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第七話 ゴブリン

第七話 ゴブリン


サイド クロノ


 ザックと戦って三日が経った。あれから装備を整えたことで、だいぶ冒険者っぽくなった気がする。

 腰には研いでもらった元々の剣と、反対側に新しく買った予備の剣。腰の後ろにも元のも合わせて二本挿してある。

 上下ともに厚手だが動きやすい恰好にし、足元はサイズの合った革製のごついブーツ。胸元には革製の胸当てをつけている。同じ素材で頭には鉢がねがわりに革で補強されたハチマキだ。

 そして火を使うので街の外で新しく石鹸を作った。今度のは植物性の油だからいい匂いだ。だいぶ精神安定上よくなった。

 教会の場所も把握して毎日お祈りに行っている。少ないが、お布施もした。これで何かいいことがあればいいのだが。特に仕事関係。

 まだ宿暮らしする余裕はあるが、金がなくなってから働くのは色々よくない。というわけで仕事を探しに冒険者ギルドにやってきた。

 扉をくぐりギルドの中を見渡すと、前にいた場所にザックがいた。だが、様子はだいぶ違う。

 頭には包帯を巻き、左目には青あざがある。たぶん、服の下も傷だらけだろう。村にいた頃の経験でわかる。

 その姿に申し訳なく思うが、ここで自分が何かすれば彼の立場は余計に悪くなるだろう。歯がゆいが、どうすることもできない。

 というか店主がどうにかしろよ。原因は僕もだけど半分以上あいつだろう。

 その店主を探しながら奥に進んでいくと、ギルドの扉が勢いよく開けられて音が響きわたった。

 振り返ると、十五歳前後の少年が息を切らしながら立っていた。


「助けてくれ!村にゴブリンが攻めてきそうなんだ!」


 少年の叫びに、一気にギルド中が騒がしくなる。


「おい、ゴブリンだってよ」

「終わったなその村」

「お前行けよ。昔ゴブリンと一騎打ちしたって言ってたろ」


 なんか、冒険者たちの反応からしてゴブリンは自分のイメージするものとは違いそうだ。

 創作に出てくるゴブリンといえば大きく分けて二種類。片方は頭が悪く身体能力も低い小鬼。物語序盤に出てくる雑魚。

 もう片方は小鬼で身体能力が低いのは同じだが、狡猾で罠や作戦を用いて人間を苦しめる凶悪な魔物だ。

 この反応からして、後者なのだろうか。それにしても反応が少しおかしい気がする。


「ゴブリンの討伐なら代官のところに行きな」


 店の奥からやってきた店主がそう言い放つが、少年は唇をかんでうつむく。


「行ったさ。けど、情報の確認のため時間がかかるって、兵隊を動かすまで一カ月はかかるって……!」


 一カ月は長すぎでは?結構な部隊で動くのだろうか。そう考えるとゴブリンの危険度ってやばい?


「だろうな」

「だから、冒険者に頼むんだろ!?頼むよ!俺の村を救ってくれ!金なら、村中から集めれば金貨三枚はある!お願いだ!」


 少年が深く頭を下げる。だが、誰も声を上げたりしない。むしろ冷ややかな目で少年の後頭部を見下ろしている。

 自分は、どうすべきだろうか。チート能力なんてもの、こういう時に使うものなのかもしれない。

 いや、だが一番大事なのは自分の命だ。それを捨ててまで誰かのために戦うのはいやだ。二度と死にたくない。

 助けるか、傍観するか。その二択で迷っていると、声をあげる者がいた。ザックだ。


「おいおいお前ら、薄情じゃねえか!?こんな必死に若者が村の為に頭を下げているってのによぉ!?」


 大仰に手を広げながら歩いてくるザック。あれ、何故か少年じゃなくてこっちに来てない?


「なあそう思うだろう?クロノよぉ」


 やりやがったなこいつ………!?

 少年含めギルド中の視線が集まる。やばい、早く何か言わなければ。


「いや、その」

「ここにいるのは!なんとレッサードラゴニュート十二体をたった一人で倒した勇者だ!こいつならゴブリン退治もできるんじゃぁないかぁ!?」


 こちらの言葉をさえぎって大声で周りに聞かせる。まずい。


「そ、そうだな、それが本当だってんなら」

「いいんじゃねえの?」

「そのガキ見捨てるのはかわいそうだよなぁ?」


 完全に見世物になっている。こいつらは少年の村なんてどうでもいいが、こちらに仕事を押し付けるために味方するつもりだ。

 なんでここまで他の冒険者に嫌われている?いくらなんでも面白半分でここまで一致団結しないはずだ。

 そこで気づく。ラプトルを倒し、ザックに皆の前で勝利した自分は有望株として見られているのかもしれない。

 なら、選択は三つ。様子をみるか、取り入るか、蹴落とすか。

 取り入るはこちらの見た目的にない。彼らにもプライドがあるだろう。なら残りは二つ。どちらにしても、ここでゴブリンの依頼を受けさせるのは都合がいいと判断したのだ。

 この流れをどうしたものかと視線をさまよわせると、少年と目が合った。

 不安そうな、疑うような、それでいて希望を見出して縋りつきたいような、そんな目でこちらを見てくる。

 ここは、覚悟を決めなければならないかもしれない。

 子供は村の生活で苦手になってしまったが、それでも自分は前世も合わせればいい年したおっさんだ。なら、ここまで困っている子供を助けるため何かしてやりたい。

 幸い自分には力がある。なら、それを使うべきだ。


「わかりました。金貨三枚でその依頼を受けます」

「ほ、本当か!?」

「はい。こうなりゃやけです」


 喜ぶ少年はいいとして、周りではやし立てる酔っ払いどもはいつか泣かす。ザックに関してはこれで勝ってしまったのはチャラにしてもらおう。


「依頼っていうなら仲介料を払ってきな」

「えっ」


 店主が口をはさんでくる、おっさんなにもしていないじゃん。いやまあ場所は貸してくれたことになるのか?

 これには当然の様に周りは口をはさまない。自分もだ。ギルドを敵に回したくはない。少年はその様子を見てカウンターに金を払いに行く。


「銅貨一枚だ」

「あ、ああ」


 少年から金を受け取ると、割符が投げてよこされる。それを少年はギリギリ受け止めた。


「えっと、じゃあ行きましょうか」

「あ、ああ」


 なんとなくやるせない雰囲気のまま、二人でギルドを出た。


*    *     *


「ほ、本当に走っていくのか?」

「はい。この方が速く着くでしょう」


 馬にまたがった少年に頷く。あまり速そうな馬じゃないし、二人載せるより一人の方が速く走れるはずだ。


「わ、わかった。ついてきてくれ」

「ペース配分は守ったうえで全力を出してください。そもそもそれに追いつけないようでは一人でレッサードラゴニュートの巣をつぶすなんてできません」

「………!あ、ああ!」


 こちらの言葉に安心したように、少年は馬を走らせる。

 ………速いには速いけど、やっぱり前世テレビでみた馬よりだいぶ遅いな。これならバフを使わなくても『魔力循環』だけでついていけそうだ。

 馬の斜め後ろを走る。少しして少年が不安そうに振り返ってきたので、声をかけておく。


「大丈夫です。ちゃんとついていけてますよ!」

「お、おお!すげえ!」


 大き目に声をはりあげればさすがに聞こえたのか、少年は歓喜の声を上げる。これで村を救えるとか思ったのだろう。

 はたして、救えるならいいのだが………。


*    *     *


 馬をとばして半日以上、途中休憩をはさんだが、夕暮れにはどうにかついた。

 だが、間に合ったとはいえないかもしれない。


「お、俺の村が!」


 見えてきた村からは煙があがっていた。遠目にはよくわからないが、何かが暴れている様子が複数見える。

 そこで、『危機察知』が反応した。


「止まってください!」


 馬の前に走り出て強引に止めさせる。


「な、なんだよ!村が!」

「何か来ます」


 近くの林から何か来る。『魔力感知』の感じから魔獣だろう。微弱だが『魔力循環』を使っているのがわかる。

 動きが速い。むこうもこちらを認識しているのだろう。


「『筋力増強』『精密稼働』『武器強化』『魔力装甲』」


 バフを盛りながら剣を構える。

 林から出てきたのは、一体の魔獣。だが獣というには人型に近い。

 緑色の肌。大きくねじれた鼻。黄色くぎょろぎょろとした目。身に着けているのは粗末な腰みののみ。右手に棍棒を握っている。

 ここまでは自分の想像するゴブリンに一致する。しかしだ。


「ギャギィィィ……!」


 低いうなり声。厚い胸板に広い肩幅。筋骨隆々の肉体は二メートルを超えている。手に持つ棍棒も人の太ももほどもある。

 違くない?これゴブリンと違くない?


「ご、ゴブリンだ!?」

「あ、これゴブリンなんですね」


 マジでこれがゴブリンなのか。そりゃこんなのが『魔力循環』使いながら集団で襲ってきたら冒険者のリアクションもそうなるわと。


「ギィィィイイイイイ!」


 ゴブリンが馬に乗っているからだろう、先に少年の方を狙って棍棒を振りかぶって近づいてくる。

 それを阻止するため、魔力を放出して注意をひく。


「ギイ!?」


 ゴブリンが驚いてこちらを振り向く。そこに剣を構えて飛び込んだ。

 振るわれた棍棒の下をくぐるようによけ、脛を切りつける。思ったより硬い。骨までは届いていないだろう。

 それでも怯ませることには成功した。一歩下がったところに、太ももへ一線。バランスを崩して尻もちをついた。

 すかさず胸を踏みつけ剣を振りかぶる。当然反撃のため棍棒を振るおうとしたが、それはもう片方の足で肘を蹴りつけておさえ、瞬時に首へ剣を突き立てる。

 貫通したはずだが、ゴブリンは左手でこちらを掴んで来ようとしてきた。咄嗟に剣を引き抜きながら跳びすさる。

 ゴブリンは数秒痙攣した後、動かなくなった。魔力の流れからして、おそらく死んだのだろう。


「し、死んだのか?」

「ええ」


 少年に短く返しながら考える。はたしてこの依頼、達成できるか。


「す、すげえ!あんなあっさりゴブリンを倒せるなんて!」

「すみません、ちなみにゴブリンって何体ぐらいいるんですか?」


 喜ぶ少年に質問すると、戸惑った様子で答える。


「え、えっと二十から三十ぐらい?」

「……そうですか」


 最初に聞いておくべきだった。

 今のやつが三十いるとして、武器をもっている。そして武器を使うという事はある程度知能もある。ならラプトルみたいに役割を決めて作戦があって行動している可能性もある。

 となると、今倒した奴は周囲の巡回?敵勢力の援軍がないか探っていた?

 考えれば考えるほど、厄介な魔獣な気がする。正直依頼を受けたのは早計だったかもしれない。

 だが、今まさに村は襲われていて、依頼は既に受けてしまった後だ。

 ため息をついて、不安そうにこちらをみる少年に荷物を投げわたす。


「それをもってこの辺に隠れて……いや、もう少し距離をとって隠れていてください」

「あ、あんたは」

「無論、ゴブリンの討伐に」


 言うが早いか、村に向かって駆け出した。


*    *     *


 村は酷いありさまだ。家は壊され、人や家畜の死体は一か所に集められている。だがまだ生存者はいるのだろう。

 中央にある教会。その周囲にゴブリン達が集まっている。他の建物より頑丈そうな作りになっているおかげで今は突破されていないが、ぱっと見でも時間の問題だろう。

 大半のゴブリンが意識を教会に向けている。そこに『気配遮断』をしながら全力で接近する。

 背後からゴブリンのふくらはぎに切りかかる。


「ギェッ!?」


 悲鳴を上げて最初の一体が転倒している間に、二体、三体と切りつける。計五体のゴブリンの足を切ったところで、『危機察知』が反応する。

 咄嗟に地面にむかって跳び込み前転する。回る視界の中、家の屋根に上ったゴブリン達が弓矢を構えるのが見えた。

 起き上がる暇もない。そのまま前転を左右に繰り返し、三回目あたりで家の影に隠れる。

 かなりの強弓を使っているのだろ。土や木でできた家の壁が簡単に削れる。その時、また『危機察知』が反応した。さらに『魔力感知』で家の中にゴブリンがいるのを察知する。

 ゴブリンが家の壁を木製の分厚い盾でぶち抜き、右手に持った棍棒を振りかぶる。だが、壁を突き破ってくるのは読めていた。

 突進にあわせて剣の柄頭で盾を横に押しやりながら、左手で引き抜いたナイフを首にねじ込む。


「がひゅっ」


 喉から空気をもらしながらも、ゴブリンは棍棒を手放してこちらの肩を掴んできた。


「くそっ」


 ナイフを引き抜き、肘鉄でゴブリンの腕を振り払う。そこに『危機察知』が反応し本能のままナイフをかざすと、ナイフに矢がぶつかった。いつのまにか地面に降りていた弓持ちがいたのだ。

 すぐにゴブリンの死体を盾にしながら、さっき空いた穴から家の中に飛び込む。

 次の手を考えている間に、『危機察知』がまた反応。咄嗟に床に伏せる。

 次の瞬間壁を貫通して矢が何本も飛んできたのだ。それも一度ではない、二秒に一本のペースで六本ぐらい同時に来る。

 床に伏せながら、冷や汗をかく。これはちょっとまずいかもしれない。

 だが、自分にはチートがある。


「『空間把握』を獲得、『魔力循環』と『強化魔法』の熟練度上昇……!」


 スキルポイントをこの場で全て割り振る。一気に体が軽くなり、ゴブリン達の場所が『魔力感知』も相まって正確に把握できる。

 僕自身はただの転生者。正直前世の知識を含めても凡人の領域をでない。だがしかし。


「僕のチート具合をなめるなよ……!」


 撃ち込まれた矢を回収し始める。


*    *     *


 自分がこの家に逃げこんで一分ほど。撃ち込まれ続けた矢のせいでいつ倒壊してもおかしくない。

 ゴブリン達は矢を撃つのをやめ、盾持ちを中心に距離を詰め始める。地上に十五、屋根の上に六、教会の前に二。教会の奴ら以外こちらに敵意を向けている。

 深呼吸を一つ。次の瞬間、足に魔力を込めて一気に跳びあがる。

 屋根を突き破って空へ。動揺しながらも、弓持ちが矢を構える。それよりも早く、『空間把握』で狙いを定め、腕を振るう。

 片手に三本ずつ握られたのは、へし折った矢の先端。勢いよく飛んだそれらが、寸分たがわず弓持ち達の目を抉る。


「ギィイイイイイ!?」


 悲鳴と共に弓持ち達が矢から手を放つ。放たれた矢は当然明後日の方向に飛んでいく。

 矢と弓持ちは無視して、ナイフを片手に構える。落下先に、ゴブリンが棍棒を構えている。空中では躱せない。そう思っているのだろう。

 甘い。


「ギェェェェエエエエ!」


 振るわれた棍棒を『軽業』と強化された身体能力で体をひねって躱す。そのまま頭に組み付き、ナイフで眼球から脳を抉る。

 死に際に掴んで来ようとする手を避けて、近くのゴブリンへと跳ぶ。そいつは盾を構えて防御姿勢に入ったので、そのまま盾を蹴って別の個体へ。

 自分に来るとは予想していなかっただろうゴブリンは、咄嗟の判断が遅れる。そこへ。空中でナイフを投擲。根元まで突き刺さり即死させる。

 地面に着地したところで、『危機察知』に反応。剣を抜きながら走り出す。

 視線の先には、最初に足を切りつけた五体のゴブリン。そいつらが片足を引きずりながらここまでやってきて、棍棒を投擲しようと構えていた。

 こちらが切りかかるより向こうが投げる方が速い。だが、あいにく的が小さくて狙いづらいだろう。

 放たれる棍棒。並の人間なら頭蓋を粉砕される一撃が五本。だが、当たるコースなのは一本だけ。

 顔の前で両手を交差させて飛び込む。左肩に当たって『魔力装甲』が弾けるが、無視する。

 石やその辺の廃材を拾って次を投げる暇は与えない。接近戦に持ち込んで左端の一体に剣を突き刺す。鳩尾から心臓へと穿ち、命を絶つ。

 すぐさま右手でナイフを引き抜きながら投擲、一体を仕留める。そうしながら右腰の剣を左手でぬく。

 倒れ行く死体を足場にして切りかかり、三体目と四体目の首を空中で切り裂く。即死はしないだろうが、致命傷だ。

 最後の五体目。こいつは怯えたように後ずさる。好機だ。剣を右手に持ち替え、左右にフェイントを入れながら距離を詰める。

 振り回される腕を潜り抜け、一瞬で背後に回り膝裏を蹴り飛ばす。そのまま片膝をついたところに背中から剣を突き刺し、心臓を抉る。

 剣を軽く回しながら引き抜く。返り血を浴びながら、他のゴブリンの確認をする。

 どうやら、自分が投擲してきたゴブリンに切りかかったあたりで、他の個体は彼らを囮に逃げ出したらしい。

 肉眼で周囲を確認しながら、『魔力感知』と『空間把握』を併用してゴブリンを探る。どうやら村から撤退したらしい。

 地上にいたゴブリン十五はこの投擲してきたゴブリンも含めてだった。となれば、打ち取ったゴブリンが村の外を巡回していた奴も含めて九体。逃げたのは十四体。

 半分には届かないがそれでもだいぶ倒した。残りの十四体も六体は片目を失っている。勝利、と言っていいのだろうか。

 教会のほうから村人たちが出てくる。


「みんな!」


 ギルドに依頼に来た少年が馬と一緒にやってくる。


「隠れていてくださいと言ったはずですが」

「ゴブリンどもが逃げていくのが見えたんだ!すげえよあんた!」


 少年が馬から降りる。それに老人が話しかける、村長だろうか。


「に、ニック。これはいったい」

「村長、兵士は来てくれるまでに一カ月はかかるって言われたんだ!だから、この冒険者に頼んだんだ!」


 興奮した様子で少年がこちらを指さす。とりあえず軽く会釈する。


「初めまして、冒険者のクロノと申します」

「こ、これはどうも……」


 村人たちは困惑した様子だ。まあ、村を壊滅寸前までおいやったゴブリン達を子供一人が蹴散らしたってなったら理解に苦しむだろう。

 だが、それよりも聞かないといけないことがある。


「村長、すみませんが僕はゴブリンという魔獣の事をよく知りません。なのでお聞きしたいことがあります」

「え、は、はい」

「ゴブリンは『報復』を考えますか?」


 村長をはじめ聞いていた村人たちが息をのむ。


「そ、それは………昔聞いた話で、軍に追いやられたゴブリンの生き残りが、部隊の最後尾を追いかけ、夜襲をしてきたというのが……」

「そうですか………」


 なら、今回のゴブリン達も報復に来る可能性がある。対象は、僕のみか、それとも村そのものをか。

 村長たちもその可能性に行きついたのだろう。先ほどまでの困惑しながらもホッとしていた空気から一転、今は重苦しいものになっている。

 ため息をつきながら、刺したままにしていた剣やナイフを回収していく。


「ゴブリンが逃げていくのを見たとのことですが、どっちに行ったか教えてもらえますか?」

「え、な、なんで」

「無論、追撃します」


 報復なんて冗談じゃない。こちらが有利なうちに片をつけさせてもらおう。





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[一言] 7話まで読みました。 幼児から子供まで何年も虐待を受けた主人公が、まるで善良な日本人の性格と行動をする、その事に違和感があり過ぎて読めなくなりました。
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