14 復活……?
大穴が空いたダンジョンへ、魔物の群れが侵入しようとしていた。
いや、一部は既に侵入している。
これ以上侵入させないように、魔物の群れに炎を吹きかけて燃やしておこう。
「邪●炎殺黒龍波ーっ!!」
東洋の竜のように細長い……とはいっても、太さは10mくらいあるが、その炎が地面を舐めるように這い、魔物達を飲み込んだ。
うん……魔物は殆どは燃え尽きたけど、突破してくる強者もいるな。
だけど今は、既に侵入してしまった連中の動向も気になるし、シファ達に状況を説明しに行こう。
そんな訳で、再び最下層へ「転移」する。
「みなさん、無事ですか──って、姉さんが縮んでるーっ!?」
「あー、おかえりー」
なんだかネネ姉さんが、6歳くらいまで幼くなっているのだが……。
どんだけ頑張って、魔王に魔力を注入したのよ……。
じゃあ……魔王の方は……?
「あ……アイ殿……」
シファの方を見ると、彼女は困惑しきった顔をしていた。
彼女の腕の中には、3歳くらいの幼女が抱かれている。
これが魔王か?
「何故更に縮んで……?」
「分からん……。
ただ、目覚めてはいるのじゃ……」
うん、魔王は目覚めてはいるけど、状況をまったく理解していないような、ぽかんとした表情をしている。
これではまったくの幼児じゃないか……。
『復活は……失敗といったところだな……』
『そんな……魔王様……!』
巨竜ガルガの言葉にカシファーンは、愕然として床に膝を突いている。
四天王として200年以上もかけて、魔王の復活に力を注いできた彼女としては、それが失敗したとなればショックも大きいのだろう。
う~ん……だけどこれは本当に失敗なのか?
そもそも魔王は、勇者に負けた時点でほぼ死んでいたのではないだろうか。
それをなんとか200年以上延命してきたけど、既に完全復活は難しい、手遅れな状態だったってことも有り得る。
あるいは大きなダメージを受けたダンジョンが、回復の為に魔王から魔力を奪ったという可能性もあるけど、それだと魔王が目覚めている理由が分からない。
魔力を失っているのならば、継続的に眠りについているはずだ。
となると、考えられるのは──。
『いや……これは、生命維持をするだけでもギリギリで、いつ命が尽きてもおかしくない状態だったのを、魔力を注入することで生まれ直すような効果が得られるまで持ち直した……ということでは?』
と、私は弁明しておく。
私達の所為で失敗したとか言われては、たまらないからね。
むしろ私達のおかげで、魔王は幼女という形で生きながらえることができたのだ。
でも、これはそんなに根拠の無い、言い訳でもないと思う。
実際魔王は、生まれ変わったかのように幼くなって目覚めている訳だし……。
『そ……そうかもしれんな』
しかし魔王の娘のシファとしては、どう受け止めて良いのか分からないのだろうな……。
そんな困惑する彼女のを顔に、魔王は小さな手を伸ばして、ピタピタと頬を叩いている。
「あうー」
自身の娘に対して、何かしら興味を持っている……?
もしかしたらほんの少しだけ、前世の記憶が残っている可能性もあるのでは?
『あるいは……そのまま成長させていけば、かつての記憶を思い出すかもしれません』
『そうじゃな……』
そんな訳で魔王の子育て篇、始まるよー……じゃなくて!!
『みなさん、大変です!!
このダンジョンは、クジュラウスの手勢に攻撃を受けています!!』
『な、なんだとっ!?
クジュラウスの奴が!?』
私の報告にカシファーンが色めき立つ。
『既にダンジョンの上層部が破壊されて、手勢の魔物が侵入しています。
更なるダンジョンへの攻撃は私が阻止しましたが、あの様子では、最下層まで破壊しようとしていた可能性が高いですね。
つまり我々は勿論、魔王が死んでいても構わなかった……と』
マッドサイエンティストっぽいクジュラウスのことだから、研究に使える魔王の死体さえ手に入ればそれで良かったんじゃないかな?
『そんな馬鹿なっ!!
そんな……!!』
……ん?
ヤギ頭の魔族──ヤギさんが、激しく動揺している。
先程もカシファーンにあることないこと吹き込んでいたようだし、こいつは怪しいな……。
『あなた、何かを知っていますね?』
『な、何のことだ……?』
目を逸らすヤギさん。
うん、何かを隠しているな。
『死にたくなければ、喋りなさい』
『グアッ……!?』
炎が触手のように、ヤギさんの全身を縛り上げる。
触手プレイは美少女相手にしたいところだが、これは逃げられないように拘束の意味もあるから仕方がない。
抵抗すれば全身に火傷が広がり、やがてはすべてが灰となるだろう。
特に下半身は毛皮だから、燃えやすいし。
そんな訳でヤギさんは、すぐに口を割った。
『わ……私は、クジュラウス様に報告していただけだ!
そして、お前が現れた時は、最優先で報告しろ……と命令されていた。
魔王様を害する存在だから……と』
あ~……スパイみたいなことをやっていたんだ。
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