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10 そういえば君にもあったね

 総合評価が1500ポイントを突破しました。皆様のおかげです。ありがとうございました。

 シファが背後からカシファーンにしがみつき、ベアハッグで締め上げる。

 いいね、私も美少女に抱きしめられたい。


 しかし実際に締め付けられると、そうも言ってられないだろう。


『あっあああ……!!』


 事実、カシファーンは苦悶の表情を浮かべている。

 首とかならともかく、胴体を絞められて苦しいというのは、あまり実感を持てない人も多いかもしれないが、実際には結構ヤバイ。

 

 私も前世の子供時代にふざけて、友達の胴体を両足の太股で締め付けるという技を仕掛けたんだけど、その友達が気絶してしまうという大惨事が発生してしまったことがある。

 あの時は()ってしまったのかと、凄い焦ったよ……。


 なんかね……急に泣き始めたと思ったら、次の瞬間には静かになって……。

 幸い、すぐに意識は回復したけど、あれは本当に怖かった……。

 そして人間は首を絞めなくても、落ちるのだという事実を学んだよ……。

 それ以来、その技は禁じ手になったね……。


 そんな訳でシファの絞め技だが、それなりに効果はあると思う。

 足でやった方が効果的だと思うけど、今のシファは足を怪我しているからなぁ……。

 回復にはまだ時間がかかるだろう。


 だからシファは、半ばカシファーンにぶら下がるようにしがみついている状態だ。

 あれだと力が入れにくいと思うけど、それでもその状態で全力を尽くすしかない。

 まあ最悪の場合は、あの密着した状態で口から「熱線」を放射するという、自爆技のようなものも使えるだろうが、さすがにそれだと良くて引き分けしか狙えないだろうな……。


『ふぬうぅぅぅぅぅ……っ!!』


『くあぁ……やめろぉ、貴様ぁ……っ!!』

 

 カシファーンはどうにかして、シファを振りほどこうとしている。

 いや、それだけじゃないな。

 魔獣2匹にも組み付かれている為、そいつらも振りほどこうとしていた。

 たぶんシファだけなら、とっくに振りほどいて反撃されていただろう。

 

 実際、足を怪我しているシファでは床への踏ん張りがきかないし、カシファーンも両手が自由だから、魔獣が邪魔していなければシファの腕を強引に引き剥がせたはずだ。

 こういう時には、シファの魔物を操る能力は有用だねぇ。


 だがそれでも、シファや魔獣達は深手を負っているし、無傷のカシファーンの方が余裕はある。

 これは逆転されるのも、時間の問題か……?


 いや……ん?

 シファが尻尾を床に突き刺した。

 怪我をした足では力が入らないから、尻尾で支えるつもりか?

 

 そういえばシファにも、トカゲのような尻尾があったね。

 ただ、それを活用しているところは、見たことがないけど……。

 ……その尻尾で、蛇のように締め付けた方がよかったんじゃない?

 私ならそうする。


 だけどシファは私の尻尾を使った戦い方を見るまで、尻尾を戦闘に使うという発想が無かったみたいだからなぁ……。

 前世の人間だった頃の感覚を、未だに引きずっているんだろう。

 私はキツネというまったく別の生き物に転生したおかげで、人間だった頃の感覚は割とすぐに消えたから、尻尾を動かすことは特に違和感無く行える。


 まあ、そんな私の戦い方を見て、ちゃんと学習しているのは偉いけどさ。

 ……おや?

 シファは地面に突き刺した尻尾を、大きく後ろへと反らせた。

 結果、彼女と彼女が抱えたカシファーンの身体(からだ)も、背後へ倒れるれて──いや、落ちる。


『うらぁぁぁぁぁ──っ!!』


『ぐはっ!?』


 こっ、これはー!?

 プロレス技で言うところの、ジャーマン・スープレックスだーっ!!

 ちょっと変則的だが、シファも前世の記憶があるから、プロレス技の知識もあるんだな。


 ただ、魔族であるカシファーンの強固な頭蓋骨は、床に叩きつけられた程度では割れないだろう。

 だが、さすがに衝撃で脳は揺れるだろうから、脳震盪くらいは起こすかもしれない。

 そうなれば一時的に戦闘不能になるから、シファの勝ちだ。


 ……というか、床にカシファーンの頭が、突き刺さっているのだが……。

 あの状態で身体だけ倒れると、人間なら首の骨が折れるのだろうけど、魔族の首の骨はさすがに頑丈なので、折れずに身体を斜めに直立……ではないな、海老反りの状態を維持している。

 でも、あれなら折れて即死した方が楽な気がする……。


『痛い痛い、首が折れる!!

 死ぬーっ!?』

 

 いや、頭が床に突き刺さった時点で、普通は死ぬが……。 


「これで(わらわ)の勝ちじゃなっ!!

 やったぞ、アイ殿ーっ!!」


 シファが私に抱きついて来た。

 うむ、頭を撫でて褒めてあげよう。

 あと、回復魔法もかけてあげる。

 

 するとシファは──、


「やった……やったのじゃ……」


 と、目に涙を浮かべて、嬉しそうに笑った。


「ええ……偉かったですよ」


 私の力を借りずに四天王を倒すことができたのだから、これは偉業だと思う。

 最初はオークの群れを相手に、死にそうになっていた。

 その頃から比べたら、大変な成長を遂げたと思う。

 まだまだ危なっかしいところはあるけど、本当に頑張ったと思うよ。


『首がぁ~っっ!!』

 

 ……取りあえず、先にカシファーンを床から抜いてあげようか。

 技は安易に真似てはいけない……。

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