第十七話 もう一つの姿
こころは背中を打った勢いで視界がぼやけて見える。
リユウは目を強く瞑り痛がっていた。
「いたたたた……」
「リユウ大丈夫か?」
「うん、なんとか……」
ユウギは未だ放心状態。
こころは目に映る女性に声をかけた。
「こ、ころ。なぜ名前を?」
「ずっと待っていました。っあ!ちょっと待ってください。重力が逆さまになったままでした。《ウェルイムス!》」
すると天上だと思っていた壁が地面へと感覚が戻る。
「え!?部屋の床だったのか……」
「はい!床です。そしてよくここまで辿り着きましたね。ココロちゃんがメティちゃんに頼まれて目指したここが!インキュバンシタンボルグ・アルウェルク・レアリナ城私、レアリナのお部屋です!」
こころが安心したようにため息をつき、立ち始める。
「やっと着いたのか……。っというかもっとマシに着けるように出来んのか!」
こころの言葉の後にユウギも目を覚まし、リユウはユウギに手を添えて起き上がりの保護をする。
「ココロ?ここは一体?」
「ここがレアリナの部屋だ!」
「え!?マジかよ!オレ入っちゃったのか!?」
レアリナがユウギを見る。
「久しぶりね!ユウギ!何年ぶりかしら?あの頃はまだ幼くて私の前でよくお漏らしなんてしてたわね。ウフフ。そのモフモフの耳をした子が獣人の子供ちゃんね。みんな無事で良かったわ」
「初めまして、リユウと言います……」
「礼儀が正しいのね……。初めまして、リユウちゃん。やはりあの方の娘だわ。お父様にはとてもお世話になりましたのよ」
「パパの事知っているの?」
レアリナ様はニコリと微笑み額を見る。
「あの大きな額にリユウちゃんとユウギのご両親も写っていますのよ」
リユウ達は左側の壁を見上げるとそこにはレアリナと城に使えていた者達が立ち並んでいる写真が額に収められていた。
ユウギは驚いた。
「まさか!そんな過去があったなんて……。しかし自分、レアリナ様にお目にかかるのは初めてでございまして、あの、失礼ながらその様な記憶が……。なぜ幼かった自分のことを知っておられるのですか!?」
「だって、あなたのお母様とお父様は私が恋のキューピットをしたのですよ。確か2400年前くらいの事です。ユウギのお母様は人間、お父様は人間とエルフのハーフ」
「マジかよ!こいつエルフの血混じってんのか!」
こころは少し驚きを見せる。
「オレが、エルフの……」
ユウギも信じられていない様子を見せた。
「そうです。エルフの血は心臓さえ傷つかない限りは6万年生き続ける事ができるのです。エルフとのハーフである理由が差別を生んでしまい、死ぬことがないと言う理由で人間から強姦を受けたり、地下で終わらない労働の日々。その世界の人間はハーフエルフを色んな地域から拉致をして働かせていたわ」
こころはレアリナ様に聞く。
「その世界とは?」
「神と悪魔の地獄」
【デウシスヴロウヘル】
天界と下界、神話にも名の出ない界。
神と悪魔の地獄と言われている。
実在を確信しているのは、レアリナ様とメティス様と魔王軍。
アルウェルク内でも幻の界。
メティス様のいる天界の神々でさえも知らない神もいればその存在を幻としている神もいる。
「やばそうな名前だな!にしてもメティスは知っていたのか?」
こころが問う。
「そうそう。ココロちゃんが此方へ転生した後に私から本当の事を伝えておくようにメティちゃんに頼まれていましたの。なので魔王軍はえーっと良い方々達で、デウシスヴロウヘル側が敵です。ココロちゃんの転生先が旧インキュバシタンボルグである為、変な誤解を招かない様にと……」
「なるほど……」
「メティスはこころちゃんをとても信頼しているのね。それと、インキュバシタンボルグ歴史の書って聞いた事があるかしら?」
こころはフォードの言葉を思い出した。
「その本にはメティスとレアリナの名前も記載されてるって聞いたぞ!」
「そうです。その歴史の書には話を書き換えてあるのです。魔王軍を敵とし、レアリナが非結晶を取り返したと」
ユウギはレアリナ様に問う。
「なぜそのような話に?それにアルモファスは扉の鍵に……」
「理由は簡単です。この旧インキュバシタンボルグでは魔王軍が敵としておいた方が都合が良かったのです。魔王軍も仲間である為攻撃はもちろん攻撃はありません。このアルウェルクと魔王軍は、旧インキュバシタンボルグでは幻としての存在。そして私が新たに作り出した強き戦士の国、アルウェルクの住人達全ては実際の存在としての生活。そしてデウシスヴロウヘルから気づかれないように遮断し存在を消しているのです。旧インキュバシタンボルグで実在する話となると、恐れながら生きることにもなり敵視が芽生え立ち上がろうとする者もいます。すると奴らがこの世界の存在に気づきまた現れ、国全てが滅ぼされてしまうわ。私たちは魔王軍と組み闘いなんとかしてその世界からハーフエルフをこのインキュバシタンボルグに連れできたのです。そしてアルモファスと言うココロちゃんが持ってきてくれた赤い非結晶の魔力は天界でしか存在を消せない為、メティちゃんに預かってもらったの。そして旧インキュバとこのアルウェルクに強大な結界を張り巡らせ、その上次元空間の波と膨大な魔力を利用し、敵から気づかれないように気配を消しているのです。魔王軍幹部ルーメニタスのおかげでね」
「そのルーメニタスってやっぱ仲間だったのかよ……。ボクはそのルーメニタスと闘う予定でいたのに……」
「普通はそうなりますよね。神側と魔王軍が仲間だなんてね。アハハ!まぁ実は言うとルーメニタスは私の妹です」
レアリナはそういい微笑ましい顔をした。
「そして、天界からこのインキュバシタンボルクに転生する際、敵にアルモファスが持つ魔力に気ずかせることがないよう、強大な結界を数万年かけて作り出せたお陰で、ココロちゃんも無事狙われずに転生に成功。そして十階扉を開けさせることができ私に会うことができたの。頑丈な対策でしょ?」
「もう話の展開がクルクルして急がしい……」
こころは片手を頭に乗せる。
レアリナはまた語り出す。
「話を戻しますが、そしてご両親はユウギに幸せな普通の人間として育っていってほしいと望んでいたのですが、剣士になりたいと幼き頃から言い続けていた為、私が両親に頼まれて仕方なしにアルウェルクに連れてきて生活をすることになったのです。ユウギに物心がつき始めた頃に、私が実在したと言う記憶を消し、城を囲む街の寮で仲間と共に過ごさせてきましたの」
こころは言った。
「こっちは散々だったよ!幻想に呑まれてしまってたら元も子もなかったよ……」
「メティちゃんは分かっていたから此処への転生を認めたんだと思いますよ。ここちゃんは必ず辿り着けると。そして私は今いる三人との出会いも来るべくして出会った存在と言うこともわかっていました。私はアカシックレコードを除けますからね」
「アカシックレコード?」
ユウギとリユウは首を傾げた。
こころはメティス様に聞いていたから知っている。
「二人にも後で教えてやる!」
レアリナは少し不思議そうに言った。
「アカシックレコードは絶対なのですが、ココロちゃんがもつシュビルナースレイブでユウギを殺した未来がなかったのがとても不思議なの。それにアカシックレコードは妹もある程度扱えるのだけれど、アカシックレコード覗くのにはデウシスヴロウヘルの上位悪魔でさえ相当な魔力を必要とするの。もしかするとシュビルナースレイブはそれ以上の力があるのかもしれませんね。奴らに狙われてしまえば大変です。ココロちゃん、、、くれぐれも気をつけてくださいね」
そうレアリナ様が告げると、こころは手を腰に当て言った。
「レアリナ!大丈夫だ!ボクはこの左目で魔力の存在を隠せるんだ!というかずっと隠している!それに魔力調整も可能だ!聖力をまぜることによってこのレアリナ城に張られている結界は直ぐに破ることもできるぞ!ユウギが大切そうにしていて、唖然とさせるのも可哀想だったからディメンタルスを使わせてあげていた!まぁあれがなければアルウェルク側へはこれなかったが!」
ユウギは今傷ついた。
「こうなるなら最初から使ってほしかった……」
レアリナは驚いた。
「なるほどね、、、。ココロちゃん、ダメ元ではありますが、こっちに来て私の首のリングを消してもらえないかしら?」
そう言われこころはレアリナに近づく。
こころはレアリナ様のオーラに魅了され心中思った。
「なんだこの落ち着く空気感は!メティスみたいだなぁ。それにすごい魔力を感じるが外側には漏れていない様子だな……」
こころは首輪について聞き出した。
「その首輪は?」
「これは、デウシスヴロウヘルでハーフエルフを助けあの世界を抜け出す際に何者かに取り付けられてしまい、それっきり取れないの。魔力や聖力を使おうとすると外に力を放つことができずこのリングに使った分だけ吸い込まれてしまうんです。最初の内は取るのに必死で力尽きてしまったわ。最悪首を切ろうとすればバリヤが貼られてしまい自分さえも殺せないのです。」
「レアリナって無茶するやつだな!」
「毎日悪夢見るのが苦痛だったのですー」
レアリナはこころに甘えた様な声で言う。
「まぁまかせろ!それが何なのかもわかったしな!」
「え!?お早いですね、、、」
レアリナは驚いた。
「レアリナ!今の姿じゃだめだ!人格というかもう一つの姿を持っていないか?」
「気づいているのですか!?」
「ボクは全てが見える!細かい話は後だ!その姿になるのに魔力と聖力も必要としないからリングに力を吸い取られる心配はないしな!やってくれ!」
「わ、わかりました!あ、あと今の口調とは大分変わってしまいますので気にしないでくださいね!」
「大丈夫!大丈夫!」
こころは自信満々に言う。
「変身するの?……」
「オレにもよくわからん」
リユウとユウギは不思議そうに見つめる。
レアリナ様は目を閉じて頭の中に感じるものを意識で掴み左右の人差し指と中指を交差させ、オデコに当てる。
するとみるみる姿が変わっていく。
身体中に稲光が走り背中には大きな翼が生え始めた。
キリッとした瞳に、少し透き通ったスカーフマスクを身につけ、腰からはシルバーいろの煌びやかな飾り物が垂れ下がっている。
「こころ!これでいいのか?……」
レアリナ様の姿が変わった。
その美しさは見た目だけでは留まらず、光波な気高さをもっており、敵を一歩たりとも近づくことができないオーラとエネルギー。
こころと同じで、闘うためには勝利ではなく未来を願う真の心を持ち敗北がない考えの存在。




