10 決戦、グリフォン!
狩りをしていると、グリフォンの姿を見かけることが多くなった。
どうも私達の縄張りに当たりをつけ、狙っているような気がする。
お兄ちゃん達を食べて、味を覚えたのだろうか?
私達は洞窟の中にいれば安全だが、常に引きこもっている訳にもいかないし、このままでは狩りに出掛けることができず、兵糧攻めにされるという事態も有り得る。
これはそろそろグリフォンと、決着を付けなければいけないのかもしれない。
一応作戦は考えているけど、やるのならグリフォンが巣に戻って、眠っている時だな……。
いや、その前に準備が必要だ。
たぶん一発では成功しないから、コツコツと作業を重ねないといけないだろう。
そんな訳で私は、毎日のようにグリフォンがいない巣へと通い、奴に気付かれないように痕跡を残すことなく、地味な作業を繰り返す。
これ、失敗するとやりなおしが利かないので、慎重に……慎重に……!
そしてある日の晩、グリフォンが寝静まった頃を見計らって、私はその頭上にある岩棚に立った。
今からこの岩棚を、グリフォンへ落とすのだ!
私の土魔法ではまだ、何も無い空中に岩石を生み出すということはできない。
だけど繰り返した修練によって、既に存在する岩石を変形させることはできるようになっていた。
私は日々ここへと通い、岩棚の一部を空洞化させて、崩れやすいようにしておいたのだ。
うっかりグリフォンがいない時に崩してしまわないように、細心の注意を払いながら、作業を進めてきた訳だが、ようやく最後の仕上げだ。
よし、岩に亀裂を入れて……これで落ちるはず。
さあいくぞ、バス●ー岩石落とし!
「キュイィィィィィ!?」
よし、グリフォンが下敷きになった。
気分はディグ●グ!
ただ、思っていたほど大規模な崩落にはならず、グリフォンが即死するほどではない。
ならば巣に「狐火」を放って、グリフォンを焼き殺す!
ふはははは、燃えろ燃えろー。
「狐火」はグリフォンの巣に引火し、火勢を強めた。
やはり枯れ草や枯れ枝の寝床は、燃えやすいな。
しかし──、
「ギュアアァァァ!!」
「!?」
グリフォンを中心に突風が巻き起こり、岩や炎が吹き飛ばされた。
なんだ、魔法か!?
グリフォンにも使えたのか!
痛っ、痛たたたた!?
砕けた岩が、こっちにも飛んでくる!
それに岩の下敷きになっていたグリフォンも、今ので自由になった。
一筋縄ではいかないか……!
ただ、グリフォンも無傷ではない。
全身に火傷を負っているし、岩に挟まれた所為で、翼も折れている。
あれでは傷を癒やすまで、空を飛ぶことはできないだろう。
ならば更に「狐火」を撃ち込んで、トドメを刺す!
──って!?
私が「狐火」を発動させようとしたその時、グリフォンがこちらに向かって跳びかかってきた。
奴の下半身は獅子。
その脚力は侮れない。
まあ、前足は鳥のワシなので、走るのは苦手そうだ。
それならば、ひとまず──、
逃げるんだよぉ-っ!!
なにも正面から戦う必要はない。
グリフォンには魔法もあるようだし、逆転を許すような状況には持ち込ませない。
私は逃げる。
グリフォンは──追ってきているな。
こちらの有利な場所へ、誘い込むぞ!
「っっ!!」
私は悪寒を感じ、左横に飛び退く。
その瞬間、私の右側を何かが通り過ぎた。
そしてそれは、木々をなぎ倒していく。
グリフォンの風魔法か!
だけど、背後からの攻撃を、感知できている!
魔力の動きが感じ取れるから、回避は可能だ。
よし、こちらも背後に「狐火」をばらまき、グリフォンの動きを牽制するぞ。
対空防御!!
ただし、完全に引き離しては意味が無いので、私はグリフォンとの距離を「つかず離れず」となるように、スピードを調整しつつ走った。
「!」
しかし私は、岩に囲まれた袋小路に追い込まれた。
やばい道を間違えた!?──と、動揺する私に、グリフォンが襲いかかってくる。
絶体絶命のピンチ──っ!!
「ギェ!?」
……かかったな、アホぉが。
グリフォンが攻撃した私の姿は、唐突にかき消えた。
馬鹿め、残像だ。
いつからそれが私だと錯覚していた?
そう、私が使ったのは幻術だ。
キツネならば人を化かすはずだと思い、練習したらできた。
おそらく私達種族の、固有スキルなのだろう。
だからたぶん、ママン達も使おうとすれば使えると思う。
そして幻の私がいた場所には──、
「ギュエェェェェ──っ!?」
地面が崩れ、グリフォンが落ちていく。
前もって落とし穴を掘っておいたのだ。
翼が折れているグリフォンでは、そこからすぐに抜け出すことは難しいだろう。
じゃあ、穴の中のグリフォンめがけて、「狐火」を撃ち込むね。
100発くらい。
「キュエエェェェ──!!」
グリフォンが燃えていく。
悪あがきで風魔法を使って火を消そうとしているけど、火勢が弱まったら追加で「狐火」を撃ち込むから、無駄だと思うよ。
無駄無駄無駄ァーっ!!
やがてグリフォンの抵抗は弱まっていき、ついにはその動きが完全に止まった。
「!」
その瞬間、私は大幅にレベルアップした感覚を覚えた。
やはり魔物の経験値は、大きいようだ。
──って、
……ちょっとお尻の方に違和感。
なんだか動かせる関節が、増えたような……。
あっ、尻尾が1本増えているっ!?
……薄々感づいていたけど、やっぱり私達って、普通の動物ではないのでは……!?
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