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9 そこに奴はいた

 それから私は、毎日のように洞窟へと通い、「狐火」の練習をしつつコウモリ退治に(いそ)しんだ。

 もっとレベルアップがしたい……なので。

 

 そして洞窟の奥へ行くと、そいつ(・・・)がいた。

 まあ、グリフォンを見た後だとあまりインパクトは無いけど、それでもちょっとテンションが上がったわ。


 そう、それは異世界のザコモンスターとして有名な、スライムである。

 いや、これは巨大なアメーバという感じなので、それとは違うタイプだな。

 日本ではドラ●エの影響で最弱モンスターだという認識が強いけど、実際には毒や強酸を使ったり、物理攻撃が無効だったりするし、天井や木の上から降ってきて、獲物の顔を覆い尽くして窒息死させる……なんて凶悪な攻撃もしてくる。


 それにリ●ル様のように、魔王になった例もあるし、油断はしない方がいいな。


 よし、離れた場所から「狐火」で攻撃だ。

 今や人の拳大くらいまでのサイズで形成することができるようになった火の玉を、スライムに撃ち込んだ。

 スライムの動きは鈍いから、回避することはできないだろう。


 しかし、一撃では倒せないな。

 おっと、反撃とばかりに、身体(からだ)を触手のように伸ばしてきた。

 だけどそれを予想していたからこそ、私は離れた場所から攻撃していたのだ。

 その攻撃は、私には届かない。


 それじゃあ、私のターン!

 一撃で倒せないのなら、連続で「狐火」を撃ち込む!

 オラオラオラオラオラオラオラ──ドラァ!!


 よし、勝った……!

 お、結構レベルが上がったような気がするぞ。

 さすがに魔物は、普通の動物よりも経験値が多いのかもしれない。


 おそらくスライムがこれ1匹きりだということはないはずだから、他のも倒して更なるレベルアップをするぞ!




 その後、数日かけて洞窟の制圧は完了した。

 残念ながら洞窟の奥に財宝が眠っているとか、(ドラゴン)が封印されているとかいうことは無く、ただの洞窟でしかないようだ。

 ちょっと異世界浪漫が足りないなぁ。


 でも、洞窟内の生物はすべて駆逐した。

 しかも洞窟の奥の方は狭くなっている場所もあるので、グリフォンのような大きな身体の外敵は入り込めない。

 つまりここは安全地帯となったのだ。

 家族をここに連れてこよう。


 で、その帰り道──。

 上空から気配を感じ、私は慌てて身を隠す。

 あのグリフォンか!

 

 レベルアップのおかげが、今や私の索敵範囲はかなり広い。

 もうグリフォンから、奇襲を受けることはないだろう。

 ただ、正面から戦って勝てるのかどうかは、ちょっと微妙だ。


 う~ん、あいつはまだ私達親子を狙っているのかな?

 これは早く巣に帰らなければ……!


 いや……ここは、奴の巣を突き止めた方がいいんじゃないか?

 正面から戦えなくても、追跡くらいならできるかもしれない。

 そして巣にいる時ならば、グリフォンだって地上にいるだろうし、更に眠る時には無防備になっていることだろう。


 巣の位置さえ確認しておけば、後々こちらの有利に働く。


 そんな訳で、私はグリフォンの気配を追っていく。

 飛翔している奴のスピードに追いつくのは大変だし、相手に私の存在を気付かれないように、細心の注意を払う必要もあるが、まあなんとか引き離されずに追えている。


 そして辿り着いたのは、とある崖下だった。

 グリフォンはせり出した岩棚の下に、枯れ枝や枯れ草を集めて、寝床を作っていた。

 たぶんこの岩棚で、雨露(あめつゆ)(しの)いでいるのだろうな。


 う~ん……あの寝床になら、「狐火」で引火させることができそうだけど、グリフォンが飛び立ってしまえば意味が無い。

 どうにかしてグリフォンが、動けなくなるようにできれば……。


 ……今は無理だな。

 他の魔法が使えるようにならないと、どうすることもできないような気がする。

 よし、今は巣に戻って、家族を洞窟へ移動させよう。


 とはいえ、ママン達には言葉が通じないから、どうやって引っ越しについて伝えるのか……。

 あ、私の身体(からだ)はレベルアップで結構大きくなったから、妹ちゃん達は咥えて運べるな。

 さすがに娘達全員が移動したら、ママンも付いてくるだろう。


 じゃあそうしようか。


 そんな訳で、引っ越し完了。

 ママンは「勝手なことするな」って顔をしていたけど、我が姉妹は広い新居に大はしゃぎだ。

 それを見て、ママンも折れた。

 彼女にもこの洞窟の利便性が、理解できたのだろう。


 よし、家族の安全も確保したし、魔法の練習をしよう。

 これの習得次第で、グリフォンの攻略難度が変わってくるぞ。

 ……まあ洞窟内だと、妹ちゃんがまとわりついてくるので、なかなかな(はかど)らないのだけどね。

 

 そういえば、そろそろ姉妹に名前を付けてもいいかもしれないな。

 もうお兄ちゃんみたいに、いきなり死亡するようなことも無いだろうから、名前を付けて感情移入したところで(つら)い別れが──というような展開は無い……と思いたい。


 まず最初に思いついたのは、今の私達は4姉妹だから、『若●物語』の4姉妹の名前はどうか……と思ったが、三女の私がベスになってしまうので、それは嫌かな……。

 某スライムみたいで弱そう……。

 まあ、お転婆な妹ちゃんには、エイミーのイメージは合うけど、ここは別な名前を考えようか……。

 

 う~ん……妹ちゃんはシスターの「シス」でどうだ?

 そして姉2人は「アーネ」と「ネネ」で、ママンはママンのままでいいか。

 そして私は私だから「アイ()」だな。


 安直だけど、このくらいの方が馴染みやすいだろう。

 この名前が無駄にならないように、家族全員で生き残るぞ!

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― 新着の感想 ―
[一言]  娘の名前を受け継(?)いだ。
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