エピローグ キツネさん、世界へ
第1章完です。
どうやら私達は、ママン1匹だけで産んだらしい。
マジか、なにその百合特化種族……。
雌だけで増えるとか、ギャ●スかよ……。
でも百合の間に男が挟まる余地が無いとか、素晴らしすぎる……。
いや、お兄ちゃんがいたのだから、普通に雄と雌でも子作りはできるのだろうけれどね……。
で、野生動物としては、私も既に出産できる成獣となっている。
だけど、さすがに生後数年で子持ちになりたいとは思わないな……。
そもそもまだこの世界で百合を堪能していないし、子作りは色々と経験してからだ。
というか、単体で子供を作る方法がよく分からない。
『子供ってどうやって作るの?』
『なんとなくよ』
ママンの答えでは、まったく分からなかった。
……つまり本能か。
それじゃあやはり今は、子供を作るべき時ではないのだろう。
その時がくれば、自然と分かるはずだ。
しかしママンが出産かぁ……。
じゃあ、それが終わるまでは、旅立てないなぁ。
そんなことを考えていたのだが、ママンは──、
『そんな訳だから、あなた達はさっさと巣立ちなさい』
『ええっ!?』
『大きな子供の世話までしていたら、落ち着いて出産できないわ』
私達に出て行けと言う。
確かに野生動物だと、とっくに親から追い出されているはずだけれど、私達は魔物だから事情が少しことなる。
『え……でも、私達にも手伝えることがあるよね?
獲物を狩ったり、外敵から守ったり……。
私達の手を、遠慮無く借りてもいいんだよ?』
それに新しい妹や弟の顔も見たいし。
だけどママンは、
『もう独り立ちできる者が、いつまでも親といるべきではないのよ。
アイのおかげで、私ももう自分の身は自分で守れるから、何処へでも好きなところへ行きなさい』
『ママン……!』
ママンはきっと、私が旅立とうとしていたことを察していたんだな。
だからこんなことを言い出したのか。
私達には、自由に生きて欲しいってことなんだね。
『分かったよ、ママン……!』
そんな訳で我ら4姉妹は、旅立つことになった。
最初に、長女のアーネが旅立つ。
……いや、次女のネネもだ。
『こいつ、ぼんやりしていて心配だから、途中まで一緒に行く』
『え~?』
実際長女は、ぽわぽわとした癒やし系キャラだしな。
そして私とシスは、数日遅れて出発することになった。
それというのも──、
『うう……ママぁ……』
甘えん坊のシスが、半べそでママンに甘えているからだ。
やはり母親との別れが辛いらしい。
この状態が、2日ほど続いているのだ。
『ほら、シス。
そろそろ行くよ。
いい加減にしないと、置いていくからね?』
『それは嫌!!』
シスは私にベッタリなので、私が旅立てば、当然彼女もついてくる。
これでなんとか旅立てるな。
『それじゃあ、行ってくるね、ママン。
でも、本当に独りで大丈夫?』
『いいから、さっさと行きなさい。
あなた達がいると、騒がしくて落ち着かないのよ』
と、ママンはすげない。
んもぉ……ツンデレさんなんだから。
『それじゃあ、またいつか会おうね』
『ママ、バイバーイ』
ママンは無言で、私達を見送る。
そしてまだ私達の姿が見えている内から、背中を向けた。
涙を見せたくないんだな……と思うことにしておこう。
一方のシスは、
『うえっ……うえぇぇぇ』
完全に泣いている。
こんなんで、いつか独り立ちだきるのだろうか?
まあ、独り立ちさせる意義も感じないけど。
この未知の異世界で、姉妹で百合百合しながら生きていくのも悪くない。
でも、できれば人間らしい生活もしたいし、まずは人の姿に変身できるようにならないとね。
その為には、まだまだ私は強くならなければならない。
そして早く人間にも会いたい。
『さ、シス!
いつまでも泣いてないで、行くよ!』
『う、うん、お姉ちゃん!』
私達は、広い世界へと旅立つ。
私達の冒険は、これからだ!
次回から新章ですが、明日は用事があるので更新は休みます。