19 女王決戦
女王アリを見つけた。
でも、予想外に巨大だ。
いくら異世界でも、こんな巨大生物って存在するんだ……と、驚くくらい大きい。
もはや怪獣のレベル。
しかもアリとは言うが、印象はカブトムシに近い。
それくらい分厚い装甲に全身が覆われていて、何処となくトゲトゲしたフォルムだ。
マジでマザーレ●オンっぽいなぁ!?
この世界のマナを大量消費しなきゃ、倒せない感じですか……?
でも、ギャ●スが大発生しちゃうぅ……!!
う~ん……ロ●サガ2をプレイしていたつもりだったのに、いつの間にかガ●ラ2になっていたような状態。
実際私が最初に想定していた女王アリは、羽の生えた美女のイメージだったのに……。
いやまあ、想定から大きく外れて強そうだけど、いくら巨大でもアリはアリだし、普通に倒せるっしょ?
「って、うわっ!!」
いきなり蟻酸を噴射してくるのかよ!!
しかも巨体から吐き出されているから、量も多い。
その上に可燃性のガスを発生させるから、火属性魔法での攻撃はガソリンに火種を投じるようなものだよね……。
水魔法で中和するのも、量が量だけに大変そうだ……。
となると別の属性魔法だが、雷……は引火しそうだから、地属性か風属性がいいかな?
そう思っていると、女王の方が先にアクションを起こした。
周囲の地面や壁から、岩が槍のように鋭く伸びて、私に襲いかかってきたのだ。
アリのクセに魔法も使えるの!?
だが、魔法ならこちらの得意分野。
私ならば、その岩槍の制御を奪うことだってできる。
実際、岩槍は私に届く前に止まり、乾いた泥のように崩れていった。
そして私は、その崩れた物を集めて再利用し、1本の巨大な岩槍を作り出して、女王アリへと撃ち込んだ。
『ギキィィ!!』
う~ん、ちょっと嫌がっているけど、あまり効いている感じはしない。
やはり分厚い装甲の防御力が凄いようで、槍はまったく刺さらなかった。
じゃあ、ダメ元でこれは?
「ホーロ●ニー・スメルチ!」
超低温の冷気を、女王アリに吹きかけてみた。
だけど女王アリの動きは鈍くなったけど、まだ生きている。
やっぱりかぁ……。
虫って案外寒さに強い。
前世でもこの世界でも、雪の上で這いずり回っている虫を見たことがある。
勿論寒さに弱い種類もいるけど、冬眠して越冬する虫は沢山いるから、この女王アリも最悪冬眠するだけで絶命させるのは難しいか?
でも、マイナス40度ほどもある冷気だから、アニサキスでも死んじゃって、お刺身が安全に食べられるようになるほどの威力があるんだけど、それでも動きがちょっと鈍る程度って、冷気への耐性をもっているとしか思えない……。
「うえっ!?」
げっ、こいつ火属性魔法を使おうとしている!?
蟻酸から発生した謎ガスに、引火しかねないぞ!
いや、今は冷気で蟻酸が凍結しているから、ガスは発生していない。
即引火とはならないのならば、女王が発動させた火属性魔法のコントロールを奪って、ガスに引火する前に鎮火させる。
だが、女王アリはそれで動揺せず、すぐさま巨大な脚を振り落としてきた。
先端がカマキリの前足のように鋭い。
魔法攻撃が駄目ならすぐに物理攻撃に切り替えてくるとは、対応がやけに冷静だけど、やっぱり虫には感情が無いのか?
それでいて知能も高い。
いずれにしても、ここでこんな巨大生物に暴れられると、ダンジョンが崩れる恐れがある。
場所を移すか。
『キュオォォォン!?』
お、今回はさすがに動揺した。
まあ、それも無理は無い。
突然地上の──周囲に何も無い草原に「転移」させられたのだから。
ここでなら思いっきり戦っても、何者も巻き込むことは無いだろう。
これで遠慮無く戦える。
だけどそれは、女王アリの方も同様だ。
再び女王が足を振り下ろしてくる。
しかも数本同時に。
この女王アリ、アリなのに脚が6本だけではなく、10本以上あるんだよねぇ。
その1本1本は、塔のように巨大だ。
それを叩きつけられれば、地面だって砕ける。
勿論、私には当たらな──うわっ、破片の岩が飛んできた!!
人間に直撃したら、原形も残らないサイズだわ……。
とにかくその攻撃は私に当たらなければどうということもないのだけど、女王アリの攻撃はまだ続く。
女王アリの頭部に生えていた巨大な角──おそらく地面を掘り進む為に使っていたものが、眩い光を放った。
角からビーム攻撃は、まあ怪獣なら基本だね。
それは私に直撃こそしなかったけど、地面に触れた瞬間に大爆発を引き起こした。
爆発の炎は私に効かないけど、衝撃が凄いなぁ。
何の防御もしていなかったら、結構豪快に吹き飛ばされていたと思う。
そして爆発の中心にいた女王アリだけど──。
「頑丈ですねぇ……」
当然無事。
炎熱は勿論、衝撃にも耐性があるようだ。
私の炎でも、倒すのは手こずるかもしれないなぁ……。
それじゃあ、これならどうだ?
『ギイィィィィィィ!!』
女王アリの悲鳴の念波が上がるとともに、その脚の何本かが地面に落ちて、地面を粉々に砕く。
その脚は、私の尻尾が斬り落としたのだ。
まあ、ちょっと工夫は必要だったけどね……。
明後日には間に合わないと思います。