お菓子のような人
姉は甘いお菓子のような人だ。優しくて、美人で、肉感があり、一度嵌れば中毒になる。また、もう一度会って話がしたい。男性にそう思わせる魅力のある人。
そしてそれは、私の婚約者も同じだった。
今日は私の誕生日。私を祝うために駆けつけたはずの彼は、しかし私へのお祝いもそこそこに姉の姿を目で追っていた。
姉はその視線に気付くと、甘い表情で笑った。彼はそんな姉に心奪われる。しかし姉は、その後自分の婚約者の腕に抱きついた。
「私にはこの人がいますので」
そんな声が聞こえて来そうな態度だった。私の婚約者は、心底悔しそうだった。
「何故俺の婚約者は姉の方ではなく妹の方なのか」
そんな心無い言葉が聞こえて来そうなその表情。
ああ、どうして私は姉のように人を蕩かす魔性がないのか。
甘いお菓子のような姉にはなれない。わかっていても悔しくて仕方がない。どうして私は姉ではないのか。どうして姉のようになれないのか。
悩んで悩んで、私は吹っ切れた。私は、誕生日である今日、生まれ変わる。
私は小食だったが、無理をしてご飯をたくさん食べるようにした。それこそ、食べ過ぎなくらいに。
私は運動音痴だったが、トレーニングを毎日欠かさないようにした。多少の無理をして、身体に負荷を掛ける。
私は普通の性格だったが、常に人に優しくし微笑みを絶やさないようにした。正直ストレスが尋常じゃないけれど、頑張った。
スタイルや性格は頑張ればなんとかなるが、顔立ちは整形が必要だ。私は両親に許可を得て魔法使いに魔法をかけてもらい、整形した。魔法が馴染むまでの半年間は引きこもり生活となったが、運動は欠かさずきちんと食事も食べた。結果、半年後には私は「二人目の姉」になっていた。
婚約者に会う。だが、婚約者の反応は思っていたものではなかった。
「俺は君をそんなにも傷付けていたのか…?」
彼は私に言った。
「確かに俺は君の姉を愛してしまっていた。けれどそれでも、この想いは捨てようと、君を愛していこうと、そう思っていたんだ…ごめん、待たせてごめん、ここまでさせてごめん…」
ああ、お菓子のような人は姉ではなくこの人かもしれない。私から簡単に諦めの感情を奪い去る。
「魔法は、今なら解除出来ます」
「本当か!?」
「…本当にいいんですか?」
「もちろんだ!」
私が魔法を解除すると、婚約者に抱きしめられた。ああ、やっぱりこの人は甘いお菓子だ…。




