18 殲滅戦の覚悟を持って臨む
巨大な蟻の巣の中を、私は進む。
卵や幼虫を見つけたから、女王アリも近くにいると思うんだけどなぁ……。
実際、大きな気配に、近づいていっているような気がする。
まあ、まだ大量の巨大アリが残っているから、気配が混じって分かりにくいけど……。
「う~ん……こっちですかね?」
暫く進むと、複数の気配が近づいてくるのが分かった。
またアリの群れだろう。
『ギ……ギギ』
「……って、人型!?」
それはアリ人間と呼ぶべきか──。
何処となく人間の特徴を備えており、しかも2本足で直立したアリが姿を現した。
その大きさはというと、3mほどあった他のアリ達よりも小さく、普通の人間程度だ。
キメ●アントかよ!?
え……マジで人間……あるいは魔族とかかも知れないが、人を餌にしてその遺伝子を取り込んでいるの?
だとしたら、絶対に共存はできない。
一匹残らず根絶しないと……!!
こうなったらこの巣の中に、殺虫ガスでも充満させるか……?
いや、上のダンジョンにも影響がありそうだから駄目だな。
こんなことなら、ネネ姉さんもこっちに連れてくれば良かった。
2人で手分けすれば、効率的に殲滅できたはずなのに……。
まあ、それは女王を倒して、落ち着いてからでもいいか……。
取りあえず目の前の者達は、アリ人間──とでも呼称しよう。
連中は通常の巨大アリよりも小型化しているおかげか、その動きは俊敏だった。
通路の壁を走るだけなら他のアリ達にもできたことだけど、バッタのような跳躍力を駆使して壁や天井から突然跳びかかってくるのがちょっと怖い。
そしてその手の先はかぎ爪状になっており、それによる攻撃は岩をも斬り裂きそうな威力だ。
まあ、動体視力も速度も私の方が上回っているので、私には当たらないけれど。
だが──、
「おっと」
アリ人間が口から何かを吐きかけてきた。
スプレーのように広範囲へ噴霧されると、さすがに私でも回避はできないが、魔法防御でどうとでもなる。
しかしその液体がまき散らされた床は、ドロドロに溶けた。
うおっ、蟻酸!?
ある種のアリは、尾の先から毒液を吹きかけるという攻撃方法をとるという。
まあ、こいつらは尾の先からではなく、口から吐き出しているので、蟻酸とまったく同じ物質なのかは謎だけど……。
床を溶かすほどの威力だし。
これをあちこちにまき散らされると、足の踏み場が無くなっちゃう。
それに変なガスも発生しそうだし……。
「狐火……わっ!」
やっぱり「狐火」を使ったら引火した。
可燃性のガスじゃん!
じゃあ火属性魔法を使ったら、アリ人間達は爆発するかも……。
それで通路が崩れたら困るな……。
別の属性魔法を使うか。
『!?』
跳びかかってきたアリ人間達を、直径3mほど球形の水に閉じ込める。
これなら蟻酸を使われても、水で薄められて無害化されるだろう。
それにいくら彼……いや、アリは殆ど雌だっけ?
彼女らがいくら藻掻いても、水は形を変えるだけで、内側から破ることは難しいと思う。
このままでも、いずれは窒息死するだろうが──。
『ギギィ!?』
重力魔法との併用で、水球に数千m級の深海並みに水圧をかける。
潜水艦だって潰れるような圧力だ。
ひとたまりもないだろうし、事実アリ人間達は潰れた。
ふむ……キメラア●トくらいヤバイ能力持ちだったらどうしようと思ったけど、やはり私の敵ではないな。
でもこいつらは、おそらく女王の守護をしていた近衛兵的な存在だろう。
ならば女王もすぐ近くにいるはずだ。
それじゃあ、女王もさっさと片付けるか。
……で、私は目的地だと思われる場所へと辿り着いた。
先程倒したアリ人間は焼却していない。
可燃性のガスを発生させる蟻酸が厄介だったというのもあるが、炎で一気に焼却しなければならないほど、その数は多くなかったというのもある。
なのでアリ達らが振りまいたフェロモンなのかはよく分からないが、とにかく匂いが残っている。
それを辿ることで、ここを見つけ出したのだ。
これでようやく、THE・地球●衛軍なミッションも終わる。
しかしそこは巨大な空洞だった。
豪華客船が丸ごと入りそうな、地下空洞だ。
実際、それは必要な広さだった。
うん、豪華客船みたいにでっかいのがいる。
全高は100m近く。
全長は300mくらいはあるか。
え、これアリ?
女王アリだとしても大きすぎない?
エイ●アン・クイーンを通り越して、マザーレ●オン以上の大怪獣なんだけど!?
下旬は出掛ける用事が多いので、不定期な更新になると思います。