『今後、食べたり身を守ったりする以外の目的で、無闇に他種族を害しないのなら、食べて良し!!』


 そんな私の言葉にコクコクと頷いたゴブリン達は、肉に群がろうとしたが、その前にシスが食いついた。


『こら、シス!

 ゴブリン達が先!』


『え~……?』


 え~じゃありません。


『シスの分は別に用意するから……』


 私は再び肉を空間収納から取り出す。

 それを見て渋々とシスは、肉から離れた。

 ちゃっかりと一塊の肉を、噛みちぎっていったが……。


 それからゴブリン達の食事が始まる。

 涙を流して喜んでいる者もいて、やっぱり食事を提供して良かったよ。 


『おかわりもあるぞ』


 私は次々に、肉を焼いていった。

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