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7 長い階段

 ご心配をおかけしました。更新再開です。

『それで……そなた達の代表は、ガルガ殿で良いのかのぅ?』


 そんなシファの問いに、巨竜ガルガは首を横に振る。


『今は……四天王のカシファーンですなぁ……』


 ガルガはそう答えるが、何処となく不満が(にじ)み出ている。

 ……駄目なんか、その菓子パンみたいな名前の奴……。


『カシファーン……。

 クジュラウスは、来ておらぬのか?』


彼奴(あやつ)まだ(・・)……。

 ここにいたら、我もどうなっておったか分かりませんな。

 我は彼奴に、煙たがれておった(ゆえ)……』


 口うるさい老人を、若者が鬱陶しく感じるようなものなのかね?

 ただ、あのクジュラウスって奴は胡散臭かったし、ガルガとしては一言二言、何か言いたくなるのも理解できる。


『そうか……奴はおらぬか。

 それは良かったのじゃ。

 

 しかしカシファーンか……。

 (わらわ)は、会ったことが無いんじゃよなぁ……』


「そうなんですか?」


「前の人間との戦いで戦死した四天王の後任として、その四天王の部下の中でたまたま生き残っていた1番階級が高い者が就任したらしいのじゃ。

 その前までは、王族と直接面会できるほどの地位ではなかった上に、その後も戦いの混乱で魔王城への帰還も叶わず、このダンジョンに引きこもっていたからのぅ……。

 念話での連絡は、たまに来ていたようじゃが……」


 ああ……成り行きで、その地位についてしまった四天王なのか。

 だからガルガとしては、実力的に頼りないという印象になっているのかもしれない。

 実際、戦闘力に関しては、ガルガの方が高い可能性もあるな……。


 ただ──、


「200年以上もここの魔族を導いてきたその苦労は、(ねぎら)ってあげてもいいのではないですか?」


 たとえ戦闘面では頼りなくても、それ以外の価値はあるはずだ。

 というか、まさにシファと似たタイプかもしれないし。


『……そうじゃな。

 ガルガ殿、カシファーンに取り次いではもらえぬか?』


『承知』


 ガルガがそう答えるやいなや、彼の身体(からだ)は小さく縮んでいった。

 そして何歳か分からないほど高齢の、老人へと姿を変えた。

 ふむ……人化もできるのか。


 しかも変化した瞬間には、もう服を着ている。

 服自体が皮膚の変化したものなのか、それとも自動で「空間収納」の中に入っていた物が装着されるようになっているのか……。

 私もいちいち着替えるのが面倒だと感じていたから、今度真似してみよう。


 それはともかく、あの巨体がこの空間へどうやって出入りしていたのか謎だったけど、人型になって出入りしていたのだな。


『こちらへ』


 ガルガは下へと向かう階段へと、我々を導く。

 その階段は今までのものよりも、かなり長いようだった。

 ……というか、長すぎるな、これ!?

 もう何分も下りてるんだけど……。


『まさかこれ、無限に続く罠ではなかろうな……?』


 シファの不安も、もっともだ。


 しかしガルガは──、


『ファッファッファ……。

 ここより先は我らの居住区に近いが故に、敵が1度に入りにくいようにしただけのこと……』


 まあ確かにこんな階段に大人数で入り込めば、将棋倒しになって壊滅……なんてことも有り得るな……。

 ただ、この先に居住区があると分かっているのならば、ここから水魔法で大量の水を生み出して流し込むとか、攻略の仕方は色々とあるけどね。


『ところで、天狐族の少女よ』

 

 その時、ガルガが語りかけてきた。


『私ですか?』


 天狐族はこの場にはネネ姉さんとココアもいるが、ガルガは私に話しかけているようだ。

 1番強いのが誰なのかを、見抜いているってことなのかな?


『うむ、そなたは魔族に対して、思うことは無いのか?

 何故、殿下の味方をする?』


『はて……言わんとしていることが、よく分かりませんね。

 シファを助けているのは成り行きですが、縁ができてしまった者が不幸になるのを見たく無いというのは、私にとっては当たり前の感情ですよ?』


『しかし我らが魔族が天弧族の魔王を裏切り、その一族を虐殺した……。

 それには我も関与しておる……』


 ああ、そういうこと。


『今現在の私の家族に危害を加えるつもりなら容赦はしませんが、見たことも無い先祖のことについては、特別な感情はありません。

 彼女達のことは知りませんから、討たれるだけの理由が何かあったのかもしれないし、あなた自身にもやむを得ない事情があるのかもしれない。

 それを知らずに、振り回されるつもりはありませんよ。

 あ、今更言い訳も聞きたく無いので、話さなくても結構です』


『……そうか』


 ガルガがこんなことを言い出すということは、何かしら後ろ暗いところがあるから、私が報復でも考えているのではないかと、疑心暗鬼になっているのだろう。

 あるいは何かしら後悔があり、私に謝罪したいのかもしれない。

 

 だけどそんなことは、私の知ったことではない。

 先祖の存在があったからこそ今の私達があるのは事実だし、そのこと自体には感謝もするが、私自身の知らないことで私は(わずら)わされたくない。

 その所為で行動が左右されるのは、真っ平ごめんである。

 

 だから昔のことになんか、一切関わらないよ。

 そんなことを気にしていたら、シファとだって敵対しなければならなくなるかもしれないしね。

 内視鏡検査の結果、ポリープが発見されましたが、良性だったので経過観察することで済みました。まあ、また数年後に検査入院する必要はありますが……。

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― 新着の感想 ―
[一言]  なかなかな身体の異常が絶えませんね、お大事にー。
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