20 誘 導
あれ……? 予約設定ミスって、前日に更新された……。
私はネコ姉妹を、思う存分にモフった。
何故ならば!
そこに可愛い子がいたから!
他に理由は必要だろうか?
まあその結果として、姉妹はグッタリとしていたが……。
過剰な快感は、体力を奪うからね……。
ただ、この毛繕いは、施術中に私の魔力や生命力を送り込んでおり、ヒーリング効果もある為、実際に消耗したのは精神的なものだけだ。
事実、私の毛繕いによって、姉妹の毛並みは輝かんばかりに滑らかとなっている。
「綺麗になりましたよ」
「あ……ありがとうございますにゃ……」
……ん?
セポネーテには、語尾に「にゃ」をつけることをお願いしていないのだが……。
妹の方にお願いしたことを、律儀に実行しているの?
まあ、可愛いからいいか。
ともかく、姉妹は余計に疲れてしまったようだから、もうちょっと休んでいこうかな……。
「アイちゃん、次うちにもさせて!」
おっと、キエルもモフりたいらしい。
あなたも好きねぇ。
「私のお友達ですから、怖くないですよ~」
「うにゃ……」
私はマルガレテを、キエルに手渡す。
手渡された本人は、グッタリとしていて抵抗する気力も無いようだ。
「うわぁ……モコモコだよぉ~」
キエルはご満悦だが、なすがままになっているマルガレテは──、
「お前、下手にゃ……」
「なっ!?」
私のテクニックと比べて、キエルのそれには不満があるようだ。
ただ……、
「このフカフカは悪くないにゃ……」
と、キエルの胸に、顔を埋めている。
ネコってオッパイを踏み踏みしたりするし、好きなのかなぁ。
一説には、子猫の頃に母親の母乳の出を促す為にしていた動作の名残だというが、幼い頃に母親から引き離されたと思われるマルガレテにとっては、キエルの大きな胸は母性を感じさせるのだろうか?
アリゼの胸も好きそうだな……。
一方、私の手の中にいたセポネーテは──、
「あ……!」
何かを思い出したのか、声を上げた。
「どうしました?」
「定時連絡をしないと、異常事態が生じていると城中に伝わるようになっていますにゃ……!
おそらく既に、城が警戒態勢に入っているのではないかと……にゃ」
な、なんだってー!?
国の運営はダメダメなのに、防犯意識だけはキッチリしているなぁ……。
でも確かに、こちらへ向かってくる気配はある。
「じゃあ、そろそろラッジーンを倒しにいきますか!」
あ、念の為に、隠し通路の出入り口は地属性魔法で塞いでおこう。
追い詰められたラッジーンが、使おうとするかもしれないし。
「……って、ラッジーンは何処にいるのですかね?
クラリスはこの城に住んでいたのだから、いそうな場所は分かりますか?」
「あいつが夜に何処で何をしているかなんて、分からないわね……」
まあ、人間と獣人の生活スタイルは、大幅に違うだろうしなぁ。
ただ、国王なのだから、昼間なら謁見の間か、執務室にいるのだろう。
……まともな国王なら。
だけど今は夜だし、寝室かな?
夜行性なら、むしろ仕事をしているかもしれないが……。
「どうなのです?
セポネーテ?」
「普段なら、寝所ですが……にゃ」
しかし侵入者の存在が発覚した今、ラッジーンはそのまま寝室で待機しているなんてことがあるだろうか?
むしろ脱出の為に、ここに来る……なんてこともあるんじゃないか?
いや、そこまで切迫した状況でもないから、まだ動かないだろうな……。
ふむ……取りあえず、城全体を魔法で形成した防御壁──「結界」で包んで、出入りはできないようにしておくか。
あとは危機感を煽れば、ラッジーンは脱出の為にここへ来るかもしれない。
その為にも私の「幻術」で、大勢の兵士が城を囲んでいるように見せかけよう。
それと……ここに駆けつけようとしている、敵の対処だが……。
近づいてくる気配と臭いは、人間の物ではないな……。
かといって、姉さんの物でもない。
まさか城内に、魔獣を放し飼いにしているのか?
それならば、そいつらを利用させてもらおう。
「ココアとシファ、ここに向かっている敵を引き付けて、城内のあちこちで暴れてきてください。
頃合いを見て倒してもいいので」
城内の各所で騒ぎが起これば、ラッジーンもこちらへと逃げてくるかもしれないしね。
で、私の指示を受けた2人の反応はと言うと──、
「分かりました、お姉様!」
『何故、妾が!?』
真っ二つの割れた。
「ココアは素早いし、シファも逃げ回るのは得意ですよね?
それにクラリスの王位奪還に、魔族が手を貸したという実績も欲しいので、目立ってきてください」
『ぐぬぅ……!!』
シファからはぐうの音っぽいものは出たが、反論は出なかった。
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次回は、いつになるのか……。