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17 愛らしい刺客

 隠し通路の出口で待ち構えていたのは、可愛らしい子達だった。

 オレンジ色の毛並みを持ち、キジトラっぽい模様を持っているので、ネコ型の獣人……かな?

 小柄な体格だからトラ等の子供ということも有り得るけど、少なくともネコ科の獣人ではあるようだ。


 それが2人。

 1人はまだ幼く、もう1人は成猫(せいびょう)のように見える。

 姉妹(しまい)か……それとも母娘(おやこ)かな?


 2人はナイフを手にしていた。

 暗殺者(アサシン)系の職業(ジョブ)なのだろう。

 自然界では肉食獣として狩りをするネコ科の獣人には、ピッタリだと言える。


「かっ……可愛い……!」


 珍しくキエルが、緊迫した場にそぐわない発言をする。

 あ~……そういえば以前、「可愛いのが好みだし」と言っていたような……。

 えっ、そういう意味なの?

 ケモナーなら、私でもいいじゃない!?


 いや……でも、イヌ派とネコ派というのもあるしな……。

 私、どちらかと言えばイヌ系だ……。


 ……っと、今は悠長に構えている場合ではない。


「姉上、行きます……!」


「ええ、よろしくてよ、マルガレテ」


 やっぱり姉妹か。

 その姉妹が、攻撃を仕掛けてきた。

 おお、ネコ型の獣人だけあって、動きがかなり速い。


「くっ、なんだこのスピード!!」


 リチアが前に出て食い止めようとしているけど、姉妹であるが(ゆえ)の絶妙なコンビネーション(連携)に翻弄され、対応に苦慮している。

 とはいえ、ナユタでは対応できないスピードだ。


「うちもやるよ!」


 キエルも前に出る。

 剣士である彼女なら、なんとか対応できるか。

 でも本当なら、彼女もクラリスやアリゼと一緒に、ラッジーン戦まで温存したかったのだがね……。

 

 だけど仕方がない。

 ここは全員でかかるか。

 あ、私は増援を呼ばれないように、周囲に空気の壁を作って、音を遮断するよ。


 そして前衛のキエルとリチアに、後衛のレイチェルとクラリスが魔法で支援を行い、アリゼが回復を行う。

 この編成で、今のところ大きな問題は生じては居ない。

 姉妹の動きについて行けないナユタが、防御以外は何もさせてもらえない程度だ。


 あ……シファとココアは特に何もしていないが、今回はそれでもいいか。

 彼女達の攻撃は強すぎるから、その攻撃がネコちゃん達に当たると死なせてしまう。

 あんなに可愛い子達は、是非とも生け捕りにしたい。


 ぐへへ……モフるぜぇ~。

 超モフるぜぇ~。


「っっ!?」


 おっと、私の煩悩が伝わったのか、ネコ姉妹が一瞬こちらに顔を向けてから、急に飛び退()いた。


「姉上、今嫌な感じが……」


「ええ、これはマズイかもしれませんね……。

 撤退を考えた方が……」


 姉妹はそんなことを話しあっているが、()がすつもりは無い。


「──なっ!?」


 姉妹も気付いたようだ。

 いつの間にか周囲に、見慣れない物体があることに。


 それは水属性魔法で形成した、ペットボトル型の氷像だ。

 勿論ただの氷像なので、特別な効果は無い。

 やろうと思えば地雷のような効果を付与することもできるけど、今は何もしていないよ。

 

 そもそも水の入ったペットボトルが、ネコ()けになるというのも眉唾な俗説だしねぇ……。

 まあ、ペットボトルの水に反射した太陽光を、嫌うのだという話もあったが、それも一時的ですぐに慣れるらしいし……。

 逆に言えば、一時的なら効果があるということでもある。

 じゃあ光属性魔法で、ちょっと光らせてみるか。


「ふなっ!?」


「くっ……何の真似!?」


 光に驚いて、尻尾を膨らませる姉妹。

 ただし、実害は無い。


 それでも正体不明の物体があれば、それを完全に無視することはできない。

 だから集中力を乱された姉妹の動きとコンビネーションは、明らかに悪くなった。

 当然それは、我々がつけ込む隙となる。


 結局のところ姉妹は、そのまま逃げる機会を失い、制圧されることとなった。

 いや、周囲には防音用に空気の壁を作っていたから、どのみち逃げることはできなかっただろうたけどね。


 さて、姉妹には奴隷契約の術式を施して、暴れられないようにしてから村へ送るか……。

 ん……?

 この子達、既に奴隷契約の魔法がかけられていないか?


 ……となるとこの子達は、現国王のラッジーンの忠誠を誓っている訳ではない……と?

 獣人が同じ獣人に対して、奴隷であることを()いているの……?

 この子達が犯罪奴隷というのならまだ理解できるし、私だって危険がある相手にはそういう処置を(ほどこ)すけど、それほど凶悪な子達には見えないけどなぁ……。


 そもそもラッジーンって、獣人に対する奴隷扱いに不満を持って、前王政を打倒したんじゃないのか?

 そうじゃないというのなら、王になろうとしたら大義はなんだ?

 ただの支配欲?

 自分自身の欲望を満たす為だけに、王になったとでも言うのだろうか?


 あ~……でも、まともに国を統治している訳でもないようだし、そうなのかもしれないなぁ……。


 ……あれ?

 ということは、もしかして姉さんも……?

 とにかく、姉妹の奴隷契約を解除して、話を聞いてみるか。

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