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15 魔王を守れ!

 ヤギ頭の魔族であるヤギさんは、クジュラウスと連絡を取り合っていたらしい。

 つまりスパイのようなものか。


『ん……?

 どうやって魔王城のクジュラウスと、連絡を取り合っていたんです?』


 私ですら距離的な問題で、ここからトウキョウ村まで「念話」を飛ばすのは無理だ。

 そもそもこのダンジョン内から、いくらこの最下層へ「念話」を送っても通じなかったし、明らかに「念話」を遮断する階層が存在していたと思う。


『ああ、通信の魔道具があってな。

 それ同士だと、どんなに距離が離れていても「念話」が通じるのじゃ』


 と、シファが教えてくれた。

 そういうのもあるのか。

 そういえば前に、定期的にカシファーンから魔王城へ連絡があるとか言っていたような……。

 ……って、電話じゃん、その道具!


『それって、最初からシファがその道具を持ち出していれば、もっと早くここと連絡が取れたのでは……?』


『ぐ……!?』


 逃げ出すだけで精一杯だったのかもしれないけど、もうちょっと計画的に行動をしてもらいたいものだ。


『で、クジュラウスは、何を狙っているのですか?

 連絡を取りあっていたあなたなら、何か分かるでしょう?』


 私はヤギさんに問う。


『そ……それは……。

 魔王様を保護したいと……だけ……』


 ……うん?

 それって確かカシファーン達にも、通達されていたことだよね?

 近々、魔王を救出しにくるとかいう……。

 もしかしてそれは、本音なのか?

 じゃあやっぱり魔王の肉体が、目的なのだろうか……?


『それはいつ頃から?』


 何故(なぜ)今まで放置していたのに、急に魔王を欲するようになった?

 そこに何かヒントがありそうだ。


『……数ヶ月ほど前だった……はずだ』


 あ~……それは私が、あの古代兵器の巨大ロボをぶっ壊した頃ですねぇ。

 クジュラウスは本命の計画が頓挫したから、次善の策に切り替えたんだな。

 となると、やはり目的は魔王だ。

 まあ魔王を使って、何をしていようとしているのかまでは、ちょっと分からないが……。


『シファ、クジュラウスの目的は、やはり魔王のようですね。

 絶対に奴へは渡してはいけません!』


 ただでさえ今の魔王は可愛い幼女になっているのだから、拉致とか事案とか許されざるよ!

 ましてや人体実験とか、絶対にNO(ノゥ)


『も、勿論じゃ。

 母上は誰にも渡さぬぞ』


 と、魔王を抱きしめるシファだが、傍目にはすっかりシファの方が母親に見えるな……。


『魔族のみなさんも、ダンジョンに侵入したクジュラウスの手勢を迎え撃ってください』


『う……うむ。

 しかし本当にクジュラウスが……?

 むしろ貴様から、魔王様を救おうとしているのでは……?』


 カシファーンはまだ私達に対して疑念を持っているようだが、まあよく知りもしない存在よりも、同僚の方を信じたいという気持ちも分かる。

 だけど──、


『それならば、このダンジョン自体を攻撃する意図は、なんなのです?』


『ぬぅ……』


 実際に確認したのは私だけだけど、さきほどのダンジョンを揺るがした振動はカシファーン達も経験している。

 それだけは否定しようもない事実だろう。

 そしてそれは、この最下層の魔族達を危険に曝す行為だったということは、彼女達にも理解できるはずだ。


『……我はこの御仁を信じよう。

 クジュラウスは、昔から信用ならぬ奴だった。

 魔王様を裏切っても、不思議ではないでな……』


『ガルガ殿……』


 ここで巨竜ガルガの助け船も出た。

 カシファーン達も、これで納得してくれるかな?

 

『さて、それではクジュラウスの手勢を、片付けましょうか。

 魔王はここに置いて行った方がいいと思うので、シファも待機ですかね』


『お、おお、そうじゃな』


 あからさまにホッとするなよ……。

 確かに危険は少ないかもしれないけどさぁ……。

 ところが──、


「あー!

 あー!」


『な、なんなのじゃ、母上?』


 魔王がシファをベチベチと叩いている。

 これはシファの消極的な態度を、(いさ)めようとしているのかな?

 現状では喋ることもできないほど記憶が吹っ飛んでいるようだけど、それでも母として何か思うところは残っているのかもしれない。


 ふむ……。

 

『やっぱり魔王も連れていきましょうか』


『ええぇーっ!?

 でも、危険なのではないか!?』


 まあ、普通に考えれば、戦いの場に子供を連れて行くのは論外だが……。


『私の(そば)にいる方が、安全ですし』


『それも……そうじゃな……』


「あー!」

 

 納得するシファ。

 そして何故か嬉しそうな魔王。


 そんな訳で、敵の標的自らが最前線に出るという、おかしな防衛戦が始まろうとしていた。

 明後日は間に合わないかもしれません。

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