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6 巨 竜

 なんとか間に合いました。

 シファが投擲(とうてき)した手裏剣は、ヤギ頭の魔族にすべて命中した。

 本来なら防御魔法で(ふせ)がれていた可能性も高かったのだろうけれど、今のは完全に不意打ちだったねぇ。

 そして命中したからには、その身体(からだ)を貫通する威力がある。


『グアッ……!?』


 ヤギ魔族の巨体がよろめく。

 ……が、倒れるまでには至らなかった。

 むしろ瞬時に傷が再生していく。

 再生能力は魔族には大なり小なりあるようで、最近は私も回復魔法が必要無くなってきた。

 勿論、限界はあるから、消耗し過ぎると働かなくなるが。


 それはさておき、回復する隙を与えるとは、シファもまだまだ甘いなぁ……。

 すぐに追撃しなくちゃ。

 仕方がないから、ここは私が。


「ひれ伏せ!!」

 

『ガッ……!?』


 その瞬間、魔族は私の「重力魔法」によって、地面に叩きつけられた。

 このまま重力を強めていけば、いずれはたこせんべいのように平たくなるか、床に埋まるだろう。

 当然ヤギ魔族は脱出どころか、指1本動かすことができない。


『ぐ……ぐあぁ……!』


『さあ、力の差が分かったのなら、大人しく最深部まで案内しなさい

 魔族は強者に従うのが、好きなのでしょ……?

 それとも四肢を全部燃やされないと分からないほど、理解力が無いのですか?』


 私は小さな「狐火」を数百個、魔族の周囲に(ただよ)わせた。

 その1つ1つの威力はともかく、その膨大な数にヤギ魔族は圧倒されているようだ。

 ヤギ魔族から感じ取れる魔力なら、1度に作り出せる火球は精々20~30個だろう。

 私は10倍以上だから、力の差はよく分かったはずだ。


 ……うん、これならもう抵抗する気力は無いかな?

 まあ、奴隷契約で精神を縛ってもいいんだけど、上下関係さえ分からせれば、シファの魔物を支配する能力もある程度効くのではなかろうか。


『わ……分かった……!』


 結局、ヤギ魔族は数の暴力に屈し、案内役を買って出てくれた。

 ……気持ちは分かるけど、心底恐怖した目で私を見るのはやめてくれないかな?


 あとネネ姉さんとココア、ヤギ魔族のことを食べ物を見るような目で見ないように。


「あのヤギ、ちょっと(かじ)っていい?」

 

「……やめてあげなさい」


 そりゃあ、ちょっとくらい食べても、再生能力で回復するだろうけど、生きたまま食べるのは引くわぁ……。

 

 

 

 で、ヤギ魔族の案内で、あっさりと到達する80階層。

 今までのパターンなら、ここにも守護者(ガーディアン)がいるはずだ。

 というかいた。


「大きな(ドラゴン)さんですねぇ……」


 そこにいたのは、体高が15mはある竜だった。

 全長ではなく、四つ足で立ち上がった時の高さが15mだ。

 頭から尻尾の先までなら、50mくらいはあるんじゃないかな?

 もう何処のラスボスだよ……って感じ。


 そしてそんな巨大な存在が収まっているのだから、この空間も巨大だ。

 ちょっとしたドーム球場の、数倍はありそうだな……。

 って、どうやってこの地下空洞に、こんな巨大な竜を入れたん?

 私達が通ってきた通路以外は、下への階段しか見当たらないが……。

 これは「転移魔法」とか使わなければ、物理的に無理だな。


『そなたはもしや……古竜 ガルガ殿では……?

 (わらわ)じゃ……シファじゃよ。

 200年以上前には、世話になったな』


 あらシファさん、お知り合い?


「もう引退したが、元四天王で魔王軍の重鎮じゃよ」


 ふ~ん、元四天王か。

 もう現四天王を2人も撃破しているから、私にとっては敵じゃないな。


『おお……王女殿下ですか。

 お久しゅうございます……』


 と、ガルガは頭を下げる。

 どうやら彼(?)は、敵対するつもりは無いようだ。


『ガ、ガルガ様!

 クジュラウス様は、裏切り者を()て……と!!』


 その時ヤギ魔族が、ガルガのシファに対する態度に抗議をする。

 こいつ……従順なフリをして、より強い上司に泣きつこうとしていたな?


『黙れヴェルフォ。

 我はあの若造を、信用しておらぬ』


『そ……そんな』


 しかしガルガは、すげない態度だった。

というか、ヴェルフォなんて中二心をくすぐるような格好いい名前だったのか、このヤギ頭。

 お前なんてヤギさんで充分だ。

 

 ともかく、ようやく話が分かる魔族と出会えたようだ。


『ガルガ殿、クジュラウスこそ裏切り者じゃ。

 奴を討つ為に、どうかおぬし達の力を貸してほしい』


『ふむ……話は分かりましたが……。

 我らの力は、本当に必要ですかな?』


『ぬ……?』


 ガルガの言葉に、シファは首を傾げる。

 だけど──、


『そこの天狐族だけで、我らよりも戦力は上では……?』


「あ~……」


 その指摘に、シファは納得したようにこちらを見た。

 こっち見んな。


『私は魔族の統治にはさほど興味がありませんから、いつまでも付き合いませんよ?』


『う……うむ。

 そうじゃのぅ……。

 我ら魔族のことは、我らでどうにかせねばならぬ……』


 うん、そうだね。

 まあ実際には、私は力を貸しすぎているくらいと思うけれど……。


 でも、親しい者の為なら、相手が不幸にならない程度には関わるさから、今すぐ手を引くことは無いよ。

 本日から検査入院です。特に問題が無ければ明日には退院しますが、小説のストックは無いので、次の更新は早くて木曜深夜(金曜)くらいになるかと……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 健康第一、全然悪くないよ
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