9 魔王女VS四天王
『おやおや、ゴミを投げつけることには飽きましたかな?』
「くっ……!」
カシファーンは、余裕の表情で煽る。
シファが手裏剣による攻撃をやめ、魔法メインでの攻撃に切り替えた訳だが、それでもこの余裕の態度である。
つまり今のところ、シファの魔法攻撃は効果をあげていない。
元々魔族は身体が頑丈な上に、魔法抵抗力が高いようだ。
となると並の攻撃魔法では、効果が無いということになる。
ここは「念話」で助言するか。
『シファ、周囲のことは私がフォローしますから、全力でいきなさい!』
「う、うむ!」
シファが全力で攻撃魔法を使えば、この空間がすべてが吹き飛びかねない。
当然それは、中にいる存在も無事では済まないことになる。
だけどそれは私が防御魔法を使えば、被害を最小限に抑えることはできるだろう。
シファとカシファーン以外のものを──生物だけではなく、壁・床・天井も魔法の壁でガードする。
それを確認したシファは、魔力を限界まで高め──、
『こう、じゃ!!』
カシファーンに向けて、「熱線」を掌から放った。
これを回避しても、壁や床に直撃すれば大爆発を引き起こすので、その余波だけでもダメージを期待できるだろう。
……が、彼女は回避しない。
むしろ「熱線」へと突っ込んでいく。
『はっ、こんなものっ!!』
カシファーンは「熱線」に魔剣を叩きつける。
すると「熱線」は、あっさりと霧散した。
「んなぁー!?」
驚愕するナ●チ……もといシファ。
私も驚いた。
通常なら何かに接触した時点で、「熱線」のエネルギーは爆発を引き起こす。
それにも関わらず「熱線」が消滅したということは、あの魔剣の効果か。
魔剣自体に、魔法抵抗力が付与されている……?
もっとも私が使う「熱線」の威力なら力負けしない気はするけど、シファでは難しい……だろうなぁ……。
実際、シファは更に「熱線」を何発も放つけど、それは魔剣によって防がれている。
これは万事休す──か?
いや──。
『!?』
シファは自身の足下に、「熱線」を撃ち込んだ。
これならば「熱線」は、カシファーンに無効化されることなく、爆発が生じる。
ただしその生じた爆発で、カシファーンに決定的なダメージを与えることは難しいだろう。
むしろ直下から爆発を受けるシファ自身が、ダメージを受けかねない。
だがそれは、シファ自身も承知してのことであるはずだ。
この爆発を、目隠し代わりにするつもりか。
名付けて「忍法・微塵隠れの術」っ!!
まさに肉を切らせて骨を断つ戦法──……いや、断てるのか?
シファの場合だと、そのまま自爆して終わる可能性も有り得るぞ!?
いずれにしても爆発に紛れて身を隠せるのは、一瞬のことだろう。
手練れの者ならば、すぐに敵の居場所を感知する。
その前にシファが有効打を、カシファーンに与えることができるかどうか……。
『ふふん、こんな子供だましで、我をどうにかできると思うなよっ!!』
シファの気配を察知したのか、カシファーンは魔剣を振り上げる。
しかし爆炎の中から現れたのは──、
『サンダザ!?』
迎え撃とうととしていたカシファーンの手が止まる。
爆炎の中から現れたのは、彼女の従魔であるサルの魔獣だった。
とっくにネネ姉さんによって、制圧されていた奴だ。
まあ、弱っている魔獣なら、シファの能力で操ることは可能だろう。
そして鎧トラの方も、ココアとナユタに制圧されている。
『ガイラガ!?』
予想外の事態に動揺していたカシファーンの肩に、鎧トラが噛みつく。
というか、なんだその『サ●ダ対ガ●ラ』みたいな名前は……。
ともかく今のカシファーンは隙だらけだ。
そこにシファが付け入る隙がある。
『痛っっ!?』
魔剣を握るカシファーンの手の甲に、手裏剣が突き刺さった。
いや、突き刺さる程度で済んでいるのは凄いが。
人間の手なら吹き飛んでいる。
だけどさすがに魔剣は、取り落とした。
これでカシファーンは、無防備だ。
結果、シファは安全に近づくことができるようになった。
そして彼女は背後から忍びより、カシファーンに抱きつく。
『きっ、貴様!?』
『ここまで密着すれば、後は純粋な力の勝負なのじゃ……!!』
『くあっ!?』
クマーっ!!
シファがカシファーンの胴体を締め上げる。
プロレス技で言うところの「ベアハッグ」。
相撲……というよりは、某格ゲーの相撲取りキャラで言えば「鯖折り」だ。
シファは細身の女の子に見えて、やはり魔族。
その身体能力は、馬鹿にできないものがある。
しかも私が鍛えているから、その筋力は同じ魔族のカシファーンにも通用するかもしれない。
ただ、シファも自らが起こした爆発によって、結構なダメージを足に負っている。
彼女の方が先に力尽きる可能性もあるが、これはどうなるっ!?
ブックマーク・☆での評価・いいねをありがとうございました!