24 完全体
お待たせしました。いつもの時間よりも、ちょっとはやく更新します。
ただし魔法は尻から出る……のかと思った。
ネネ姉さんの1t前後はあろうかという脂肪がエネルギーに変換され、それが臀部から放出されたかに見えた。
だがそれは、9本目の尻尾へと変じている。
まさか脂肪を生贄に捧げて、レベルアップするとは……。
そして9本の尻尾になったということは、我らが天狐族の完全体になったということだ。
つまり姉さんは、人型へと姿を変えることも可能になった。
しかも私の時もそうだったけど、一番最初は自動的に変化する。
「これが……姉さんの人間形態……」
目の前に、人型となった姉さんの姿があった。
しかも脂肪を使い切ったから、痩せている。
劇的なビフォーアフター!!
外見は……私と同じ六つ子の1人だから、似ているというか、顔はほぼ同じだな……。
ただ、今は理性が吹っ飛んでいるようなので、まさに野獣のような顔付きだ。
あと、私よりも身長が高いのは、栄養状態が良くて成長したんだとは思うけど、胸が私よりも大きい。
……あれか。
残った脂肪が胸に行ったのか。
私のイメージでは姉さんは貧乳なのに、解釈違いだ。
脂肪を全部使い切れば、良かったのに……。
それと……私よりも髪が短いのは解釈通りだけど、この差異は何が原因なのだろう……?
うむ、分からん!
それにしても、なんという食への執念……。
これを上手く使えば、自力で奴隷契約の呪縛からも脱することができたかもしれないな……。
それに今も、食べ物をちらつかせれば、戦闘をやめてくれると思う。
だけどそんな決着の仕方じゃ、スッキリとしないよなぁ。
キツネとしては、群れの序列はハッキリさせておかないとね!
ここは思う存分、戦り合おうじゃないか。
私も人型に戻る。
服を着直す暇は──、
「ガアアァァァァァっ!!」
「!!」
無いな。
姉さんが突然跳びかかってきた。
しかも速い。
足の裏からジェット噴射のように、炎を吹き出して推進力にしているようだ。
そして姉さんの右肘からも、噴射が。
エルボーロケット!?
しかもこれは……強い……!
速……避…………無理!!
受け止める、無事で!? できる!?
否、死──にはしないが、まともに受けたら無傷では済まないぞ!?
くっ……前もって警戒していれば回避も可能だったが、ちょっとこの攻撃は予想外だ。
回避が無理なら、腹筋に力を入れて受け──、
「グボォぅっ!?」
予想以上の腹部への衝撃に、胃液が逆流しそうになった。
これ、小山が吹き飛びそうな威力だぞ!?
我らが天狐族の完全体の力……自分で受けてみるととんでもないな……!
こりゃ、油断できないわ。
私は神経を研ぎ澄まし、姉さんへと視線を固定きた。
私が観察していると、姉さんが再び襲いかかったくる。
彼女は踵から噴射しつつ、回し蹴りを放った。
ははは、大事な所が丸見えですよ?
うん、今度は動きに反応できる。
「廻し受け!」
私は空手の廻し受けで蹴りの軌道を逸らし、姉さんの体勢を崩した。
そしてすかさず──、
「尻尾昇●拳!!」
尻尾を跳ね上げて、姉さんに叩きつける。
しかも9回連続の多段ヒットだ。
「グウゥっ!?」
「肉弾戦では、私には勝てませんよ?」
完全体になった私達姉妹の身体能力には、それほど大きな差は無いだろう。
だけど私には、前世で見た様々な格闘技や漫画・アニメ・ゲームから得た技の知識がある。
特に有名な必殺技は、再現できるように練習したからね。
前世では無理だったことでも、今は超人的な身体能力と魔法の力があるのだから、再現は不可能ではない。
それならば、試してみるっしょ?
そんな訳で、身体スペックの条件が同じでも、技の差で私が勝つる!
……って、
「うおっ!」
姉さんが手の爪を伸ばして、引っ掻いてきた。
それから私を真似たのか、尻尾による攻撃も続く。
その攻撃の鋭さは、さすが野生動物。
やっぱり油断していい相手ではないな……。
着実に攻撃を躱して、確実に反撃していこう。
でも姉さんも防御力が高いから、なかなか決定打にはならない。
それでも私の攻撃は当たっているので、姉さんがイラついているのは感じ取れた。
そのもどかしさが蓄積されていき、ついに爆発の時を迎える。
「ガアアァァァァーっ!!」
姉さんの全身から、爆発的に炎が吹き出した。
私への攻撃が当たらないことにしびれを切らして、全方位攻撃によってすべてを消し去るつもりなのか!?
実際、今の私達が放つ全力の魔法ならば、小型核程度の威力は出るだろう。
だが、やらせはせん! やらせはせんぞ!!
私は9本の尻尾をこよりのように捻って束ね、巨大なドリルを形成する。
「ギガド●ル・ブレイクゥゥゥゥ!!」
そのドリルを高速回転させ、今にも爆発しそうな姉さんにぶつける。
すると姉さんは攻撃よりも防御に力をまわさねばならなくなり、かといって攻撃を中断させられるようなタイミングでもない。
だから彼女は、全方位に放出するはずだったエネルギーを一点に──私のドリルへと集中して叩きつけた。
しかしそれで、私の攻撃を相殺できると思ったのなら、甘い考えだぞ?
ドリルは私の魂なので、砕けないのだ!
いつも応援ありがとうございます。
次回は火曜か水曜か……。