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16 王城へ

 私がシスの子供達の相手をしていると、シスもやってきた。


『お姉ちゃん、おかえりー。

 また、新人を連れてきたの?』


「はい、これから小さな子供達を沢山連れてきますので、セリスさんに受け入れ準備をするように伝えてくれますか?」


『はーい、みんな行くよー』


『あ~い!』


 シスが子供達を引き連れて走り去っていくのを見送りながら、リチアは私に尋ねた。


「……あれも妹さん?」


「私と同時に生まれた妹ですね。

 この村には居ませんが、他にも姉妹(しまい)と甥と姪に母もいますよ」

 


「……どうやら君達の種族は結構いるらしいが、もしかして王城を襲った紅蓮(ぐれん)(けもの)というのは、やはり……?」


 お気づきになりましたか。

 さすがにリチアにも分かるよなぁ。


「おそらく私の姉ですね。

 だからこれから、姉と今の王様を懲らしめに行こうと思っていたところです」


「それは……」


 この事実を知って、リチアは考え込むような仕草をした。

 そして──、


「その戦いに、私も連れていってくれないかな?

 少しは役立てると思う。

 子供達を助けてくれる恩は、返したい」


 と、申し出た。

 それに対する私の答えは、こうだ。


「いいですよ」


「いや、そんなあっさりと!?」


「別に断る理由もありませんし、借りを作ったままでは気持ちが落ち着かないというのも分かります」


 それに危険はあるだろうけど、だから来るなと言うほどリチアは弱くないしね。

 いや、私から見れば足手纏いではあるんだけど、それを言い出したら殆どの存在はそうだ。

 でもだからこそ、私だけですべてを解決してしまうのは良くないと感じる。

 なるべく当事者同士に任せたい。

 リチアは王都に住んでいたのだから、その王都を荒廃させた者と対決する資格はあるだろう。


 そんな訳で貧民街(スラム)の子供達を村に送り届けたら、早速王城へ突入……という訳にはいかない。

 さすがに「転移魔法」を何度も繰り返すと魔力の消費も大きいので、村で一晩休んでから王都に行って、そこでも少し休んで夜から突入……ってことでいいかな?

 村での子供達の様子も見たいしね。


 あと、当面クラサンドに帰る予定は無いから、拠点の留守番をしているダリーも回収しておいた。




 そして翌日──。

 王都に戻ってきた私は、村でトイレ用に育てていたスライムを街へと放っていた。

 汚物とか汚れとか死体とかを食べてくれる、便利な奴らだ。


「なにやっているのよ、あなた……?」


 クラリス達が、胡乱(うろん)な目でこちらを見ている。


「スライムに汚物とか諸々を食べてもらい、町を綺麗にしようかと思いまして……。

 比較的大人しくて弱い品種なので、人を襲う可能性は殆どありませんよ」


 無論スライムが人を襲う可能性はゼロではないが、この町の汚染状態を放置した方が、伝染病の発生などで人が多く死ぬ。

 それに「浄化魔法」は、善玉菌まで消してしまう可能性もあるから、いくら私に王都全体を浄化できる魔力があっても、やらない方が無難だ。

 それならば多少は時間がかかっても、スライムに任せた方が弊害は少ないだろう。

 ただ、これだけ汚れて餌が豊富な王都では、後々スライムが大量発生するかもしれないけどね……。


「とにかく、行動に移すのは夜からなので、今は休みましょう」


「そうじゃな」


 と、真っ先に昼寝を始めるシファ。

 お前は気が緩みすぎじゃないか?

 まあ、緊張しすぎよりはいいのかな?


 そして夜になった訳だが、私達は闇夜に乗じて王城に侵入することにした。

 夜ならば城にいる人間も減っているはずだから、侵入しても見つかりにくいし、見つかったとしても敵の数は限定される。


 で、私の術を駆使すれば、城壁を越えて侵入することも可能なのだが……。


「隠し通路があるわよ?」


 クラリスが城を脱出した時に使った、抜け道があるらしい。

 まあ、権力者の住居にはつきものだな。


 それ大丈夫?

 既に位置を把握されて、塞がれるとか罠を仕掛けるとかの対策されてない?


「無いでしょ?

 ラッジーンも、自分が逃げる時に使うかもしれないんだから、塞いではいないと思うわよ。

 出口に見張りくらいは、いるかもしれないけれど……」


 まあ、仮に罠があったとしても、ダンジョンで鍛えられた私達ならば見破られるか。


 で、その隠し通路は、下水を流す地下水路に隠されていた。

 汚いし臭いし、ここを通るくらいなら、正門から突入した方が良くない?


「さあ、行くわよ!」


 ……クラリスがやる気になっているので、水を差すのも悪いか。


 そして隠し通路には、多少の罠は仕掛けられていたものの、特に問題無く城内へ侵入することができた。

 しかしその出口を見張っている者は、やはり存在したのだ。

 身を隠しているが、確かにいる。


「隠れていないで、出てきたらどうです?」


 私の呼びかけに、影が動く。

 ちゃんと気配がする方に向かって、声をかけたからね。

 完全に位置を知られていることは、理解できたのだろう。


 しかし、姿を現したそれが──、


「ラブリー……」


 思っていたよりも可愛かったのは、予想外だったが……。

 いつも応援感謝です。


 ちょっと出掛ける用事があって、執筆時間がとれないので、次回は明後日に間に合うかどうか……。

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