表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/216

13 孤児達

 お待たせしました。

 リチアに連れられて貧民街(スラム)を進むと、臭気が多少マシになった。

 これは悪臭に鼻が慣れただけではなく、汚物や生ゴミ、生物の死体などの処理をちゃんとした結果なのだろう。

 つまりこの周辺では、ちゃんとした人間の生活が維持されているはずだ。

 ただ、あちこちに瓦礫が散乱して、見た目は荒れ果てた貧民街であることには変わらない。


「どうせなら、もう少し片付ければいいのに……」


「綺麗にしていたら、それだけ目立つだろう?

 目立てば、それだけ良くない者も寄ってくる」


 なるほど……。

 リチアの言い分分かる。


「でも、汚れを放置すると、他の者達も汚すことへの抵抗感が低くなると言いますよ?

 荒れた状態を見過ごせば、更に荒れた状態を招くこともあります」


 確か割れ窓理論とか言ったかな?

 割れた窓を放置しておくと、ここは窓を割っても良い場所なのだという不心得者が出てきて、結果的に地域全体の治安悪化に繋がる……という感じの話だったと思う。

 治安や景観を守る為には、軽微な犯罪や汚れでも無視してはいけないという訳だ。


「はは……難しいことを言うねぇ」


 リチアは苦笑するが、生きるか死ぬかというほど荒れ果てた王都の状況では、私の言葉は綺麗事に聞こえるのかもしれない。

 仮に私の言う通りに実践したとしても、それで状況が確実に好転するとは限らないし、子供達に危険が及ぶリスクを抱えるのも嫌なのだろうな……。


 で、周囲は瓦礫が目立つけれど、健在な建物の中には、多くの気配が感じられた。

 これは孤児のものかな。


「お~い、お客さんだぞ~」


 リチアがそう呼びかけると、建物の影から怖々とこちらの様子を窺うように、小さな子供が顔を出す。


「姉貴が帰ってきたぞ!」


 と、その子が背後に呼びかけると、更に複数の顔が出てくる。

 そして──、


「おかえりなさーい」


 ゾロゾロと子供達が出てきた。

 最初は私達の姿に警戒していたようだが、リチアの姿を認めて安心したようだ。


 ……ん?

 大多数は小さい女の子だけど、中には成人していてもおかしくないような年齢の娘もいる。

 それと……、


「……男の子もいるのですね」


 意外にも男児もいた。


「そりゃあ……小さい子は、保護しないと生きていけないからね」


 ロリコンにしては、殊勝な心がけだ。


「でも、大人の男はいないのですね……」


「男と女を一緒に生活させるのは、危ないだろう?

 特に思春期の男なんて、いかがわしいことで頭が一杯だろうし……。

 ある程度成長した男子は、他にも男だけのグループがあるから、そこに任せているよ」


「確かに……」


 そうだな……。

 私だって立場が同じならば、リチアと同じことをする。

 だが、1番の危険人物の口から聞かされても、説得力を感じないような……。


 でも、リチアは子供達から慕われているようだし、しっかり保護しているということは間違い無いのだろう。

 ただ、あの変態的な言動が通じるのは、意味が分かっていない幼児だけだろうけれど。

 実際、ある程度成長している娘達からは、距離を置かれているようにも見える。


 一方──、


「あっ、アリゼお姉ちゃんだ~」


「ただいま~」


 アリゼの姿を見つけた子供達が、ワラワラと集まってきた。

 こちらは、普通に慕われているようだ。

 私から見ても、彼女にはあまり人間的な問題点は無いものなぁ……。

 むしろ物凄い母性を感じさせる。

 納得の人気だ。


 そんなアリゼとは違い、クラリスにはそんなに集まってない。

 子供達にとっては、顔見知り程度って感じなのだろう。

 まあ、お姫様とスラムの孤児なんて、本来は接点が無いものだし、顔見知りというだけでも希有なことではあるのだろうけれど。


 そしてココアや私の存在が珍しいのか、遠巻きに見ている子もいるなぁ……。

 なお、シファは現在(つの)を隠しているので、そうでもない。


「おや、獣人の子もいるのですね」


「幼女に、種族は関係ないだろう?」


 当然のことであるかのように、リチアは答えた。

 ガチだよ、この人……。

 ある意味では、見境が無いとも言えるが……。

 トカゲっぽい子もいるけど、それでもいいのか……。


 他には……、


「む、タヌキ!」


 我らがキツネ族とは、永遠のライバルであるタヌキ!

 タヌキの獣人がいるぞ!

 でも、モフモフでめっちゃ可愛い!


「こんちは。

 あなたのお名前はス●ッタですか?

 水星から来たの?」


「わ、私はコロロだぽん。

 水星ってなんだぽん……?」


 コロロか。

 名は体を表すだな。

 豊かな毛皮の所為で、コロコロと太って見える。


「モフってもいいですか?」


「モフ……?」


 困惑するコロロの前に、ココアが割り込む。


『お姉様、可愛がるなら、私にしてください!』


 ふむ、コロロをライバル視している訳か。

 名前も似ているし、いいライバル関係になるかもしれない。


 その後、私はココアに毛繕い(グルーミング)をしたけど、気持ちよさそうにしているココアを見て羨ましくなったのか、コロロもモフらせてくれた。


 実にケモノハーレムだなぁ。

 次はできるだけ明後日に……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最近のネタぶっこむと死んだ年代が・・・
[一言] モフモフは正義
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ