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20 女王墜つ

 女王アリの脚を、私の尻尾で斬り落とすことに成功した。

 ただし普通に尻尾を叩きつけたくらいでは、女王アリの外骨格が強靱すぎて無理だったが……。

 だけど尻尾の毛を針金のように硬化させて逆立たせ、高速で超振動させて削り取ることで、それを可能としたのだ。

 

 チェンソー……いや、高周波ブレードとかいうやつのイメージだね。

 しかし私自身も振動しているので──、


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 扇風機に向かって喋りかける時のように、声が震えるなぁ。

 ワレワレハウチュウジンダ──なんて。


 ただ、狙ったのが一番脆いと思われる間接の継ぎ目だったから効いたけど、やはり外骨格自体は破壊することはできなかった。

 ダイヤモンドのように硬いのに、ゴムのような柔軟性も多少有るからタチが悪い。

 それでも脚を破壊したので、女王アリの動きは大幅に鈍らせることができた。


『ギッ、キュイィィ』


 怒りなのか、それとも困惑なのか、なにかしらの念波を、女王アリは発している。

 虫だから感情が無いのかと思っていたけど、それは思い違いだったようだ。


 女王アリにとっては、さぞかし不可解だろうねぇ……。

 彼女から見た私は、それこそ人間から見たアリのようなものだ。

 あまりにも矮小で、意識していなければいつの間にか踏み潰していても分からないくらい、小さな存在──。


 そんな私に追い詰められているという現実に、女王アリは不条理を感じているのかもしれない。

 それではゆっくりと女王アリの巨体を、我が「狐火」にて強火で炙ることにしようか。


『ギュイィィィィ!!』


 数千もの「狐火」から生じた激しい炎に、女王アリは包まれる。

 この炎でその外骨格を燃やすことは難しいけど、熱が伝導して内部を焼くことは可能だろう。

 それに周囲の酸素を燃やし尽くして、窒息死させることも──。


 そんな死の炎に包まれる女王アリ。

 勿論炎の外に逃げだそうとはしているけど、させねーよ?

 私の操る炎は、女王アリの巨体に貼り付くようにまとわりついているから、決して逃げることはできない。


「ちょっと良い匂いがしてきた……」

 

 この女王アリ、微妙にエビに似ているから、美味しく焼き上がりそうだ。

 キツネ時代に色々と食べているので、最早虫でも抵抗は無いよ。

 美味しく食べられるのなら、美味しくいただきます。

 まあ、私だけじゃ食べきれないから、大半はネネ姉さんにあげよう。


「おや?」


 女王アリの背部から、巨大な(はね)が飛び出した。

 いや、中から巨体も。

 脱皮だとっ!?


 それで身体(からだ)にまとわりついた炎を脱ぎ捨て、飛んで逃げる気か!?

 させるか──


「わぷっ!?」


 高速で羽ばたく翅から生み出された風圧が、女王アリを再び飲み込もうとした炎を吹き散らす。

 そして巨体が舞い上がった。

 マジであんな巨大な生物が、空を浮かぶの!?

 

 重さはどうなっているんだ……?

 普通なら、絶対に浮かない重量だろうに……。

 あっ、風属性魔法も併用しているのか。

 本当に虫のクセに器用な……。


 だけど、逃がす訳ないでしょ!

 でも、ちょっと待つ。

 ……う~ん、これくらいでいいかな?


「ホーミングレーザーっ!!」

 

 私は女王アリを撃墜する為に、「熱線」を両手から撃ち出した。

 その「熱線」は木の枝のように無数に分岐し、そのすべてが女王アリを追尾して命中する。


『ギイィィィィ!?』


 これは効いているな。

 脱皮直後だから、自慢の外骨格もまだ軟らかい。

 なによりも薄く半透明の翅は、元々「熱線」に耐えるだけの強度は無いようだ。

 いや、あれだけの巨体を浮かばせるくらいだから、見た目よりも強靱なのは確かなのだろうけれど、それでも「熱線」の直撃を受けた部分は穴が()いている。


 あれではもう、空を飛ぶことは不可能だろう。

 そして当然、その巨体は地面へ向けて落下し始める。

 

 地上1000m以上の高所からの落下──。

 その衝撃に、果たしてどれだけ耐えられるかな?

 その為に、ある程度高く飛ぶまで私は待っていたのだ。


 更に私は、地属性魔法で女王アリの落下予測地点を金属でコーティングし、その上に巨大な刺を何本も形成する。

 さあ、鉄板に叩きつけられるか、それとも串刺しにされるか──どちらが大きなダメージになるかな?


 直後、凄まじい衝撃が周囲を飲み込んだ。

 地面は砕け、空中へと跳ね上がる。

 ウル●ラマンが着地した時によく見かける演出──まさにあんな感じ。


『ギッ……ギギ……』


 おっと……さすがというか、女王アリは即死していない。

 だけど刺で身体を貫かれているから、致命傷に近いだろう。

 しかし虫の生命力は、侮れない。

 頭が取れても暫く生き続ける虫も存在するし、確実にトドメを刺しておくよ。


『ギッ、ギギギっ!?』


 私が女王アリを貫く刺に魔力を込めると、それは赤く発熱しはじめた。

 外側から炎で焼くよりも、こうやって内側から焼いた方が確実だろう。

 しかも刺で貫かれているから、最早脱皮で逃げることも不可能だ。


 今度こそ、食べ頃までこんがり焼くよ~!

 明後日も間に合わないと思われ……。

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