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1 重なり合う領地

 ここはローラント王国トウキョウ自治領──なのだが、実は魔王国トウキョウ自治領でもある。

 南へ移動してきた魔王城を中心にして、新たに形成された魔王国の領土──その南端にトウキョウ自治領があるんだけど、本来ならここが魔王国との国境になるはずなのだが……。


 ところがである。

 私が新生魔王国の建国メンバーみたいな立場なので、トウキョウ自治領も必然的に魔王国の勢力圏ということになってしまっていた。

 でもこの特殊な事情については、ローラント王国の女王であるクラリスの許可はとってある。

 そもそもここって、表向きは王国の自治領なんだけど、本質的には王国と対等の立場の独立国家なので、クラリスも文句は言えないんだけどね。

 勿論この裏事情は、王国の上層部では情報共有されているから、もしも文句を言う奴がいたら、それは上層部に属さない下っ端なので、無視してもいい。

 しつこいようなら、物理的に潰すだけだし。

 

 ここはむしろ、両国の友好と交易の場として活用しようと思う。


 ちなみにかつてトウキョウ村と呼ばれていた場所は、領都となった現在ではトキオ市と改名した。

 そう、村は市と呼べるほどに人口が増え、発展したのだ。

 このまま発展していけば、いずれは頭にネオがつくかもしれない。


 まあ、魔王城奪還の時から3年は経ったからね。

 ほぼ国という形を失っていた魔王国の復興の為に、必要としていた物資を輸出する窓口になっていたのが我らがトウキョウだ。

 おかげで特需景気(とくじゅ)が訪れた訳ですよ。


 ただ、魔王国は人間の国へ支払える通貨を持たないし、あったとしてもまだまだ貧しい国だ。

 そこで輸入した物資の対価として支払ったのが、魔族が持つ魔法を応用した「技術」だ。

 ダンジョンを構築した技術や、遠く離れた場所へ「念話」を届ける魔道具を製造する技術など、有効活用できるものが沢山ある。


 それを公開することは、魔族にとって人間に対するアドバンテージ(優位性)の1つを失うことになるが、これから共存していくつもりなら、種族間の文明格差は少ない方がいい。

 そもそも魔族の身体能力は人間と比べるとかなり高いので、その上で魔法技術が大幅に上回られると、人間達は魔族を必要以上に恐れてしまうからね。


 ともかく両国間での輸出入が盛んになると、当然人の往来(おうらい)も活発になる。 

 あれから魔族と人間の交流は更に盛んになり、かつて争っていた両種族間の軋轢も、徐々に消えつつあった。

 民間で草の根の付き合いによって仲を深めていくのも重要だけど、やっぱり国のトップ同士が友好の方針を立てると手っ取り早い。


 勿論、逆パターンも有り得るが。

 いくら民間で交流を深めても、国のトップの方でそれを御破算(ごわさん)にするような事態を引き起こすというのは、前世の世界でも経験したことだ。

 結局世界は権力者の意思で動いていくというのが、悲しいけど世の常だと思う。

 だからその権力者が、好き勝手できないようなシステムを作っていくことが、今後の課題ではあるねぇ……。


 でも今はその権力を、両国間の友好の為に有効活用させてもらおう。

 両国で官民挙げての友好的な交流に力を入れる一方で、クジュラウスを指名手配にして、人間だけではなく、魔族にとっても危険な存在だと言うイメージを広めて、共通の敵に仕立て上げている。

 これで奴が何かをやらかしても、魔族が悪いというよりは、奴個人が悪いのだという認識が広まりやすいだろう。

 いや、種族間の軋轢は根深いので、そんなに都合が良くいくとは思えないけど、やらないよりはマシというか……。


 で、現在の私だけど、基本はトキオ市に構えた自宅でグータラしつつ、たまに魔王城やローラント王国の王城、ダンジョンの温泉などへ遊びに行くという生活を送っている。

 仕事は……あんまりしていないかなぁ。

 基本的に他人に任せられる部分は、他人に任せているよ。

 働きたくないでござる!

 絶対に働きたくないでござる!

 

 ……私は人間と魔族の繋ぎ役みたいなものなので、存在するだけで役に立っているから、これでいいんだよ……たぶん。


 で、今日も今日とて、王都に新設した領事館にきている。


「おかえりなさいませ、ご主人様」


「たたいま、ケシィー」

 

新しく雇ったメイドが、私を出迎えてくれた。

 昔、盗賊をしていた獣人達を捕まえて、奴隷契約の術式を施して村に住まわせていたのだけど、その中から希望者を(つの)った結果、応募してきたのが犬型獣人のケシィーだ。

 犬型の獣人の特性なのか、忠誠心が強くて信頼できるメイドさんである。


 それにケシィーは人間の基準から見ても可愛いけれど、同じイヌ科であるキツネの私から見ると、かなりの美人さんであることが分かる。

 そんな彼女から「ご主人様」と呼ばれると、正直興奮します。


「シスはいますか?」


「ええ、只今お呼びします」


 ケシィーが家の奥に入ってくと、すぐにシスが現れた。

 いつもなら私がここに来た時点で気配を察知して出てくるんだけど、そうではないということは、昼寝でもしていたのだろう。

 

「おかえり、お姉ちゃん」


「はい、ただいま」


 領事館は私の家扱いなので、「ただいま」でも間違いではない。

 そして現在のシスは、人間の言葉を喋っている。


 つまり我らが天狐族の完全体──人型へとシスもこの3年間で至ったのだ。

 明後日は用事があるので更新できないかも……。

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