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22 黒い鎧

 なんだか全身が真っ黒で、凄く怪しい鎧がいる。

 その中には今回の事件の首謀者と思われるクジュラウスが入っているのか、それとも入っていないのか、その辺はちょっと分からない。

 隠蔽しているのか、鎧から生物的な気配をまったく感じ無いんだよねぇ……。


 それによく見たら巨竜ガルガと戦っている鎧だけではなく、シファと戦っている鎧もいる。

 他にも更に一体。

 あのどれかがクジュラウスなのか、あるいはすべて空っぽなのか……。

 例の古代兵器のように、ロボである可能性もある。


 ただ、見たところあの鎧は、魔法無効化能力を持ってはいるようだが、特別強いという感じでもないなぁ。

 となるとやっぱりあの中には、クジュラウスは入っていないのかな?

 少なくとも四天王クラスの実力があるようには、全然見えないし。


 実際、あの鎧の一体だけでも四天王クラスの強さがあったとしたら、シファ達はもっと劣勢になっていただろう。

 現状だとまだ、お互いの戦力は拮抗している。

 まあ、魔王の支援効果があってこそではあるが。

 

 逆に言えば、ここに何者かが参戦すれば、一気にバランスは崩れる。

 でも、アリ達は私が潰してきたし、上層階からもネネ姉さんが侵入した魔物を駆逐しているので、これ以上クジュラウス側に増援は無いはずだ。


 つまりここで私が参戦すれば、形勢は劇的に我々に傾く。

 ……それじゃあ、そろそろ私も参戦するとしますか。

 そう思ったところで、異変が生じる


『!?』


 魔物達を炎が包み込んだ。

 でも、私はまだ炎を使っていない。

 つまりそれは、──、


「はっはー!

 私、参上じゃん!」


 ネネ姉さんが追いついたか!

 この空間の入り口から、姉さんが飛び込んできた。

 全裸で!


 姉さんは沢山の魔物を食べることで栄養を摂取したのか、幼女から大人の姿へと成長していた。

 しかし今まで着ていた服は子供服だったから、着れなくなってしまったんだな……。

 私の服を貸しておけば良かった。


 いや実際、私に似た姿なのに全裸で歩き回られるのは、ちょっと恥ずかしいんだよね……。

 自分が全裸なのは、まあ慣れているからそんなに気にならないけど、客観的に自分を見るような形になるのは、やっぱりなんか嫌かも……。

 せめてキツネの姿になってくれないかなぁ……。


 ……ん?

 三体の鎧達が戦闘を中断して、姉さんの方に殺到していく。

 あ、そうか!

 あの鎧達は、姉さんを私だと誤認しているのかもしれない。

 姉さんって私とは六つ子で顔は同じだし、私以外では唯一、天狐族の完全体に至っているから、私だと勘違いしてもおかしくはない。


 そして私はクジュラウスの計画を潰しているから、最も敵視されているはずだ。

 それならば私に対して、何かしらの罠を用意しているのも当然。

 あの鎧は、その為に用意されたものなのかもしれない。


 事実、鎧達は姉さんをを中心に、三角形を(えが)くように位置取りをした。

 なんだ?

 デルタ●ンドか?

 それともデルタ●タックか?


「くあっ!?」


 その時、姉さんの動きが止まる。

 鎧三体がかりで「結界」を形成して、姉さんの動きを封じたようだ。

 おそらく姉さんならば、時間をかければ自力で脱出することはできるだろうけれど、その前に鎧達が致命的な攻撃を仕掛けてくる可能性がある。


 私もこのまま傍観している訳にはいかない。

 シファやナユタは姉さんの強さを知っているから、助けが必要だとは考えていなかったようで、救出には出遅れている。

 そして魔族達は、私達をまだ完全に味方だと認識してはいないだろうから、そもそも助けるという発想が無い。


 ならばここは、私が動くしかないだろう。


 だが、そうもいかなくなった。

 ──は!?

 なにこれ!?


 突然、下から気配が近づいてくる。

 え!? この気配は女王アリの!?

 女王アリの死骸は、私の「空間収納」の中に入っているのに!?


 そんな風に混乱している間に、床を突き破って何かが飛び出した。


 びゃああん!? 

 思わず変な声が出そうになった。

 床から飛び出したそれは、地下でも戦ったアリ人間に似ている。

 でも、気配は女王アリのそれだ。


 まさかあの巨体から、生命維持に必要な部分を凝縮して小さな身体(からだ)を形成し、脱皮して逃げていたのか?

 いや……もしかしたら、最初から予備の身体を用意していて、本体が活動停止したら起動するようになっていた?

 そうだな……女王アリを倒した場所から「転移」も使わずに、ここまで追ってくるのは難しいだろうから、その可能性の方が高そうだ。


 どのみち、今は女王アリの相手をしている余裕は無い。

 あの黒い鎧の内の一体──その胸部が観音開きに開け放たれた。

 そこからなにやらライフルの砲身のような、細長い物体がせり出してくる。

 そしてその砲口を姉さんに向けた。


 あれで姉さんを、どうにかするつもりか!?

 今すぐ助けに行かなければいけないのに、女王アリが私に跳びかかってくる。

 気配を隠しているのになんで!?


 あ、女王アリが分泌したフェロモンが、私にまとわりついている──!?


 その匂いを辿って、追いかけてきたのか!?

 途中で「転移」を挟んでいるのに、それでも感知して追ってくるなんて、どんな臭覚だよ!!

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