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プロローグ 我は百合を嗜む者である

 新作です。拙作『乗っ取り魂~TS転生して百合百合したいだけなのに、無慈悲な異世界が私の心を折りにくる。』のifルートですが、そちらを読んでいなくても問題は無いはずです。パラレル設定なので、今作ではTS転生はしていません。

 諸君、私は百合が好きだ。

 諸君、私は百合が大好きだ──(以下略)。

 大事なことなので2回言いました。


 そんな訳で、百合については、語りたいことは山ほどある。

 72時間は語り続けられる自信があるほどに

 だけど今はやめておこう。

 何故か二度手間であるような気がするので。

 

 ともかく百合が好きだという人間だということだけ、知っておいてもらえればいい。

 そして私は、現世で百合のすべてを堪能できたとはいえず、未練を残して死を迎えようとしていた。


 だから異世界へ転生して、百合百合するのが私の望みだ。

 人間は勿論、エルフとか、ケモ耳獣人娘とか、悪魔っ()とか、人外の百合にも出会いたい。


 そんな強い想いを抱えてこの世を去ったおかげか、私は転生する機会を得ることができた。

 それまで眠っているかのように朧気(おぼろげ)だった意識が明確になった時、私は何も無い空間にいた。

 周囲は真っ白で、まるで霧に包まれているかのような錯覚に(おちい)るが、視界に(うつ)る範囲には何の物体も存在しないから、そう感じるだけなのかもしれない。


 おそらく無限に広がっているその空間には、何も存在していない──現実には決して有り得ない光景だった。

 下手をすれば、宇宙空間の方がまだ物があるだろう。

 たとえば隕石とか。


 ただ、何も無い空間にも、1つだけ例外があった。

 私の目の前に、女性の姿があったのだ。

 しかし、脳が認識することを拒否しているのか、なぜかその姿の細部は、見たそばから記憶が薄れていく。

 でも、不思議と(なつ)かしさも感じる。

 

 これは漫画などでもよく見る、「認識阻害」の魔法なのかな?

 それとも、視覚に含まれる情報量が多すぎて、脳が処理しきれないのだろうか。

 

 アレっ? 

 今の私って、脳どころか肉体そのものが無いのでは?

 自分の身体(からだ)を見ようとしても、まったくできないし……。

 じゃあ、どうやって見たり考えたりしているのだろう?


 今まで肉体の機能に依存していると思っていた思考や五感は、実は魂で行われていた……?

 なるほど、よく分からん。

 分からないことだらけだ。


 それでも、このシチュエーションには心当たりがある。

 web小説や、それらが原作のアニメのお約束だ。

 おそらく彼女は女神か何かで、私の魂がこれからどうなるのか、その説明してくれる案内人の役割を持っているのだろう。


「あなたは……ア●ア様?」


「誰が駄女神よっ!?」


 私のボケに、しっかりとツッコんでくれるとは、いい人だ……。

 でも、何故(なぜ)あのキャラを知っているのか……。

 まさか本当に、全知の存在だとでもいうのだろうか?

 そんな私の心を見透かしたかのように、女神は一瞬ドヤ顔をしたような気がした。


「迷える魂よ、私はあなたを導く為に降臨せし女神です。

 あなたはこれから、天国で暫し魂を休めるか、それとも転生するか、その選択をしてもらいます」


 よし来たっ!

 これは私が生前から待ちに待った展開だ。


「それはっ、異世界転生ですかっ!?」


「ええ、転生は基本的に異世界になります」


「へぇ……元の世界に転生することは無いのですか?」


「はい。

 野菜だって、同じ畑で育てていたら、連作障害を起こすでしょ?

 それと同じようなものです」


「お……おう……」


 この女神、人の魂を野菜と同列に語ったぞ。

 え……つまりそういうことなの?

 いつか収穫されちゃうの、私達の魂は?


 まあ、輪廻転生自体が廃品のリサイクルみたいな物だし、私達の命もなんらかのエネルギーとして運用されている印象はあるな……。 

 そんなことを考えていると、女神は、


「うふふふふ……」


 妙に迫力のある笑顔を作った。

 あ、これ深入りしたらあかんやつだ。

 そして、やっぱり心も読まれている……。


 ここは話を進めた方が良さそうだ。


「あの……その異世界って、剣と魔法の世界なんですか?」


「まあ、そうですね」


 よし、これなら無双が出来る可能性もあるな。

 だが、特殊な能力の付与──いわゆる転生特典があるかどうかでも、状況は大きく変わってくる。

 いや、そもそも──。


「人格の……記憶の持ち越しはできるのでしょうか?」


「普通は前世をすべて忘れますが、忘れまいと強く念じていれば、前世の記憶を残すことは可能です。

 まあ、あなたの精神力でそれが可能なのかどうかは、別の話ですがね」


 うむぅ……そんな簡単な話ではないようだ。


「あと、あなたのように、前世で世界に対してそれなりに貢献した魂には、転生特典はありますが、どんな能力(スキル)が付与されるのかはランダムですよ。

 あなたにとって、ハズレだと感じる物が付与される場合もありますが、それを活かすも殺すもあなた次第です」


 う~ん……なかなか都合良くはいかないか。

 でも、前世の功績は認められたんだ。

 来世でいいことがあるように、とにかく徳を積んだからね。

 今度も(・・・)女の子に転生して、百合百合できるなら、それだけでもいい。


「あの……私は転生を選びます。

 それで、1つだけお願いがあるのですが……」


「ああ、ハイハイ。

 チート能力が欲しいとか、私も一緒に来て欲しいとか言うのなら却下ですけど、性別を選択するくらいならばいいですよ。

 女の子になりたいのですね?」


「ハイ、ありがとうございますっ!」


 思ったよりもいい女神で助かった。

 あとは、なんとか記憶を保持して転生できれば……!

 私は強く、記憶が残るように祈る。


「それでは、転生を始めます。

 私はいつもあなたの新たな(せい)を見守っていますから……。

 精々(たの)しませてくださいね?」


 え……?

 なんか不穏なことを言わなかったか、この女神?

 しかし私は、急速に何処かへ流されるような感覚を抱いて、それどころではなくなった。

 たぶん、異世界への移動が始まったのだ


「う、わあああーっ!?」


 暗い穴の中に吸い込まれていくような感覚──。

 その激しい流れの中で、私は自己がバラバラにならないように耐えるだけで精一杯だった。



 ……あとにして思うと、あの女神は邪神か何かなのではないかと思う。

 あるいは、神という存在はみんな意地が悪いのかもしれないが、こんな仕打ちはあんまりだ……。


 そう、転生した私は、キツネのような動物になっていた。

 勿論、()でした……。

 拙作の『百合転生~この『百合』というギフト、世界の半分を支配できるよね?』がもうすぐ完結します。そちらもよろしくお願いします。


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