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第二十一話 マルヴォルンのギルド

第二十一話 マルヴォルンのギルド


サイド クロノ



 な ん だ こ れ は ! ?


 綺麗に掃除された酒場。その奥にあるカウンター。その右側の壁には依頼らしきものが『紙』で貼りだされた掲示板。


 カウンターにいるのはきちんとした身なりの女性たち。いや本当になにここ?


「わー、噂で聞いてた通りの場所だね!」


「うん、想像していた通りだ!」


 想像していたのと違う。


 え、なに、アルパスの街がおかしいの?冒険者ギルドのスタンダードってこれなの?いや絶対こっちがおかしいんだって。


 混乱しながらも、それは表には出さずに『登録用』と書かれたカウンターに向かう。


「おい、見ろよあれ」


「すっげえ美人」


「三人とも上玉じゃねえか」


「ああ、特に黒髪のがそそる」


「お前幼女趣味かよ!?」


 そんな声が聞こえてくる。もうこの容姿に関しては改善より利用する方法を考えた方がいいのだろうか。


「いらっしゃいませ。本日は新規登録でよろしいでしょうか」


「はい!よろしくお願いします」


 ライカが元気よく答える。


「では、ここにお名前と出身、あと特技を書いて頂きます。代筆は必要ですか?」


「私とこの子は大丈夫です。クロノちゃんは……」


「僕も問題ありません」


「では、ご記入をお願いします」


 特技か……魔法でバフ盛って殴る。はダメだろうし、薬草の知識があるのとスルネイス先生の『ヴォールデン・アーツ』を記入する。


「ありがとうございます。ライカ様、アイリ様、クロノ様で……っ!?」


 自分のところで受付嬢が目を丸くする。


「あの、『ヴォールデン・アーツ』についてなんですが、何か卒業を証明する物はありますか?」


「これでいいでしょうか?」


 卒業時に貰ったバッジと、スルネイス先生の紹介状を差し出す。


「拝見します……本物ですね」


 受付嬢の顔が少し引きつっている。


 もしかして自分が思っていた以上にあの道場は凄い所なのだろうか。


「もしかして、姓をお持ちだったり……」


「姓……ああ、家名ですか。いいえ、僕はそういうの持っていません」


「そ、そうですか!」


 露骨にホッとした顔になる。あれか、道場が凄いというよりかは、金持ちの子供が通っているから実家がやばい可能性を考えていたのか。


「では、三人とも登録させていただきます。登録料はお一人につき鉄貨二枚となります」


「はい」


 それぞれ鉄貨を支払い、受付嬢がそれを受け取って『少々お待ちください』と言って奥に入っていく。


「わくわくするね」


「うん。私たち冒険者になるんだね」


 二人の会話を聞きながら、ギルドの中を見回す。


 冒険者一人一人の質はアルパスとどっこいどっこいだろう。だが、装備がこちらの方が整っている。


 なんというか、前世のアニメで見た冒険者ギルドそのままだ。一体どうしてここまでアルパスと差がついているのか。


 金周りの良さか?それにしてもおかしいだろう。冒険者は本来そこまで儲かる業種じゃない。自分みたいに魔獣を狩って荒稼ぎするのなら別だが。


「お待たせしました。こちらが冒険者プレートになります」


「おお!」


「これが……」


 プレート、というかドッグタグを受け取る。見た目はアルパスの街で発行された物と違いはない。強いていうなら字が綺麗な所か。


「冒険者のランクは鉄が一級から三級で、一級の方が上です。同じように上に行くにつれ銅、銀、金と変わっていきます。通常、銅になれれば一流とされています」


「あの、自分はダンブルグ王国で冒険者をやっていたのですが、その頃の実績は関係しますか?」


 一応ダンブルグ王国ではもうすぐ鉄の二級だった。とりあえずダメもとで聞いてみよう。案の定、受付嬢は申し訳なさそうな顔で首を横に振る。


「申し訳ありません。この冒険者プレートはあくまで国内のみ有効な物でして、外国での実績は考慮されません」


「そうですか。ありがとうございます」


「クロノちゃん、外国で冒険者だったんだ……」


「もしかして、先輩……?」


「いいえ、この方も仰っていた通り、国内の実績が物をいいます。自分も初心者ですよ」


 などと謙虚そうに振る舞っているが、そもそも冒険者としての活動は一年もやっていないのでルーキーなのは本当である。


 だが二人は尊敬の目で見てくる。ちょっと気持ちいい。


「では、ギルドの説明をさせて頂きます」


「はい!」


 相変わらずライカの元気がいい。どんだけ冒険者になれたのが嬉しいのだ。


「あちらにある掲示板に依頼が貼られていますので、依頼を受ける場合は剥がしてここの二つ隣にある受注カウンターにお持ちください」


「はい!」


「依頼を受ける際には預り金が発生する場合があるので、ご注意ください」


「預り金?」


 冒険者ギルドでは聞きなれない単語だ。


「はい。依頼によっては期間以内に達成できなかった場合。もしくは達成条件をクリアできないと判断された場合、依頼の失敗とみなして預り金は没収となります。もちろん、達成されればお返しします」


「へー……」


 そんな制度があるのか。やはりアルパスのギルドとは根本から違う。


「そして、依頼を達成できた場合は更にその隣の報告カウンターをお伺いください。依頼主には割符をわたしてあるので、それを持ってきて頂ければ達成となります」


 そこは変わらないのか。まあ、この世界だとハンコとか普及していないし、割符が妥当なのか。


「以上が基本的なギルドの説明となっております。ここまではよろしいでしょうか?」


「はい!」


「大丈夫です」


「はい」


 それぞれ答えると、受付嬢は頷いて話を続ける。


「依頼を受注する場合、ランクによっては受注する事が出来ない場合があります。基本的に制限はないのですが、中には『銅三級以上』などの条件がある依頼もございます」


「なるほど」


 確かにそれなら無謀な依頼で新人が死ぬリスクは減る。まあ、その条件を決めているのが誰かによって結構変わるが。


「また、ギルドでは有料になりますが初心者研修も存在します。月に一度行われますので、良ければ参加してください」


「初心者研修?」


 え、うそ、そんなのまであるのこのギルド。逆に怪しくなってきた。


「あの、ちょっといいですか?」


「はい、なんでしょう」


「なんでそこまで冒険者に親切なんでしょうか。自分がいたアルパス、ダンブルグ王国のギルドとはだいぶ違うようなのですが……」


「ダンブルグ王国ですか……」


 受付嬢は少し困った顔をした後、周囲を見回してから小声で話してくる。


「あの国は、その、冒険者になる以外食べていく手段がない人が多いので、登録する人が多いんです。ただ、それにかまけて入った人をそのまま無茶な依頼に当たらせて数でどうにかするという形といいますか……」


 かなり言いづらそうだ。


 まあつまり、あの国では冒険者なんてたくさんいるから使い捨てでいいという考えなのだろう。


「逆に、我が国では冒険者になるよりどこかに弟子入りするか働きにでるかという人が多いので、明日の食事に困るような人は依頼を任せるにはその……ただそういう人こそ盗賊になったりするのですが……」


 対して、この国は豊かな分冒険者になるより普通に働く人が多いと。


 そして本当に食い詰めている奴は依頼を任せても失敗するか問題を起こすのでギルドとしては契約したくない。で、そういう奴ほど盗賊になると。盗賊が増えれば兵士や冒険者の仕事が増える。


 ちょっと読めてきた。この国、冒険者が不足しているから質で補おうとしているのだ。正直冒険者視点だとこっちの方がありがたい。食い詰め者にはつらいだろうが。


 ん?そうするともしかして二人が聞いた吟遊詩人の語るサーガって、ギルドが流している可能性も……。


「そういうわけで、盗賊も害獣も兵士だけでは対処しきれないので、国からの補助金もあり、現在の体制になった次第です」


「なるほど。ありがとうございました」


「いえいえ」


 この国にもこの国なりの事情があったという事か。まあ、まったく理解できないよりはスッキリするので教えてもらえてよかった。


「クロノちゃん、話し終わった?」


 うずうずした様子で二人が待っていた。この人達はさっきの話を聞いていなかったらしい。まあ、受付嬢がこそこそ話って感じにしたから聞かないようにしたのだろうが。


「他に、ご質問はありますか?」


「ないです!」


「大丈夫です!」


「僕もありません」


「では、よき冒険をお送りください」


 礼を言って受付を後にし、三人で話し合う。


「そういえばさ、せっかくだしこの三人でパーティー組まない?」


「パーティーですか……」


 ライカの誘いに、少し迷う。


 本音を言えばむしろこちらからお願いしたい。だって巨乳美少女二人組だ。


 だが、パーティーを組むと自分が魔法を使う事を知られてしまう。それは少し面倒かもしれない。道場の皆にも隠していたのだ。


「やっぱり、ダメだよね……」


「クロノちゃん、強いんもんね」


 二人が肩をすくめる。おっぱいが揺れた。それを見て決心がついた。


「いえ、むしろこちらこそよろしくお願いします」


 正直色事に対して弱すぎると自分でも思う。けど考えて欲しい。童貞に禁欲生活十年以上させて目の前に巨乳美少女二人組を出されて正常な判断ができる奴がいるだろうか。いやいない。


 もしいたらそいつは特殊な性癖をもっているに違いない。熟女好きとか。


「本当!?」


「はい。死ぬ時も生きる時も一緒にいましょう」


「おお、なんかサーガに出てくるセリフっぽい!」


 口を滑らせた言葉にライカとアイリがテンションを上げている。たしかにちょっとだけ三国志の桃源の誓いっぽい。まあ三国志ってエロゲの知識しかないが。


「早速依頼受けちゃう?伝説作っちゃう?」


「も、もおライカ。今日はゆっくりして明日の準備をした方がいいよ」


「とか言ってぇ、アイリちゃんも依頼受けたいくせにぃ」


「そ、そんな事ないよ?」


 じゃれあう二人に癒されるが、放ってもおけない。


「ライカさん、ここはアイリさんの言う通り今日は休んだ方がいい。街の外は出来るだけ万全の状態でないと危険です」


「う、それもそうか……」


「サーガでも油断した冒険者が熊に倒されちゃう事あるしね……」


 二人も分かってくれたらしい。


 そんなこんなで、ギルドを出て近くの宿屋に向かった、



*    *     *



「あ、パーティー組んだんだし、節約のために同じ部屋でいいよね」


「lkjhgfどいうytr!?」





読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >もしいたらそいつは特殊な性癖をもっているに違いない そうだね。熟女とかモン娘とかショタとかね。 まだ腕も見識もない美少女二人組って、むしろここでパーティ組まないとそのうちひどい目に会いそ…
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