8 入学式
入学試験が終わって数日後、試験の合否が判明した。
おそらく成績がトップクラスであろうマオちゃんは当然だが、クオもなんとか合格できたようだ。
やはり貴重な回復魔法が、決め手だったんじゃないかな?
そして──、
「うえぇぇぇぇ……?」
ナユタも合格した。
筆記試験は壊滅的でも、実技は好成績だったので当然だね。
だけど本人は、なんだか嫌そう……。
まあ、彼女は勉強が苦手そうだし、そもそもアラフィフで10代の子達に交じって学ぶというのも、気まずいというのは分かるが……。
でも、見た目的には、まるで成長していない……ので、違和感が無い。
だから、安心してほしい。
未だにナユタの見た目は、人間の12歳くらいで通用するからね。
そんな訳で、これから入学準備を始める訳だが、まずは制服を用意しようか。
ちなみに学園指定の制服は、私がデザインした。
理事長もしているクラリスに頼み込んで、ねじ込んだよ!
そして採用された制服は、日本のJK風で可愛いものだった。
まあ、ちょっとスカートが短いけど、そんなに着崩すような感じではないので、この世界でも通用するだろう。
そんな訳で制服も指定店で買うことも可能ではあるが、この3人に関しては私自らが用意する。
「制服の素材は、私の尻尾の毛がいいという人、います?
物理・魔法に対する防御力に、優れていますよ」
「お姉様の!?
是非!!」
「余もそれでいい……」
「オレはいいや……」
ナユタったら照れちゃって……。
じゃあ私素材のが2着、普通の素材のが1着ね。
魔法で縫製するから、完成はあっという間だ。
で、試着した彼女達の反応はというと……。
「はあぁ~……。
お姉様の匂いに包まれて、幸せですわぁ~」
クオが蕩けそうな顔をしているけど、洗ったし浄化魔法もかけたよ?
「なんだか安心する……」
うむ、何かしらの加護はあるかもしれんね。
まあ、マオちゃんも、そういう意味で言っているのではないだろうけれど。
信頼する人物に関わる物を、お守りとして身につけていたいという心理なのだろう。
そしてナユタはというと……。
「こんなヒラヒラしたの、オレ嫌なんだけど……」
「いやいや、可愛いですよ」
「それが嫌なんだけど!?」
ナユタは殆ど着用したことがないスカートを恥ずかしがっているけど、その恥じらいの表情はいいね!
少年っぽい子がチラリと見せる女の子らしさは、なかなかの萌えポイントだよ。
ただ、孫がいてもおかしくない年齢に、JKスタイルは精神的にはキツいというのも理解できる。。
だけど外見的には、むしろJSスタイルでもいいかもしれない。
園児服ですらいける可能性はある。
あと、体操服はブルマ……にしようかと思ったけど、この子達のブルマ姿を、男子生徒に見せたくはないな……。
そんな訳で、普通にジャージをデザインした。
で、入学の準備を進めて1ヶ月ほど──。
ついに迎えた入学式の日である。
私はマオちゃんに抱きかかえられて、入学式が行われる講堂の中にいた。
やはりというか、あの勇者の末裔である少女・アカネも合格していたようで、背後から彼女の視線を感じる。
相変わらずマオちゃんを敵視しているようなので、私がいざという時に対応できるように、常にマオちゃんと行動を共にするつもりだ。
学園の許可も取ってあるから、もう屋外で繋がれるようなこともないぞ。
ただ、クオは私を独り占めできないことに、ちょっと不満そうだが……。
……しかしこんなことなら、カメラを開発しておけば良かったなぁ……。
3人の晴れ舞台を撮影して、写真に残しておくことができないなんて……。
こうなったら卒業式の日までには、カメラを実用化させておくぞ!
そして入学式が始まったけれど、内容については来賓の挨拶で殆ど終わる。
ただ、その来賓が大物だ。
なにせこの国の女王であるクラリスなのだから。
彼女はこの王立ローラント学園の理事長でもあるが、理事長は名誉職に過ぎず、実務は他の理事が担当している。
それでも理事長なら、式典の挨拶くらいはしなければならない。
「学園は君達の入学を歓迎するわ!」
クラリスの挨拶は要約すると、この国は復興途中なので、人材が足りていない。
だからこの学園は、その人材不足を補う為に作られた物であり、そこに入学する者は貴重なこの国の人材だ──そんな感じである。
それは入学生のエリート意識を刺激して、やる気を出させる内容だと言えるだろう。
そのエリート意識が行きすぎると、差別意識に繋がりかねないけど、だからこそ魔族や平民や獣人も入学していることに意味がある。
種族や身分は関係なく、この学園に入学できる者こそが優秀だということだ。
ちなみにマオちゃんは、魔王国からの留学生という扱いだけど、いずれはこの国出身の魔族が通えるようになればいいと思う。
そう、この国からの魔族の入学者はまだいないし、獣人もタヌキのコロロだけで、現状ではまだ貴族以外の入学生が少ないのが問題点であり、改善点でもある。
学園には定員があり、多すぎる子供の数の中から、才能のある子供を選別することは困難だ。
だから数が少ない貴族の子弟の中から、才能のある者を選別するしかなかった。
そもそも平民には教育を受けるという概念すら無いから、まずはエリート教育云々よりも、平民でも普通の教育を受けられるようにするという制度の整備が必要だが、現状では校舎も無ければ教員もいないので、国内の各地で多くの子供が教育を受けられるようになるのは、まだまだ先の話になるかもしれない。
この学園は、これから作られる教育制度の先駆けであり、実証実験となる。
さて、クラリスの挨拶が終わると、次は魔王として出席しているシファの挨拶である。
……大勢の前で、大丈夫?
「みにゃの者!!」
予想通り、いきなり噛んだよ……。
明後日は更新できないかもしれません。