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15 後の首都である

 暑いです……。

「……これは、なんなんだい?」


 リチアが村を見て、茫然としたように呟いた。


「何……って、私の村ですが」


「いや……確かに規模としては村のようだけど、発展具合が全盛期の王都以上に見えるんだが……」


 ほう、この異世界(地球)から持ち込んだ知識の(すい)を投入して作った村を見て、発展していると理解できるとは賢いな。

 知識が無ければ、変な形の建物があるとか、畑に違和感があるとか、その程度の感想にしかならないと思う。

 建物だけではなく、農地にだってこの世界とは違う農法を使っているのだから、見る者が見れば違和感を覚えるはずだ。


「まだまだこんなものではありませんよ?

 この村はこれからもっと、発展させていくつもりです」


「それはなんと……まぁ……」


 一応、前世から転生に備えて色々な分野の知識は学んでいたけれど、それを実現できるかどうかは別問題だからなぁ。

 少なくとも私以外の者が再現できなければ、技術としてこの世界には定着しないし、一般化して人々の生活の向上には繋がらない。

 その辺の問題がクリアできていない技術は、まだまだある。


 ただしそれは、材料等の必要な条件さえ揃えれば、いつかは実現できる物だ。

 地球でも長い時間をかけて試行錯誤した末に発展してきたのだから、それと同じことをすればいい。

 とはいえ、魔法や魔物の素材など、地球には無い要素も多数あるので、違う発展の仕方も有り得るけどね。


「ここも希に外敵に襲撃されることもあるので、絶対に安全な場所とは言えませんが、貧民街(スラム)よりは子供達が安心して暮らせると思います。

 それでも不安があるのでしたら、近くのサンバートルの町や、ここと王都の間にあるクラサンドの町に子供達を運ぶこともできますよ?

 ただ、他の町では住居とかの生活基盤はありません。

 でもここなら、最低限は私が用意します」


「それは何から何まで……。

 でも、私は何を代償に支払えばいいんだい?」


 リチア達にしてみれば話が上手(うま)すぎるし、不審に思うのも当然だろうね。

 ただより高い物は無い……とも言うし。


「別に代償はいりませんよ。

 子供達を助けたいと思うのは、当たり前の感情ですし、村の人口が増えれば経済活動が活発になって村が(うるお)うので、将来への投資という意味でも損はありません。

 勿論、村の秩序を乱す者は、犯罪奴隷として扱うか追放しますが……」


「……なるほど、分かった。

 この村でお世話になるよ」


 リチアは納得いったようで、笑顔で頷いた。


「それにしても、魔族にも優しい人はいるのだね……」


「それは人間にも悪人がいるのと同じですよ。

 ただ、魔族は戦いや強さに重きを置く傾向にはあるようなので、そういう面で人間との間に軋轢が生じる可能性はありますね」


 シファだって温厚で気弱な性格ではあるけれど、魔族の闘争本能を抑え込むのには苦労していたようだしねぇ……。

 私達天狐(てんこ)族だって、戦うのは嫌いではないようだ。


 他種族との共生というのは、言うは(やす)し……だが、実際にはそう簡単な話ではない。

 種族ごとの性質の違いは確実にあるから、付き合って行く上で価値観の齟齬は間違い無く生じる。

 それが争いにならないようにする為には、厳格な対策は絶対に必要だ。

 だから村の秩序を大きく乱す者には、犯罪奴隷としての契約か追放などの、厳しい処分を科している。

 それはどんな立場の者でも──これから移住する子供達でも例外ではない。


「それで……この村は、なんて名前なんだい?」


 うむ、これから住む場所の名前を知りたいのは、当然のことだね。

 ちょっと前まではゴブリン村でしかなかったんだけど、ゴブリン以外の種族も増えたので、新しく改名した。

 その案を出したのはシファだ。


「トウキョウですね」


「トウキョー?」


「とある言語で、東の(みやこ)という意味ですよ。

 ここは王都の北東にありますし」


「北は何処に……?」


 いいんだよ、こじつけなんだから!

 トウホクキョウじゃ、しっくりこないし。

 とにかくかつての東京みたいな都市を造るのが、シファの……そして私の夢だ。


「でも……東の都か……。

 君達は、ここに国でも作るつもりなのかい?」


「いずれはそうなるでしょうね」


 おそらく人間の国では、魔族などの異種族が普通に暮らすのは難しい。

 ならば人間とは違う国を、作るしかなくなる。

 結果的に人間の国と対立する可能性もあるが、そこは私達に理解があるクラリスを女王とする国が誕生すれば、上手く付き合っていけると思う。


 だから私達は、クラリスの国を奪還する動きに協力しているのだ。


 さて、用事は済んだから、そろそろ子供達を引き取りに行こうか。

 ──って、誰か来た。


『おばちゃーん!』


『おかえりなさーい!』


 シスの子供達だ。

 ここ1ヶ月で、かなり大きくなったなぁ。

 動物の子供は、本当に成長が早い。

 とは言っても、まだ仔犬みたいなサイズではあるが。

 手足がまだ短くて可愛い。

 

 それでもこれくらいになると、「念話」だって使える。

 私の時は試行錯誤しながら0から作り上げたので時間がかかったけど、既にあるものを習得するのは、我らが天狐族ならばそんなに難しくはない。


 だが──、


『おばちゃんはやめなさい!

 お姉さんです!!』


『えー?』

 

 それは容認できなかった。

 確かに伯母だが、まだ十代の女の子やぞ!!(前世は含まないものとする)


「これは……あのココアとかいう子と同じ?」


 リチアは子供達とココアが同族であることに気付いたようだが、さすがに私と同族だとは気付いていないようだ。


「私の甥と姪ですね。

 ココアは妹で、この子達は別の妹の子供です。

 私も元々はキツネの姿なのですよ」


「なん……と」


 私の正体に、リチアは衝撃を受けている。

 だがそれは──、


「つまりこの子達も、君みたいな耳と尻尾のある幼女になれるってことかい!?」


 煩悩まみれな理由だったが。


「ある程度成長しないと無理ですから、幼女にはならないかと」


「なんだ……」


 露骨にがっかりするんじゃない。

 まあ、私もケモミミ幼女は、ちょっと見てみたかったが……。

 いつも応援ありがとうございます。

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