13 貫 通
『なっ、なんなのじゃ、この揺れは……!?』
『敵襲かっ!?』
ダンジョンが激しく揺れ、みんなは動揺の色を顔に浮かべた。
一瞬、地震かと思ったけど、私は生まれてこの方、この世界で地震を経験したことがないような気がする。
日本と違ってこの大陸には、地震を起こす断層はそんなに多くないようだ。
となると、なにが原因なんだ、この揺れは……?
そもそも揺れは一瞬だから、地震とは違う。
どちらかというと衝撃のようなものを感じたから、これは爆発……?
しかしこの階層で起こった爆発ではなさそうだし、かといってこの地中深くへ届くような爆発を誰が起こす?
いや、竜とか、上位の魔物ならばあるいは……だけど。
連中の息攻撃は、一撃で都市を壊滅させることもあるという。
ただ、ゴ●ラじゃあるまいし、地盤を貫通するような攻撃は、相当強大な存在じゃなければ無理だと思う。
というか、地上で起きた爆発の衝撃が、まさかここまで届いたなんてことは無いよね……?
地上の領事館には、ダリーやドワーフ達がいる。
彼らは無事なのか!?
私は魔王への魔力注入を中断した。
地上の様子を、早く見に行かなければ……!
「姉さん、ちょっと魔力の供給をお願い。
やりかたは、見ていたから分かりますよね?
上手くできたら、夕食は食べ放題ですよ」
「マジで!?
やるやる!」
尻尾をブンブンと振って可愛い。
そんなネネ姉さんは、食事量を抑制している所為で幼い姿になっているとは言え、その強さは私に次ぐ。
彼女なら問題無く、魔王に魔力供給ができるはずだ。
「ココアとナユタも、この場は任せます」
『はーい、お姉様』
「任せて、師匠」
ここが直接攻撃をされる可能性は少ないだろうけど、守りは固めておいた方がいいな。
魔族の力も借りることができるのなら、まあ問題は無いと思うけど……。
「では、シファ。
ちょっと外の様子を見てきます。
魔族のことは、あなたが抑えるのですよ」
このどさくさで、変な動きをする者がいるかもしれない。
それに目を光らせるのは、魔族の王女であるシファの役目だろう。
「う、うむ……。
頼むぞ」
よし、じゃあ行くか。
私は地上に──いや、周囲をよく見渡せるようにする為に、少し上空へと「転移」した。
すると──、
「なんじゃ、こりゃーっ!?」
思わず、そんな声が漏れた。
私の眼下には、冒険者達が出入りしていたダンジョンの入り口があったはずだが、それが吹き飛んでいる。
それどころか、直径50mくらいの穴が空き、ダンジョンの中身が見えていた。
うわぁ……20階層以上はぶち抜かれている。
地中貫通爆弾でも落とされたんか!?
……これは、ダンジョンの門番は勿論、内部で攻略中の冒険者達にも犠牲が出ているぞ……。
町の方は……少し距離が離れているから、一部の建物の屋根が吹き飛ばされるとか、その程度で済んでいるようだが……。
もしも町の方へ直接攻撃されていたら、壊滅状態になっていただろう。
これは一体何処からの攻撃だ?
上から爆弾を落とされたのだとしたら……上空?
と、私は空を見上げる。
あ、いた。
はるか上空に円盤みたいのがいる。
ガ●ラス高速空母か!?
なんだか異世界の物体っぽくはないから、これは例の古代兵器の関係かな?
となると、あのクジュラウスって奴の仕業か……。
って、円盤からなんか落ちてきた!?
また、地中貫通爆弾!?
えーいっ、波●防壁っ!!
「っ!!」
私がダンジョンの真上に形成した防壁に何かが接触した瞬間、大爆発が発生する。
この爆発の衝撃波が、町の方へ行かないように逸らして……。
よし、上手くいった。
しかし私が防御していなかったら、ダンジョンの最深部近くまで届いていたかもしれないな……。
目的は魔王の暗殺か、それとも……?
ともかく、次は円盤の始末だ。
あのロボを倒した時のように、全属性の力を融合させて生み出した膨大なエネルギーを、掌の一点に集中して円盤へと撃ち込む。
キツネ式●動カートリッジ弾の威力を見よ!!
私が撃ち出したビームが、円盤の中心を貫いた。
そのまま円盤は、炎と黒煙を吹き出しながら落下し始め、やがて大爆発──したらまずいな。
あのダンジョンを貫いた爆弾に誘爆したら、核爆弾のような威力になるかもしれない。
私は円盤のところまで「転移」し、更に円盤をはるか上空──大気圏外まで「転移」させる。
これでもう落ちてこないだろうけど、念の為に更にビームを何発か撃ち込んで木っ端微塵にしておいた。
ふう……あの巨大ロボみたいに頑丈な装甲だったらもっと手こずっただろうけど、防御力はそれほどでなくて良かった……。
「……ん?」
上空からダンジョンの周囲を見下ろすと、何かが押し寄せてきている。
これは……魔物の群れか?
あっ、飛行能力がある魔物が、ダンジョンの穴に飛び込んだ。
わざわざ侵入するってことは、何かを狙っている……!?
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