第十六話 10階扉の向こう側
十階扉に入ったこころ達はずっと長く続く虹色のモヤモヤしたトンネルを歩く。
「まだルナシエの所じゃないのか……」
「相変わらず様はつけないんだな……」
「らしくないんだ!ほっとけ!」
こころがふと疑問をユウギに問い出した。
「なぁ、僕たちいっぺんに八階まで飛んできたよなぁ……」
「そうだがそれがどうかしたかぁ?」
「リユウも気になる。八階より下はどうなってるのかなー?って」
「ユウギ!そう言うことだ」
ユウギは八階より下について語り出した。
「本当の事を言えば五階から入る事がができるんだよ。五階より下は城の使いしてる者達が住んでいる部屋ばかりさ。ホテルみたいになっていて色んな施設がある。トレーニングジムと言う部屋には身体を鍛える道具が沢山あるんだ!それに、大量の水が張ってあるプールという場所もあるぞ!」
こころはプールとトレーニングジムと言う言葉に反応した。
「プールもジムも知ってるぞ!」
「な、なんで知ってるんだ!?」
ユウギはこの城だけにある特別なものと思っていた。
「プール?ジム?」
リユウは首を傾げて言った。
こころは思い浮かべ話す。
「あぁ!下界のお母さんはプールで泳ぎの先生をしていたんだ!それにボクが住んでいた家は泳ぐ時に着る水着ってやつを作っているんだ!お母さんはその大手メーカーの下請会社の社長!しかーし!単価は安いしこの時代、なかなか儲からないからって大変そうだったぞ!貧乏暇なし!ってやつだ!アハハハハ!」
――何気に賢いこころだった。
「大変なら笑えねーよ!」
ユウギが突っ込む。
「おい!ユウギ!これは絶対ではないが、余裕がある生活よりも苦楽を共にして行く方が一番の大切さが見えてくるものさ!」
「確かに、考えてみればこころの言う通りかも知れんな!それにプールは地球と言う下界にもあったのか……」
こころはふと思った。
「多分だけど、レアリナは元地球人だったのか地球を知っているには違いないと思うぞ?」
「なるほど……。ってジムも知っているのか!?」
「知ってるぞ!色んな器具でケンくんが筋トレってやつをやっていたよ!特にベンチプレスってやつがガチャンガチャン煩くてなぁ……。でもケンくんの側で彷徨いたりするのが好きだったんだ!」
「リユウそのケンくんて人に会ってみたい……」
「いつか会えるさ……!必ず……」
こころは空を見上げて言った。
「なるほど!やはり地球と言う下界には全てが揃っている便利な世界が広がっているんだな!よし!オレは地球に転生したい!」
「あーでもな!地球は恐ろしいぞ!今の格好のままだと皆んなから笑い物にされて暮らしていけない。ユウギの持つ剣は銃刀法違反てやつで豚箱行きだ!それにリユウみたいな獣人は頭の先から足の先まで調べ尽くされてバラバラにされるぞ」
ユウギとリユウは震えながら青ざめていた。
「せっかく人間の身体なんだ!プールもジムも行きたい!」
「まずは、ここを抜け出さないとな!オレはよくジムへ行き日々身体を鍛えている!見ろ!この鍛え上げられた美しい逆三角形を!」
「リユウはホテルで何を食べたい?」
「ホットケーキ!」
「人の話を聞けい!」
こころはユウギに対しなんの関心も持っていない為、自分から気にして質問したこと以外は耳から抜けている。
「でさぁ、五階から七階まではなにがあるんだ?」
「まぁ、わかりやすく言えば俗に言うコロシアムフィールドってのがあって五階から七階はクリ抜きの階だ五階がフィールド、六階と七階がスタンド客席になっている。剣士や魔術師がそこで強さを競い、戦いでの思考や戦術を実戦で学ぶ場所になっている。大会とかもあってな、成績がいい者にはそれなりの防具や武器、賞金なんかも与えられたりするんだ」
「おー!!めっちゃ面白そうじゃないか!やりたい!やりたい!いつ大会があるんだ!?」
「リユウも出られるの?」
リユウはそんなに理解はしていなかった。
「リユウちゃんは無理かな……ってかいやいや、ココロでも無理かもよ!?すぐに出られるわけじゃなくてある部屋で適正が通れば出られるんだ!オレでもやっと最近適正が通って出られたんだ!まぁ優勝までは行けなったがいい線までは残れたぞ!」
「お前ボクに瞬殺で殺されたじゃないか……」
こころはユウギを横目で見つめ頭の後ろで手を組みながら言った。
ユウギは誤魔化す。
「あ、あの時はリユウを連れ去るのに必死だっただけだ!」
「ボクからしたら戦術なんてクソだ!」
「どう言うことだよ!オレの努力を否定するのか!?」
「ユウギ!戦術がいくら上達しようが、結局勝つことしか考えとらんだろ!闘いは勝つんじゃない!勝った者が強いと言う言葉もあるが、自分にとって大切なものの為に立ち向かう心を繋げ!それが100パーセント以上になれる近道だ!それがどんな結果になるかは自分が結果だ!戦術が上達しても、どこから敵が来るかもしれない状況の中で完璧に敵の気配を全ての角度から過敏に感じ取れるかが大事だろ!戦術ってのは戦う者は有って当たり前だ!言葉に出す程のものでもないぞ!」
ユウギはこころの言葉に圧倒され考え直させられていた。ユウギは少し左斜め前を歩くこころに見つめながら心中語る。
「ココロ……君は一体何者なんだ。リユウちゃんを助ける為に人を斬るのも惜しまないその神経と正義感は……オレはただ自分が強くなる事だけを考えていた。確かに自分だけが強くなって喜んでいても皆んなが強くなければこの国は守っていけない」
こころがユウギに問いかける。
「なぁユウギ」
「なんだ?」
「ボクらが出会ってから誰かに試されていないか?」
「リユウも少し感じる……」
「リユウも言ってるぞ!」
「感じるって、何を?」
「まぁ鈍感なのは認めてやる!」
「もうココロに何言われても悔しくない自分がよくわからんよ」
ユウギは涙をながし肩がどんと下がる。
こころは気配を感じていた。
「というか誰かにずっと見られているような……そもそも九階に入ってからずっと場所が変わってない気が……」
トンネルのずっと先に見えていた出口らしき小さな光が此方に高速で向かって来る。
ユウギが叫く。
「おい!なんだ!なんだ!なんだ!光がこっちに向かってくるぞ!」
こころは片目を細め見つめた。
「ん?光……?いや、、、光なんかじゃないぞ!あれただの発光した壁が向かってきてるだけだぞ!取り敢えず逃げるぞ!!!!」
こころは片手でリユウを抱えてユウギとダッシュして逃げる。
「ユウギ!あれが何か知らないのか!?」
「知るわけないだろ!八階から先はほとんど噂でしか聞いた事がないから未知でしかないんだ!それに噂なんて今のところこれっぽっちも当たっていないじゃないかー!」
「まぁ仕方ないさ!ユウギ!捕まれ!もう間に合わん!」
ユウギはガッチリとこころの腰に捕まった。
「飛ぶぞ!」
「またですか!?ィヤーーーーーー」
ユウギはただただ叫き魂が抜けたように白目を向いた。
こころの速度より高速なスピードで眩しく渦を巻いた光の壁が三人を抜けたように追い越した。
すると三人の身体の動きは数秒スローになり地面が消え、こころは端から端へと飛び越えたように大股状態になる。
壁は一瞬にして向こう側へ消えていき、こころ達は元の速度に戻り数十メートル上へと引っ張り上げられた。
ユウギはこころから離れてずっと気絶したまま。
リユウもこころから離れてしまう。
三人はキラキラと輝く天上に背中がくっつきダイアモンドダストの様な粒子が舞う。
すると景色は広い部屋に変化した。
こころが前を見ると、逆さまに大きな出窓から空を見上げる女性が見えた。
「だれか居る?」
こころはそう言うと女性は此方を振り向き話した。
「辿り着きましたね……待っていましたよ。ココロちゃん」




