11 そうなの?
まだ体調が戻っていないので、今回も短めです。
新学期が始まってから、1週間以上が経過した。
しかし学園生活は、今のところ問題は無い。
あの勇者の末裔の子も、現時点では直接絡んでこなかった。
精々実技の授業の時に、マオちゃんに張り合っているのか、同系統の魔法や技を見せつけてくる程度だ。
う~ん、実力は自分の方が上だと、アピールしたいだけ?
その程度ならちょっと面倒臭いけど、ただのライバルキャラということで済みそうだが……。
ところがだよ……キツネさんは見た!
別の問題が生じていたのだ。
休み時間の時、私はマオちゃんと校舎裏を散歩していた。
彼女は特定の生徒と仲良くしていないので、休み時間は暇なのだ。
本人はぼっち気質なのか、それでも平然としているけどね。
なお、クオは既に同性から好感を持たれる能力のおかげで、女子のグループを形成しているし、ナユタは意外と男子の人気が高い。
同じ男子のような距離感で、接してくるからだろうか?
だから休み時間中の2人は、案外友人のとの交流があるんだよね。
いいことだけど、マオちゃんだけ友達がいない状況は、ちょっと寂しいなぁ……。
ともかく校舎裏と言えばあれだ。
呼び出しだよね。
それが愛の告白なら良かったのだが……。
そこではタヌキのコロロが、複数の生徒に囲まれていたのだ。
なんだ? イジメの現場か?
「下等な獣人は、この学園に相応しくないな」
「目障りなんだよ」
あ~……これは間違いなさそうだな。
「…………」
『マオちゃん?』
マオちゃんは静かに私を地面に下ろし、そのイジメ現場に向かう。
助けに入るつもりか。
「これこれ子供達……。
タヌキをいじめてはいけないよ」
……マオちゃんがまだ小さい頃、彼女を寝かせつける際に私が語って聞かせた『浦島太郎』のようなセリフだな……。
「な……お前は……!?」
マオちゃんの姿を見て、コロロを取り囲んでいた者達の表情が変わった。
この学園に通っている魔族は、マオちゃんだけだ(正確には私も魔族だが、生徒じゃないし)。
そして彼女は一応、公式では魔王シファの妹という扱いになっている。
そんな大物に対して迂闊な態度をとれば、国際問題になりかねない。
「さ、教室へ帰ろう……」
「え……いいのかポン?」
しかしコロロは、このまま帰ってもいいのかどうか、困惑している。
貴族に呼び出されたのに、その貴族の許可も無く、この場を後にして良いのだろうか……とか思っているのだろうか?
ただの庶民なら、そう考えてもおかしくはない。
けれど──。
「この子は女王とも魔王とも、面識がある。
次やったら、彼女達の耳にも入ると思って……」
「ぐ……!!」
コロロに限って言えば、こういう脅し文句が使える。
しかもコロロは、リチアが我がトウキョウ自治領に作った孤児院の所属なので、私から抗議声明を出すことも可能だぞ。
まあ、現在は王都に作られた分院から通っているようなので、ちょっと繋がりは弱くなっているけどね……。
そんな訳で、貴族の子弟達は何も文句を言えない。
だけど悔しさは顔から滲み出ており、険悪な雰囲気は漂っている。
それ故に、コロロも後で報復されるのではないかと、危惧しているようだ。
その時──、
「なにをしているっ!?」
この場にあのアカネが駆けつけた。
うわ……面倒臭いことになりそう……。
一方的にマオちゃんが、悪いということにされるんでしょ?
ところが──、
「お前達に、多人数で少数の女子を取り囲んで、どういうつもりだ!
大方、獣人だ魔族だと差別しようとしていたのだろう!
それは学園では禁止されている。
恥を知れ!!」
アカネは一方的に、貴族の子弟が悪いと断じた。
あれ? 意外といい娘なのか?
明後日は用事があるので、更新できません。